そのさん
「それでは、これより第4試合場による3日目予選3試合目を行います。参加者は試合場に集まってください!」
係員の言葉が響き渡る。さあ、俺の出番だ。試合中審判が選手確認に用いる番号札を胸につけ、会場へと向かった。
試合場にひしめくは俺を含めて11人。この中で勝ち残れるのはただ一人。……バトルロイヤルの基本は、戦わないことである。が、審判がいて、逃げ回っているだけの奴には戦意無しと失格を突きつけられる、とある以上、戦わない、という選択は取れない。そりゃそうだ。逃げ回るだけの奴が「最強」とは片腹痛い、ということだろう。
要するに、この予選を突破した、ということは、この乱戦の中、逃げることなく勝利した、という証明でもある。これは戦場での兵士としての能力の一端の証明になるため、お偉いさんが目をつけるうえでも重要というわけだ。
「始め!」
審判の合図とともに、一斉に動き出す選手たち。俺に目をつけ襲ってきたのは2人。俺と同じ両手剣使いと、もう一人は片手剣使いだが盾を持っていない。……盾を使わない片手剣は、盾を持ち歩けない状況、以外では早々聞かないので、恐らく本来は短杖を構える魔法戦士なんだろう。
両手剣使いが左側から大上段に構えて剣を振り下ろす。だが遅い。魔法を使うまでもなく、半歩下がるだけでそいつの剣は空を切る。恐らくは必殺の不意打ちのつもりだったのだろう。そのままバランスを崩し、剣を地面に打ち付けてしまう。なので、そのまま片手剣使いに向かって蹴飛ばしてやった。
「うわっ!?」
あわててよける片手剣使い。それで完全に体勢が崩れたので、二人の脳天に模擬剣を叩き込む。審判が彼らの失格を宣言して、これであと8人……と思ったら、他の場所でも3人ほど脱落してる。あと5人倒れればよいらしい。
周りをざっと見渡すために位置取りをする。とりあえず試合場の隅に建てば後ろを取られることはない。……まあ、後退したら失格になるから良し悪しだが。だが、その位置で見たおかげで状況は一目瞭然。5人のうち4人はタイマン状態。そして残った一人がこっちを見た。……わかりやすいほどに、タイマンが3組できたというわけだ。
俺の相手となったのは双剣使いの少年だった。身長は160セメルトに届くかどうか。参加資格の関係上、同い年以上のはずだが、この可愛い顔立ちの少年は、きっとお姉さま方に人気なんだろう。……ま、こんなぽっと出の敵を細かく描写しても仕方がないのだが。
少年はなかなかにいい速度で二本の模擬剣を振り回す。それを一本の模擬剣で受け流しながら、隙を探る。実際のところ、二刀流だからといって、こっちが一回攻撃する間に2回攻撃できるわけではない。武器は腕だけで振り回すのではなく、腰の回転なども入れるためだ。まあ手打ちで殴ってもいいんだが、その場合生身の人間ならともかく鎧を着た相手などには怪我を負わせることすら難しくなる。
そして二刀流で双方の武器に腰を入れるとなると、これはもう独楽のように回転し、背面という隙を晒すか、片方を振り切ったあともう片方の武器を使うために一瞬止まるしかなく、その隙が攻撃速度を緩めてしまうというわけだ。この少年は後者を選んでいる。おかげで防御に専念すれば、割と簡単にさばけてしまうのだった。
何度目かの防御の後、少年の一撃を回避するとともに、足だけそこにおいてみた。それまで同じように防御していただけだったためか、思ってもいなかった行動に虚を突かれ足を取られ転んでしまう。はいこれで胸を突いて一本。
あと2人。両手斧と槍使いか。両手剣より間合いの長い槍使いが厄介だな。斧使いも同じことを考えたようで、二人がかりで襲う形となった。
「うわ、ちょ、ま」
待ってくれ、と言いたかったのだろうが、試合でそれはない。見事に俺と斧使いの攻撃、双方が体に食い込み、気絶。これで完全にタイマンとなった。
斧と剣。武器の形状は違えど、共に前進の力を両手で構えた一つの武器に込め叩きつけるパワーファイター。ならばやることは決まっている。
「「おおおおおおおお!」」
お互いに雄たけびを上げ、渾身の力で振り回した武器をぶつけ合う。
――そう、己の腕力に誇りを持ち、その武器を選んだ者同士が、誰の邪魔も入らない形で競い合うのであれば。
その決着は、正面からの力比べに他ならない!
決着は一撃で。叩きつけた衝撃に耐えかね後退した斧使いと、持ちこたえた俺。ならば、そのまま回転をつけて叩きつける第二撃を防げる道理は、斧使いにはなかった。
「それまで! 勝者8番!」
審判が俺の勝利を告げ、試合終了の太鼓が鳴る。この瞬間、俺の本選出場が確定した。
……まあ、予選は見学できないから歓声とか湧かないんだけどな。ちょっとさびしいと思った。




