話し合いはつづくどこまでも
第七十三話 向こう側の統一
それから。
少し時間が流れた。
第三世界と第四世界では。
相変わらず。
統合後の話し合いが続いていた。
方面。
配置。
砦。
領地。
誰が先に入るか。
遅れて入る者をどうするか。
決めても。
追加情報が出る。
また話す。
そんなことを。
何度も繰り返した。
*
「北西でほぼ決まり?」
カイが聞いた。
「たぶん」
「たぶん?」
「第四側の最終確認がまだ」
「まだやってるんだ」
「やってるよ」
「長いな」
「長いよ」
俺は。
もう。
会議という言葉を聞くだけで。
少し疲れるようになっていた。
でも。
少しずつ。
形にはなっている。
第三と第四。
北西方面を中心に。
なるべく近い位置へ。
早く入れる者から先行。
後続が入れる場所を残す。
砦は。
近い同盟を中心に。
取りすぎない。
揉めたら話す。
第三世界らしい。
そう思っていた。
*
その日の夜。
世界間掲示板に。
見慣れない数の通知が出た。
「何これ」
開く。
第一世界だった。
投稿が。
異常な速さで流れている。
『開戦』
『中央同盟崩壊』
『西部も動いた』
『第一、北部侵攻』
『盟主落ちた』
『もう終わりじゃない?』
俺は。
画面を止めた。
「周」
「はい」
「第一で何か起きてる」
周も見る。
新しい固定投稿が上がる。
【第一世界・第一同盟より】
『統合まで暇なので』
『天下統一を目指します』
俺は。
しばらく。
読んだ。
「……暇だから?」
「そのように書いてございます」
「天下統一?」
「はい」
「暇だから?」
「はい」
もう一度。
見た。
やっぱり。
そう書いてある。
*
最初。
冗談だと思った。
でも。
第一世界では。
本当に。
戦争が始まった。
最大同盟。
第一同盟。
世界開始から。
ずっと上位にいた同盟。
その同盟が。
近隣の主要同盟へ。
次々と宣戦布告した。
理由は。
統合まで。
やることがない。
それだけだった。
*
『中央第二同盟敗北』
『盟主降伏』
『北部同盟も撤退』
『砦全部第一に取られた』
通知が。
止まらない。
第一世界の戦争は。
俺たちの知っている戦争とは。
少し違った。
速い。
迷わない。
同盟単位で。
目的を決める。
部隊を集める。
攻める。
負けた側は。
土地を捨てる。
砦を明け渡す。
次へ行く。
それが。
延々と続く。
「こんなに早いの?」
「経験の差もあるのでしょう」
周が答える。
「半年先行してるから?」
「それもございます」
第一世界は。
俺たちより。
半年長く。
戦争をしてきた。
たぶん。
戦うことに。
慣れすぎている。
*
三日後。
第一世界の。
主要同盟の一つが。
消えた。
正確には。
敗北して。
分解した。
所属していた君主の多くは。
第一同盟へ移るか。
別の小同盟へ。
散った。
「一個なくなった?」
「はい」
「大きいところだよね」
「第一世界でも上位だったようです」
俺は。
ランキングを見る。
第一同盟だけ。
明らかに。
膨らんでいた。
人数。
城。
砦。
領地。
全部。
増えている。
「これ」
「はい」
「本当に統一する気じゃん」
*
一週間後。
第一世界の主要同盟は。
さらに減った。
戦って。
負けた。
吸収された。
また戦って。
負けた。
また吸収された。
残った同盟も。
第一同盟と。
まともに戦える規模ではなくなっていた。
世界間掲示板には。
第一世界の君主が。
普通に書いている。
『統一見えてきたな』
『統合前に終わらせたい』
『第二と当たる前に一回世界取っとくか』
『記念になる』
「記念って」
俺は。
思わず。
笑ってしまった。
でも。
笑い事ではない。
統合後。
俺たちが。
いつか。
この第一世界と。
同じ場所へ行く可能性がある。
そう考えると。
少し。
怖かった。
*
そして。
第二世界も。
動いた。
第一世界の統一戦争を見て。
刺激されたらしい。
『第二も統一した方がよくない?』
最初は。
そんな書き込みだった。
『戦争する必要ある?』
『ない』
『上位同盟まとめれば終わる』
『統合前に戦力集約できる』
『第一が一つになるなら、こっちもまとめた方が効率いい』
俺は。
画面を見た。
「第二っぽい」
「非常に」
周も。
すぐ同意した。
*
第二世界では。
戦争が始まらなかった。
会議が始まった。
でも。
第三世界の会議とは。
まったく違った。
『第一が統一するなら第二も統合が必要』
『上位四同盟で合併案』
『盟主権限は持ち回り』
『役職は戦力順』
『砦管理は旧同盟ごとに区域分け』
『不要な重複役職は削減』
『反対の場合は独立継続可能』
『ただし統合後の支援対象外』
俺は。
黙って。
読んだ。
「早いな」
「はい」
話が。
早い。
必要なもの。
不要なもの。
残すもの。
切るもの。
最初から。
整理されている。
*
三日後。
第二世界の。
上位二同盟が合併した。
さらに。
二日後。
別の上位同盟も加わる。
名前が変わる。
人数が増える。
砦が共有される。
役職が整理される。
それだけだった。
戦争は。
一度も起きていない。
*
第一世界。
戦って。
統一する。
第二世界。
合併して。
統一する。
方法は。
まるで違う。
でも。
結果は。
同じ方向へ進んでいた。
*
「これまずくない?」
俺は。
周へ聞いた。
「何がでしょう」
「第一と第二」
画面を指す。
「統合したら」
「はい」
「一個の巨大同盟同士になるんじゃない?」
周は。
しばらく。
答えなかった。
「可能性は高いかと」
「俺たちは?」
「第三と第四は」
周が。
言葉を選ぶ。
「まだ複数の同盟がございます」
「だよね」
第一。
一つに近づいている。
第二。
一つに近づいている。
第三。
たくさん。
第四。
もっとたくさん。
しかも。
俺たちは。
砦を公平に。
土地を公平に。
配置をどうするか。
まだ。
話している。
*
第三・第四合同掲示板でも。
当然。
話題になった。
『第一、かなり統一進んでます』
『第二も合併してる』
『うちもまとめた方がいい?』
『それは違うと思う』
『統合前に無理に一つにする必要ない』
『でも将来的に第一第二と当たったら?』
『その時考えればいい』
『遅くない?』
久しぶりに。
会議が。
少し荒れた。
戦力を。
まとめるべき。
無理に。
まとめる必要はない。
どちらも。
分かる。
俺は。
何も書かず。
しばらく。
画面を見ていた。
*
その横で。
カイは。
編み物をしていた。
「カイ」
「ん?」
「第一と第二、天下統一しそう」
「へえ」
「第一は戦争」
「うん」
「第二は合併」
「うん」
「俺たちどうした方がいいと思う?」
カイの手が。
止まる。
少し。
考える。
「今まとまらないと困る?」
「将来は困るかもしれない」
「今は?」
「……今は別に」
「じゃあ今はいいんじゃない?」
「簡単に言うな」
「だって」
カイは。
また。
糸を動かす。
「困ってからでも話せるだろ」
「遅かったら?」
「その時は」
少し笑う。
「頑張る」
「雑だな」
「まだ戦ってないし」
俺は。
第一世界を見る。
第二世界を見る。
第三と第四を見る。
第一は。
戦うことで。
一つになる。
第二は。
効率で。
一つになる。
俺たちは。
話し合いながら。
まだ。
いくつもの同盟に分かれている。
それが。
正しいのか。
遅れているのか。
今は。
まだ。
分からなかった。




