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予測

第七十九話 統合前夜


 第三世界、最後の夜。


 窓を開けると、風が少し冷たかった。


 季節が変わったわけではない。


 明日には、この場所そのものがなくなる。


 そう思っているから、いつもの夜より静かに感じるだけなのかもしれなかった。


 城壁の向こうには、まだ灯りがある。


 兵舎にも。


 工房にも。


 城下の家々にも。


 明日、地図が変わるからといって、今日の生活が止まるわけではない。


 誰かが食事を作っている。


 誰かが片付けをしている。


 兵士たちは装備を外し。


 明日のことなんて知らない子どもたちは、まだ道を走っている。


 その向こう。


 さらに遠く。


 地図を開けば。


 第三世界のあちこちに。


 盃があった。


     *


 北西の猫が作った盃は。


 玲山城から少し離れた場所にある。


 上から見れば。


 なんとか。


 盃には見える。


 少し右側が太い。


 玄が途中で一マス間違えたからだった。


 本人は。


「こっちの方が味がある」


 と言い張っていた。


 南側には。


 とんでもなく大きな盃を作った同盟もあった。


 完成するまで。


 何人もの土地を一度放棄したらしい。


 東には。


 三マスだけで作った小さな盃もある。


 それでも。


 掲示板に画像が上がると。


『ちゃんと盃に見える』


 と。


 何人も反応を付けていた。


 大きさは関係ない。


 最後に。


 第三世界にいたという。


 それだけの印だった。


     *


「まだ見てたんですか」


 後ろから。


 律の声がした。


 振り返る。


 広間の入口に。


 律が立っていた。


 腕に。


 何枚かの紙を抱えている。


「もう終わったと思ってた」


 俺が言う。


「私もです」


「じゃあ、その紙は?」


「最後に整理しておこうと思いまして」


 嫌な予感がした。


「明日じゃ駄目?」


「明日には新世界です」


「じゃあ明後日」


「その頃には状況が変わっています」


「……会議?」


「会議というより」


 律が。


 一度。


 言葉を止める。


「確認です」


 最近。


 その言葉を。


 信用しなくなった。


     *


 結局。


 七人が。


 もう一度。


 集まった。


 玄は。


 椅子へ座るなり。


「何分?」


 と聞いた。


「分かりません」


 律が答える。


「それが一番嫌なんだよ」


「帰ってもいいですよ」


「それはそれで気になる」


「じゃあいてください」


「はい」


 杏が笑った。


 葉は。


 何も言わず。


 机の端に。


 紙と筆を置いた。


 岳は。


 壁際から。


 地図を一枚取ってくる。


 朔は。


 すでに律が持ってきた資料を。


 横から読んでいた。


 七人が。


 自然に。


 いつもの位置へ座る。


 誰も。


 席を決めたことなんてない。


 でも。


 気が付けば。


 毎回。


 だいたい同じだった。


 それも。


 明日から。


 変わるのかもしれない。


     *


「では」


 律が。


 机の真ん中へ。


 三枚の紙を置いた。


 一枚目。


【確定していること】


 二枚目。


【第三世界・統合後予測】


 三枚目。


【第四世界・統合後予測】


 玄が。


 三枚目を覗き込む。


「予測ってことは、外れる?」


「外れます」


「言い切るんだ」


「全部当たる方がおかしいです」


 律は。


 当たり前のように答えた。


「じゃあ何のためにやるんだ?」


 岳が聞く。


 律は。


 少しだけ考えた。


「今、私たちが何を根拠に判断しているかを残すためです」


 葉が。


 筆を止める。


「外れた時に、何が違ったのか分かる」


「そうです」


 律が頷く。


 なるほど。


 そういうことなら。


 意味はある。


     *


「第一と第二は?」


 玄が聞いた。


 一瞬。


 空気が。


 少しだけ。


 変わった。


 世界間掲示板が切られてから。


 第一世界と。


 第二世界の情報は。


 ほとんど入らなくなった。


 最後に見たのは。


 戦争。


 合併。


 天下統一を。


 それぞれ違う方法で。


 目指し始めたところだった。


「今は材料不足です」


 律が答える。


「統合後にどうなっているかは、分かりません」


「第一が勝ってるかな」


 玄が。


 少し楽しそうに言う。


「可能性はあります」


「第二かもしれない?」


「あります」


「どっちだと思う?」


「予測したくありません」


「なんで?」


「当てるための材料がないので」


「律って、賭け事弱そう」


「しません」


 杏が。


 また笑った。


     *


「まず」


 律が。


 一枚目を。


 手前へ引いた。


「確定していることからです」


 葉が。


 その横へ。


 まっさらな紙を置く。


 上に。


【統合後ルール】


 と書いた。


     *


「一つ目」


 律が言う。


「現在の土地は、統合時に消えます」


 それは。


 もう。


 何度も聞いた。


 でも。


 実際に。


 地図を見ると。


 少し違う。


 俺は。


 手元の地図を。


 ゆっくり広げた。


 城から。


 細く伸びた道。


 石材の土地。


 木材。


 鉄。


 穀物。


 遠くまで。


 無理をして取りに行った高レベル資源地。


 誰かと。


 取り合いになった土地。


 譲ってもらった場所。


 譲った場所。


 昔。


 玄と揉めた石材地も。


 まだ。


 地図の端にあった。


「これ」


 俺が。


 その場所を指す。


「明日にはないんだな」


「ありません」


 律が答える。


 玄も。


 同じ場所を見る。


「最初これで喧嘩したな」


「喧嘩まではしてない」


「かなり険悪だったぞ」


「玄が先に取ったからだろ」


「先に着いたんだから俺のだろ」


「今言う?」


「最後だから」


 笑いながら。


 そんなことを言えるくらいには。


 昔になっていた。


     *


「土地そのものは消えます」


 律が続ける。


「ただし、取得に使用している値は維持されます」


 玄が。


 顔をしかめた。


「それ」


「はい」


「何回聞いても気持ち悪い」


「私も、分かりやすい仕様だとは思っていません」


 朔が。


 紙の上に。


 簡単な図を描いた。


 四角。


 その横に。


 数字。


「例えば」


 朔が言う。


「今、十個の土地を持っているとします」


「うん」


「統合すると、土地自体は消えます」


 四角を。


 全部。


 線で消す。


「でも、取得済み十という値だけ残ります」


 数字は。


 消さない。


「だから、新しい世界へ行っても」


 朔は。


 新しい四角を描こうとして。


 止める。


「このままでは、新しい土地を取れません」


「土地ないのに?」


「ないのにです」


 杏が。


 少し笑う。


「変だね」


「変ですが、そういうものです」


     *


「じゃあ」


 岳が聞く。


「新しい土地を取るには?」


「旧世界分を放棄します」


 律が答える。


「一つ放棄すれば?」


「一つ分空きます」


「二つなら?」


「二つ」


「全部なら?」


「全部です」


 玄が。


 少しだけ。


 考え込む。


「最初に全部捨てる必要はない?」


 朔が。


 すぐ答えた。


「ありません」


「じゃあ」


 玄が。


 地図を見ながら言う。


「新世界入って、近くに良い土地なかったら」


「保留できます」


「見つけた分だけ捨てる」


「それが一番無難だと思います」


「なるほど」


 玄が。


 珍しく。


 真面目に頷いた。


     *


 俺は。


 明日のことを。


 少し想像した。


 何もない地図。


 初めて見る川。


 山。


 資源地。


 知らない城。


 そこへ。


 昔の土地の。


 数字だけを背負って。


 入っていく。


 なんだか。


 荷物だけ持って。


 家をなくすみたいだった。


     *


「二つ目」


 律が。


 紙の別の場所を指す。


「砦です」


 今度は。


 全員が。


 少し静かになった。


 ここは。


 今までの話より。


 統合直後の動きに。


 直接。


 関わる。


     *


「旧世界で得た砦ボーナスは」


 律が言う。


「全部消えます」


 岳が。


 短く。


「全部か」


 と確認する。


「全部です」


「北西の猫の分も?」


「もちろん」


「かなり減るな」


 朔が。


 自分の紙を見る。


 北西の猫は。


 これまで。


 複数の砦を。


 持っていた。


 その分。


 土地を取れる余裕も。


 増えていた。


 それが。


 明日。


 一度。


 消える。


     *


「新世界では」


 律が続ける。


「砦を取得するごとに、土地取得枠が一つ増えます」


 玄が。


 椅子から。


 少し身を起こした。


「一つ?」


「一つです」


「少なくない?」


 杏が聞く。


 朔が。


 首を横に振る。


「全員が一つを必要とするなら、十分大きいです」


 全員。


 同じ条件で。


 砦ボーナスを。


 失う。


 一つ取る。


 一つ増える。


 ただ。


 それだけ。


 でも。


 その一つで。


 高級資源地へ。


 手が届くかもしれない。


 城への道を。


 一本伸ばせるかもしれない。


 相手より。


 一歩。


 先に行けるかもしれない。


     *


 岳が。


 地図の空白へ。


 指を置く。


「最初に揉めるのは、砦だな」


 律は。


 ほとんど間を置かず。


「はい」


 と答えた。


「第三と第四で?」


 俺が聞く。


「それもあります」


「第三同士も?」


「あります」


「第四同士も?」


「当然あります」


 玄が。


 少し笑った。


「結局全部じゃん」


「そうなります」


     *


 昨日まで。


 世界全体で。


 盃を作っていた。


 今日。


 乾杯した。


 明日。


 砦で揉めるかもしれない。


 人間って。


 そんなものなのかもしれない。


     *


「三つ目」


 律が。


 新しい紙を。


 机へ置いた。


 四つの文字。


 北西。


 北東。


 南西。


 南東。


「移動先です」


     *


 新世界では。


 まず。


 方面を選ぶ。


 どこへ行くかは。


 同盟ではなく。


 君主個人が決める。


「北西の猫全員が北西に行かなきゃいけないわけじゃない」


 葉が確認する。


「はい」


「玄だけ南東でも?」


「できます」


 玄が。


 嫌そうな顔をする。


「なんで俺だけ飛ばすんだよ」


「例」


「もっと他にいるだろ」


 杏が笑う。


     *


「ただ」


 律が続ける。


「同盟で動くなら、当然近い方がいいです」


「そりゃそうだ」


 岳が言う。


「兵を送り合うのも、城を取るのも」


「遠ければ時間が掛かります」


「じゃあ」


 俺が聞く。


「方面は合わせる。でも」


「その中の位置までは選べません」


 そこが。


 問題だった。


     *


 統合後。


 移動には。


 猶予時間がある。


 すぐ。


 行かなければ。


 消えるわけではない。


 ただし。


 配置は。


 早く処理した者から。


 決まっていく。


「つまり」


 玄が言う。


「北西って押した順?」


「正確には移動処理が終わった順です」


「ほぼ早押し」


「まあ」


 律が。


 少しだけ。


 諦めたように。


「ほぼそうです」


     *


「同じ北西でも」


 葉が言う。


「先に入った人の周りが埋まる」


「はい」


「遅い人は」


「空いている位置へ」


「じゃあ」


 杏が。


 地図を見ながら言う。


「知ってる人の近くに行きたいなら、できるだけ同じ時間に入った方がいい」


「そうなります」


「でも全員は無理だね」


「はい」


 仕事。


 用事。


 寝ている者。


 通知に気付かない者。


 いろいろいる。


 何百人。


 全員が。


 同じ瞬間に。


 入れるわけではない。


     *


 俺は。


 少し。


 頭を抱えた。


「これまた話し合うんだよね」


「統合後すぐに」


 律が答える。


「どこに落ちた」


「はい」


「誰が近い」


「はい」


「砦どこ」


「はい」


「土地どうする」


「はい」


「会議」


「はい」


「……」


 玄が。


 俺を見る。


「顔死んでるぞ」


「もう会議したくない」


「新世界最初の仕事だな」


「嫌なこと言うな」


     *


 律は。


 少し笑って。


 最後の項目へ移った。


「城所有報酬」


 玲山城。


 南の大城。


 東の大城。


 中央。


 世界各地。


 最後まで。


 本気で。


 守り。


 奪い合った城。


 その。


 最終所有権が。


 確定した。


     *


「報酬は持ち越し」


 玄が。


 嬉しそうに言う。


「はい」


「札も?」


「もちろん」


「よし」


「何枚でした?」


 葉が聞く。


「言いたくない」


「なんで?」


「使うまで秘密」


「みんな大体分かるよ」


「じゃあ聞くなよ」


     *


 札。


 資源。


 その他の報酬。


 それらは。


 明日。


 新世界へ。


 持っていく。


 玲山城を。


 最後まで。


 守った意味は。


 ちゃんと。


 残る。


「これで」


 律が。


 一枚目を。


 机の端へ置いた。


「確定しているルールは、主なところを全部確認しました」


 玄が。


 すぐ。


「次」


 と言う。


「まだ元気ですね」


「ここから予想だろ?」


「はい」


「そっちの方が面白い」


     *


 二枚目。


【第三世界・統合後予測】


 律は。


 それを。


 ゆっくり。


 開いた。


「最初に」


 少し。


 間を置く。


「第三世界は、今より同盟が増えると思います」


     *


「統合するのに?」


 杏が聞く。


「はい」


「普通、減らない?」


「普通がどうかは分かりません。ただ」


 律が。


 こちらを見る。


「北西の猫だけで、どうなりそうですか」


 みんな。


 少し黙った。


     *


 玄。


 自分で。


 同盟を作る。


 朔も。


 小さく。


 始めるつもりでいる。


 律も。


 近くの者と。


 自分の同盟を。


 考えている。


 巌。


 以前なら。


 自分から前へ出るようには。


 見えなかった。


 今は。


 やる気を出している。


 晴。


 強い同盟を。


 作りたいわけではない。


 ただ。


 自分で。


 何もないところから。


 始めたい。


 俺。


 葉。


 杏。


 岳。


 今すぐ。


 盟主になるつもりはない。


 しばらく。


 誰かを支えるのか。


 何も決めずに。


 自分の城を見るのか。


 まだ。


 分からない。


     *


「一つが」


 俺が言う。


「六つくらいになる」


「そうです」


 律が頷く。


「北西の猫だけで」


     *


 他の地域でも。


 似た話が。


 出ていた。


 今の名前を。


 そのまま残す同盟。


 でも。


 人数は。


 半分になる。


 副盟主が。


 自分で作る。


 攻城が好きな者だけ。


 別れる。


 内政を。


 ゆっくりやりたい者が。


 集まる。


 何にも。


 入らない。


 そんな話。


     *


「なんでだろうな」


 岳が。


 低い声で言った。


 律は。


 少し考えて。


 答える。


「第三世界の大同盟は」


「うん」


「必要に迫られて、大きくなったところが多いからだと思います」


     *


 敵が。


 いた。


 大きな同盟が。


 迫ってきた。


 自分たちだけでは。


 守れない。


 だから。


 合併した。


 人数を。


 増やした。


 役割を。


 作った。


 外交を。


 始めた。


 攻城。


 防衛。


 巡回。


 連絡。


 参加確認。


 報告。


 誰かが。


 やらなければならないことが。


 増えた。


     *


「大きくなりたくて、大きくなったわけじゃない」


 葉が。


 小さく言った。


「全部がそうとは言いません」


 律が答える。


「でも、少なくとも北西はそうでした」


 俺は。


 何も言わなかった。


 本当に。


 そうだった。


 七人。


 それで。


 よかった。


 でも。


 敵が来た。


 仲間を。


 守るため。


 人を。


 増やした。


 増えれば。


 また。


 守るものが増えた。


     *


「じゃあ」


 杏が言う。


「戦う理由が一度なくなったら」


「小さく戻りたい人が出ます」


 律が言う。


「自分が見られる人数に」


「それが」


 俺は。


 少し笑う。


「今の俺たちか」


「そうですね」


     *


 そして。


 第三世界では。


 もう一つ。


 増えるだろうと。


 律は考えていた。


「土地をあまり取らない人です」


 玄が。


 すぐ反応する。


「何するんだ?」


「玄は、その質問しますよね」


「土地取るゲームだろ?」


「それだけではないでしょう」


     *


 武将。


 内政。


 畑。


 交易。


 交流。


 景色。


 釣り。


 収集。


 何か一つ。


 それだけを。


 やる。


 あるいは。


 数日に一度。


 城を見るだけ。


     *


「晴みたいな?」


 俺が聞く。


 律は。


 首を少し傾ける。


「晴さんは、意外とかなり活動しています」


「ああ」


「城も育てるし、出掛けるし、戦えば強い」


「確かに」


「もっと」


 律は。


 言葉を選ぶ。


「世界の競争から離れる人です」


     *


 領地。


 ランキング。


 城。


 砦。


 そこに。


 積極的には。


 入らない。


「一割くらい?」


 杏が聞く。


「可能性はあると思います」


「多いな」


 岳が言う。


「統合は」


 律が続ける。


「やる気が戻るきっかけにもなります。でも」


「辞めるきっかけにもなる」


 葉が言った。


「はい」


     *


 新しい世界。


 全部。


 やり直し。


 それを。


 楽しみだと思う者。


 面倒だと思う者。


 両方。


 いる。


     *


「第三世界は」


 律が。


 まとめる。


「大同盟中心から」


 紙の中央へ。


 小さな丸を。


 いくつも描いた。


「中小同盟が多数存在する形へ変わると思います」


 それぞれの丸を。


 線で。


 ゆるく結ぶ。


「必要な時だけ」


「集まる?」


 俺が聞く。


「はい」


 大城。


 近くの砦。


 外敵。


 何か。


 大きなことがあった時だけ。


「正式に一つにならない」


「多分」


「でも話せる」


「そこが残れば」


 律が言う。


「第三世界の強みになると思います」


     *


 玄が。


 図を見る。


「玲山城みたいな?」


 最後。


 中小同盟は。


 自由に。


 攻めた。


 北西の猫は。


 本気で。


 守った。


 所有権が確定したら。


 皆で。


 お疲れ様会をした。


「それを」


 律が言う。


「もっと大きい範囲でできるなら」


 少し。


 笑う。


「第三世界らしいかもしれません」


     *


 三枚目。


【第四世界・統合後予測】


 律は。


 少しだけ。


 長く。


 黙った。


     *


「第四世界は」


 やがて。


 話し始める。


「第三と逆に動くと思います」


「逆?」


 玄が聞く。


「第三は小さくなる」


「うん」


「第四は少し大きくなる」


     *


 第四世界には。


 大きな同盟が。


 ほとんどなかった。


 五人。


 十人。


 二十人。


 その程度の。


 小さい同盟が。


 世界中に。


 散っていた。


 それでも。


 普通に。


 遊べた。


     *


 理由の一つ。


 土地。


 資源地。


 第三世界とは。


 条件が。


 少し違った。


 狭い範囲でも。


 必要な資源を。


 確保しやすい。


 遠くまで。


 土地を伸ばさなくても。


 成立する。


「だから」


 朔が言う。


「わざわざ大きくなる必要がなかった」


「そうです」


     *


 でも。


 問題もあった。


 大城。


     *


 一つの同盟では。


 人数が。


 足りない。


 複数の同盟で。


 集まる。


 ただ。


 誰が。


 全体を見る。


 何時に。


 行く。


 誰が。


 先。


 誰が。


 後。


 そこで。


 何度も。


 止まった。


     *


「最初に第四から相談来た時」


 俺が言う。


「雰囲気悪いって言ってたよな」


「はい」


 律が答える。


 失敗。


 誰のせい。


 次。


 誰が指揮。


 参加しなかった者。


 そんな話で。


 揉めていた。


     *


 第三世界から。


 大城攻略の。


 やり方を。


 いくつか伝えた。


 人数。


 時間。


 役割。


 失敗しても。


 責めすぎない。


 そんな。


 当たり前になっていたもの。


「第四は」


 律が言う。


「その辺りをかなり取り入れ始めています」


「じゃあ」


 杏が聞く。


「合併する?」


「一部は」


     *


 五人と。


 十人。


 合わせて。


 十五人。


 十人。


 十五人。


 二十人。


 それを。


 一つ。


 二つ。


 まとめる。


「二十から五十くらい」


 律が言う。


「その規模は、かなり増えると思います」


「百人とかは?」


「少ないと思います」


「なんで?」


 玄が聞く。


「第四世界では」


 律が。


 少し考える。


「大きくなりすぎる必要性を、まだ経験していないからです」


     *


 大同盟。


 それは。


 強い。


 でも。


 連絡も。


 増える。


 役割も。


 増える。


 指揮も。


 必要。


 誰かが。


 負担する。


 第四世界の者は。


 そこまで。


 大きな集団に。


 慣れていない。


     *


「でも」


 岳が言う。


「少人数だけじゃ、大城でまた同じことになる」


「だから」


 律が頷く。


「少しだけ、まとまる」


     *


 第三は。


 大きすぎたものを。


 ほどく。


 第四は。


 小さすぎたものを。


 少し。


 繋ぐ。


     *


「真ん中くらいになるな」


 玄が言った。


「私も」


 律が答える。


「そう予想しています」


     *


 ただ。


 第三。


 第四。


 その区切りも。


 統合後。


 ずっと。


 残るとは。


 限らない。


     *


「これ」


 律が。


 第四世界の名簿を。


 出した。


「すでに何人か」


「何?」


「第三世界の同盟へ、統合後の加入について問い合わせています」


「もう?」


 俺が聞く。


「はい」


 玄。


 朔。


 律。


 そして。


 晴。


 それぞれ。


 第四世界から。


 声が。


 掛かっている。


     *


「晴のところにも?」


「あります」


「何て?」


「釣りをするのか、聞かれたそうです」


 俺は。


 笑った。


「そこ?」


「本人の募集方針からすると重要なのでは」


「まあ」


     *


 律が。


 四方面の図を。


 また。


 机へ出した。


「統合後」


 同じ北西へ。


 第三。


 第四。


 両方が。


 入ってくる。


 隣が。


 誰になるかは。


 分からない。


     *


 第三世界だった。


 第四世界だった。


 そんなことより。


 隣に。


 いる。


 その方が。


 重要になる。


「砦一緒に取る」


 杏が言う。


「はい」


「大城一緒に行く」


「はい」


「土地で揉める」


「それも」


「話す」


「そうです」


     *


「一か月もしたら」


 律が。


 少し笑う。


「第三だった、第四だったと毎回言わなくなると思います」


「そんな早い?」


 俺が聞く。


「近くにいる人の名前を覚える方が先です」


 それは。


 確かに。


 そうかもしれなかった。


     *


 少し。


 静かになった。


 外から。


 風が。


 入る。


 机の紙が。


 一枚。


 少し浮いた。


 葉が。


 手で押さえる。


     *


「でも」


 律が言った。


 その一言だけで。


 全員が。


 また。


 顔を上げる。


「統合直後は、かなり揉めると思います」


 岳が。


「砦」


 と。


 すぐ言う。


「はい」


     *


 第三も。


 第四も。


 砦ボーナス。


 ゼロ。


 全員。


 欲しい。


 全員。


 土地枠。


 足りない。


     *


 新世界へ。


 早く入った。


 近くに。


 砦があった。


 土地を。


 伸ばした。


 あと少しで。


 届く。


 その時。


 反対側から。


 別の道が。


 伸びてくる。


     *


「そこ、うち狙ってました」


 俺が言う。


「多分、それが何十件も来ます」


 律が答えた。


「早い者勝ちじゃ駄目?」


 玄が聞く。


「そう考える人もいます」


「話し合い?」


「そう考える人もいます」


「譲る?」


「譲らない人もいます」


「結局」


 玄が笑う。


「揉める」


「はい」


     *


 第三世界は。


 比較的。


 温厚だった。


 でも。


 全員。


 何でも。


 譲るわけではない。


 第四世界も。


 小さな同盟が多い。


 でも。


 仲良しだけで。


 生きてきたわけではない。


     *


「多分」


 律が言う。


「最初の一週間が、一番大変です」


 俺は。


 机へ。


 ゆっくり。


 突っ伏した。


「もう嫌だ」


「何が?」


 玄が聞く。


「会議」


「まだ始まってないぞ」


「明日からまたいっぱいあるんだろ」


「あります」


 律が。


 普通に答えた。


「言わなくていい」


     *


 葉が。


 三枚の紙を。


 まとめた。


 そして。


 最後に。


 一番下へ。


 もう一枚。


 白い紙を。


 追加した。


「これは?」


 俺が聞く。


 葉が。


 上に。


 文字を書く。


【統合後・実際】


 誰も。


 しばらく。


 何も言わなかった。


     *


「予測の答え合わせ?」


 杏が聞く。


「うん」


「外れたら?」


「それも書く」


「全部外れたら?」


「いっぱい書ける」


 葉が。


 少し笑った。


     *


 律も。


 その白い紙を。


 見ている。


「第四が」


 ぽつりと。


 言った。


「統合した瞬間、巨大同盟を作るかもしれません」


 玄が。


「それは面白い」


 と言う。


「第三が」


 律は続ける。


「思ったより全然分裂しないかもしれません」


「北西はもう分裂しかけてるぞ」


「他です」


「なるほど」


「砦も」


「うん」


「意外と話し合いだけで終わるかもしれません」


 玄が。


 即座に。


「それはない」


「私も可能性は低いと思っています」


「そこは思うんだ」


     *


 少し。


 笑いが起きた。


 最後の夜。


 未来の話をしている。


 でも。


 不思議と。


 少し前より。


 怖くなかった。


     *


 北西の猫は。


 なくなるかもしれない。


 七人も。


 別々になる。


 第三世界も。


 明日には。


 名前を失う。


 でも。


 誰かが。


 どこかへ。


 消えるわけではない。


     *


 玄は。


 多分。


 戦う。


 朔は。


 また。


 数字を見る。


 律は。


 知らない同盟へ。


 挨拶に行く。


 巌も。


 自分の旗を。


 立てる。


 晴は。


 たぶん。


 魚を探す。


 俺たちは。


 それぞれ。


 次を。


 始める。


     *


 その時。


 広間の扉が。


 開いた。


 カイだった。


「まだやってたの?」


「今終わる」


「何の話?」


「明日からどうなるか」


「分かった?」


 俺は。


 机の紙を見る。


 確定。


 第三世界予測。


 第四世界予測。


 最後に。


 何も書かれていない白紙。


「分からない」


「じゃあ」


 カイが言った。


「明日見ればいいじゃん」


     *


 玄が。


 ゆっくり。


 机に。


 額を付けた。


「今までの時間返せ」


「何?」


「何でもない」


     *


 俺も。


 少し笑った。


 カイの言うことは。


 いつも。


 簡単だ。


 でも。


 今回は。


 その通りだった。


 明日になれば。


 少なくとも。


 一つ目の答えは。


 出る。


     *


 みんなが。


 広間を出たあと。


 俺は。


 一人。


 窓際へ戻った。


 第三世界の。


 最後の地図を開く。


 玲山城。


 北西の猫。


 玄の城。


 朔。


 律。


 岳。


 杏。


 葉。


 晴。


 今まで。


 何度も見た。


 位置。


     *


 その全部が。


 明日。


 変わる。


     *


 地図を。


 少し。


 引く。


 盃が見える。


 北西だけではない。


 東。


 南。


 中央。


 世界の。


 あちこち。


     *


 第三世界。


 大きくなった。


 戦った。


 話し合った。


 揉めた。


 助けた。


 疲れた。


 最後には。


 みんなで。


 盃を作った。


     *


 明日。


 第四世界と。


 一つになる。


 第三は。


 小さくなるのか。


 第四は。


 大きくなるのか。


 それとも。


 律の予測なんて。


 全部。


 外れるのか。


     *


 俺は。


 北西の端を見る。


 統合後も。


 北西へ行く。


 それだけは。


 もう。


 ほとんど決めていた。


 理由を聞かれると。


 困る。


 資源が。


 特別いいわけではない。


 中央から。


 近いわけでもない。


 戦略的に。


 最善だとも。


 限らない。


     *


 でも。


 最初に。


 七人で。


 集まった場所だった。


 なら。


 新しい世界も。


 そこから。


 始めてみたい。


     *


 画面の端。


 数字が。


 静かに。


 変わった。


【第三世界・第四世界統合まで】


【あと 八時間】


 俺は。


 それを。


 しばらく見た。


     *


 八時間。


 寝れば。


 すぐだった。


     *


 窓を閉める。


 灯りを。


 少し落とす。


 机の上には。


 葉が残した。


 白い紙がある。


【統合後・実際】


 その下には。


 まだ。


 何も。


 書かれていない。


     *


 明日。


 そこから。


 始まる。

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