そのじゅうなな
勝った……!
人生初の実戦――殺し合いだったが、なんとか無事生き残れた。目の前にはたった今殺したトロールの死体。残念ながら、ゲームのようにドロップ等はない。大学では微量の魔力をいくつかの素材と混ぜ合わせ、エリクサと呼ばれる秘薬を作る錬金術師と言う職業もあるらしいが、あいにくその手の知識は無いため、トロールの一部に秘薬の材料になる部分があるのかどうかすらわからない。
まあ、儲けは0だがみんな無事なようで安心した、と向き直る。
「た、倒したのか?」
そう尋ねるカイルに頷くと、カイルは緊張が解けたのかその場に座り込んでしまった。
アリスの方へ向き直ると、アリスも緊張が解け、その場にぺたんと座り込んでしまった。うん、怪我は無いようだ。
「大丈夫だったか?」
「うん、お兄ちゃんが守ってくれたから平気だよ。ほら……」
と、立ち上がろうとするが、腰が抜けたのだろう。全く立ち上がれない。しょうがないな、と呟いてアリスを背負う事にした。剣は引きずるしかないが仕方がない。
「ミリアは平気か?」
「だ、大丈夫に決まってるでしょ!」
ミリアは気丈にもそう返すが、抜けた腰が嵌ってないのは自力で立ち上がろうとしないことからも明白だった。
まあ、立ち上がれないんじゃあ仕方がない。
「カイル、任せた」
「あ、あぁ、そうだな。任せてくれ」
すぐに理解したのだろう。カイルはミリアを背負おうとした。
「ち、ちょっと! 乙女を軽々しく触ろうとするなこの変態!!」
「はぁ!? 腰が抜けて一人で歩けない奴を助けてやってんじゃん!? 変態どころか立派な騎士道精神じゃねえか!!」
「そんなわけないでしょこの変態! どーせ背負う振りして私のこと触りたいだけでしょ!」
「はっ! そういう台詞はもっと美人で色気のある女が言うものだぜ。そんなペチャパイ触っても嬉しくもなんとも……」
「ペチャパイって言うな~!!」
「どぶらげ!?」
……なんでこの二人はいつも通りに喧嘩して、ミリアはあっさり立ち上がってカイル殴り飛ばしてるんだろう……?
後ミリアの名誉のためにフォローすると、服の上からの印象でいうと、別段歳不相応にペタンコではないと思う。
「ねえお兄ちゃん」
「ん?」
「お兄ちゃんもおっぱい大きい方がよかった?」
……。頼むからそんな事純真無垢な顔で聞かないでくれ。答えにくいから。
「……別に。アリスはアリスだしね」
「……えへへ。……ね、お兄ちゃん」
「ん?」
「助けてくれてありがとう。大好きだよ、お兄ちゃん」
キュッと俺にしがみつく腕に力を入れ、アリスは呟いた。その言葉にどれほどの感謝と想いが篭められているかなど、その震えた腕を見れば明らかだ。
だから、兄として、返す言葉なんて一つしかなかった。
「ああ、お兄ちゃんも愛してるぞ」
家に着いたのは、結局眠りの刻になってからだった。
当然、俺たちは両親にこっぴどく叱られた訳だが、こっそり親父はみんなを守った事とトロールに勝った事を誉めてくれた。
トロールなんかと戦った事には拳骨食らったし、子供達だけで東の森に行った罰として、俺もアリスも夕飯抜きだったが。




