そのじゅうご
森の中を4人は進む。
下生えの草が足元を隠し、木々の根っこが足を掬う。低い位置に伸びる枝は視界を隠し、時に顔にあたる。
……あ~。前世に森の中なんて歩いたことないし、今世でも初めてだけど、こんなに辛いんだな……。
案の定、他の3人も疲れてきたらしい。普段目にしない森の中というシチュエーションは珍しさはあるものの、面白いものがあるわけでもなし、正直飽きてきた。
「あ、足が……」
「もうだめ……」
「お兄ちゃぁん……」
三者三様に死に体である。既に三人とも座り込んでしまった中で、俺だけが立っている。
「なんでウィルはそんなに元気なんだよ……」
「たわけ。鍛え方が違うわ」
ごめん嘘。確かに鍛え方は違うが、身体能力強化魔法と治癒魔法をかけてるせい。
身体能力を強化することで疲労しにくくなり、治癒魔法があくまでも“自然治癒力の強化”であるために疲労の回復も早くなると気付いたのは何時だったか。慣れない場所の行軍は疲労すると言うし、予め弱めにかけておいたのだ。お袋曰く常人の10倍以上の魔力量を誇る俺だからこその芸当だ。
後は責任感か 。魔物が出たら俺がやる以外手はないからな。多分、俺がやらなかったら逃亡も出来ないだろう。
「どうする? 何もないし、そろそろ帰ろうぜ」
今から引き返しても夕飯ギリギリだが、これ以上遅くなるよりはマシだ。尤も……
「まあ、みんな歩ける状態じゃないから、少し休んでからだけどさ」
もの足りなさそうだったカイルでさえ、異論は出さなかった。
「はぁ~、つーかーれーたー! まだ家に帰れないの!?」
「いや、まだ往路の半分くらいだし」
「何もなかったなあ……。魔物とか見てみたかったんだけど」
「お前は死ぬ気か」
「おやつ、食べ損ねちゃった」
「なぜおやつの前に帰れると思ったしアリス」
小一時間ほど休憩し、帝都へと帰還を始めた俺たちだが、お気楽お子様組はわいのわいのと騒がしい。どこにその元気が残っているのか。……まあ、その騒がしさのおかげで狼などの動物は近寄ってこないわけだが。
それにしても、この調子なら何とか何事もなく家に帰れそうだ。
――その思考が。フラグとなったのかもしれない。
カサリ、と小さな音が聞こえた次の瞬間。
俺の身体は宙を舞っていた。




