そのじゅういち
さて、13歳になると、神殿が開催する日曜学校に参加する権利がでる。
日曜学校とは読んで字の如く日曜日にのみ開催される学校である。基本無料で、基礎的な学問を教えるらしい。大学は専門的な知識を学ぶ場であるために一定の能力を示す必要があり、さらに15歳からとなる。……まあ、才能次第で14歳未満でも特例を認めることがあるらしいが。
さておき、日曜学校は神殿が主催となり、神官が教師役を務めるらしい。無料で、入学試験もない。なのでどこの家でもこの歳になると通わせる……とは、残念ながらならないようだ。
中流階級であればいざ知らず、農村などの最下流階級であれば、村に神殿があっても、日曜だけとはいえど、そんな勉強をしてる暇があったら仕事を手伝え、と思われるらしい。農村に限らず、帝都でもそういう立場の子は結構多いとか。
とはいえ、基本的な学問程度であってもきちんとおさめていれば商人として大成したり、文官などになる機会もある。学べるのであれば学んでおくべきであるため、できるだけ親は子を学校へ行かせるようだ。
当然、俺も学校に行くことになった。13歳といえば、前世なら中学生か。一応は三流大学とはいえ、2浪して1流したとはいえ、大卒の身。外国語とかの独自性のあるもの以外は問題にはならないだろう。
◆ ◆ ◆
「おーい、ウィル、おはよう!」
神殿の入り口で声をかけてきたのは、幼馴染の一人といっていい少年、カイルだ。
明るい茶髪をやや長めに伸ばしたこいつは、近所の食堂の一人息子でもある。明るい性格だが、いたずら好きな一面があり、いわゆる小学校でスカート捲りをしては女の子を泣かすタイプだ。
その後ろには、やはり幼馴染にあたる少女が立っている。彼女の名はミリア。黒髪をツインテールにしたなかなかに可愛らしい顔立ちで、遠目に見てる分には目の保養ともっぱらの噂の少女だ。
遠目に見てる分には、と但し書きが付くのは、気が強く我儘な面があり、さらに言えば喧嘩っ早いことに起因する。決して悪い子ではないのだが、お淑やか、などという言葉とは無縁の存在なのである。カイルと一緒なのは、家が近いせいだろう。
「おはよう、ウィル。あんたも今日から通うのね」
「おはよう、カイル、ミリア。そういうお前たちも今日からだろ」
この世界、誕生日という概念がない。年の初めにみんな1歳づつ年を取るのだ。昔の日本みたいだな。数え年じゃないけど。
「そりゃあそうだけど。ウィルって昔から頭がいいから通う必要があるのかなって」
この上ない誤解である。俺は頭がいいのではなくて、最初から一定量の知識を持っているだけだ。とはいえ、そんなことを言えるはずもなく、いつものように「二十歳過ぎたらただの人」と返すのみである。……この諺、こっちにもあったんだよ。
「まあ、それに。神殿ってことは、神様の事とか教えてくれるんだろ? 俺はその辺全然知らないから、興味あるよ」
日曜学校に通うこと自体は、両親が決めたことであるが。この世界の宗教とか、歴史とか、前世の知識では賄えない知識が学べるのは純粋に興味があった。
「ふ~ん。ま、いいわ。あたしもその辺興味あったのは事実だし。行きましょ」
「そうだね。僕も早く新しい友達に会いたいよ」
「……あんたは、新しい女の子のスカートをめくりたい、の間違いじゃないの? このエロ河童」
「ぶっ……!? ミリア、お前まだあんな子供のころの事根に持ってるのかよ!?」
「あったりまえでしょ! 8歳の時にあんたにスカートめくられた時の恨み! 一生消えないと知りなさい!」
……要するに、彼女が先ほど話した「スカートめくられて大泣きさせらた女の子」なのである。思えば、ミリアがこんな攻撃的な性格になったのも、あれからな気がする。……本当にあれが原因なら、カイルの罪は重いと言えるだろう、二重の意味で。
まあ、とりあえずは、こいつらの口げんかが暴力――主にミリアの一方的な――に変わる前に止めるべきだろう。
「おーい、そろそろいかないと、始まるぞー。喧嘩してるなら置いてっちゃうからなー」
そう声をかけ、二人に聞こえたことを確認した俺は、返事を待たずに教室へと向かうのであった。
先に言っておきますと、ミリアちゃんはヒロインではありません。




