背景
第七十二話 どっと疲れた
会議が始まったのは。
昼を少し過ぎた頃だった。
第三世界。
第四世界。
主要同盟の盟主。
副盟主。
役職者。
それに。
統合後の運営に関わる者。
思っていたより。
ずっと多い。
『では、まず統合後の方針から決めたいと思います』
第三世界側の盟主が書き込む。
『異論ありません』
『第四側も大丈夫です』
『よろしくお願いします』
最初は。
順調だった。
*
『第三と第四は、基本的に協力関係でいいですよね?』
『第四側は賛成です』
『第三も問題ないと思います』
『統合後に争う意味ないですし』
『そうですね』
ここまでは。
早かった。
俺も。
すぐ終わると思っていた。
*
『では、砦について』
そこから。
長くなった。
『事前に分配しますか?』
『配置分からないので難しくないですか』
『でも何も決めないと取り合いになります』
『近い同盟優先?』
『それだと強い同盟だけ有利』
『第四側にも公平にしたい』
『第三と第四で数を半分に分ける?』
『砦の数が同じとは限りません』
『等級も違います』
『じゃあ等級ごと?』
『そこまで今決められます?』
俺は。
画面を眺めた。
話は。
進んでいるようで。
進んでいなかった。
*
一時間後。
まだ。
砦の話をしていた。
『高級資源地に近い砦はどうします?』
『そこも分けた方がいい』
『でも実際の地形分からない』
『なら統合後に調整』
『統合後に調整なら今決めなくてよくない?』
『方針は必要です』
『方針だけ決める?』
『どこまでが方針?』
俺は。
画面から目を離した。
「周」
「はい」
「会議ってこんな疲れる?」
「人数が多いですから」
「戦った方が早くない?」
「それを避けるための会議でございます」
「そうなんだけどさ」
正しい。
正しいけど。
疲れる。
*
二時間後。
ようやく。
一つ決まった。
第三世界と第四世界は。
統合直後。
互いの砦を。
意図的に奪わない。
競合した場合。
まず話し合う。
強引な占領はしない。
『これでいいと思います』
『賛成』
『第四も賛成です』
『異論なし』
俺は。
少し安心した。
やっと。
一個。
決まった。
と思った。
*
『次、領地について』
まだあった。
『取得値は残るんですよね』
『はい』
『実際の土地は消える』
『そうです』
『じゃあ新しい土地取るには旧領地を放棄する』
『その理解です』
『全員一斉に放棄する?』
『それ危なくない?』
『何が?』
『新しい土地取れなかった場合』
『でも放棄しないと取れない』
『高レベル土地の位置確認してからの方がいい』
『最初は低レベルで繋げる必要ある』
『放棄順決める?』
『そこまで管理します?』
また。
始まった。
*
三時間。
四時間。
途中で。
夕食が運ばれてきた。
俺は。
画面を見ながら食べた。
カイが。
途中で来る。
「まだやってる?」
「やってる」
「昼から?」
「昼から」
「何決まった?」
「いっぱい」
「終わりそう?」
「分からない」
「じゃあ終わってないじゃん」
「そういう言い方するな」
カイは。
俺の向かいに座った。
「何話してるの?」
「砦」
「うん」
「土地」
「うん」
「同盟の位置関係」
「うん」
「第四との役割分担」
「うん」
「統合直後の攻城」
「うん」
「資源地」
「うん」
「あと揉めたときの連絡方法」
「多いな」
「多いよ」
俺は。
机に額をつけた。
*
それでも。
話し合った。
第三世界。
第四世界。
今まで。
別々だった人間が。
同じ世界になる。
最初から揉めたくない。
その気持ちは。
みんな同じだった。
*
最終的に。
大まかな方針が決まった。
第三と第四は。
統合後。
協力する。
砦競合は。
話し合い。
高級資源地は。
一部同盟に偏らないよう調整。
大型城攻略は。
第三世界の経験を元に。
合同で行う。
問題が起きた場合は。
まず代表者間で協議。
互いの同盟員への攻撃は。
原則禁止。
世界内で。
無用な戦争を起こさない。
長かった。
本当に。
長かった。
『では、この方針で』
『賛成です』
『第四も問題ありません』
『よろしくお願いします』
『お疲れさまでした』
画面に。
お疲れさまでした。
が。
大量に並ぶ。
俺も。
打った。
『お疲れさまでした』
送信。
椅子へ。
思い切り。
もたれた。
「終わった」
周が。
お茶を置く。
「お疲れさまでございました」
「もう今日は何も決めたくない」
「かなり長時間でございましたね」
「戦争してないのに」
「はい」
「どっと疲れた」
カイが。
横で果物を食べている。
「終わった?」
「終わった」
「よかったじゃん」
「うん」
本当に。
終わった。
これで。
統合まで。
あとは準備するだけ。
そう思った。
*
通知が来たのは。
その。
十分後だった。
【統合追加情報】
「……」
俺は。
見なかったことにしようとした。
「君主様」
「見えてる」
周に言われた。
「見えてるけど」
嫌だった。
でも。
開く。
【新世界への初期配置について】
俺は。
少しだけ。
嫌な予感がした。
【統合時、各君主は希望する方面を選択できます】
「方面?」
説明が続く。
【北西】
【北東】
【南西】
【南東】
四つ。
「……選べるの?」
「そのようですね」
さらに。
【統合開始後、一定時間の移動猶予期間が設けられます】
【各方面の開始地点は、移動手続きを完了した君主から順次確定します】
俺は。
読み終わった。
もう一度。
読んだ。
「周」
「はい」
「これ」
「はい」
「早い者勝ちってこと?」
「かなり近いかと」
さらに。
注意書き。
【同一世界所属君主が同一方面を選択する必要はありません】
【各君主は個別に移動先を選択できます】
俺は。
黙った。
今日。
何時間。
話した。
砦。
土地。
資源。
配置。
役割。
第四との分担。
全部。
統合後。
同じ場所にいる。
その前提だった。
「……」
カイが。
俺の顔を見る。
「どうした?」
「方面選べるって」
「へえ」
「しかも早く入った人から場所決まるって」
「へえ」
「全員一緒じゃなくてもいいって」
「へえ」
「今日の会議」
「うん」
「かなりやり直しになる」
カイが。
少し考える。
「また明日話せば?」
俺は。
机に。
突っ伏した。
「やだ」
「そんなに?」
「五時間くらいやってた」
「ああ」
カイが。
少しだけ。
同情する顔になった。
「それは嫌だな」
「だろ」
世界間掲示板。
第三世界。
第四世界。
さっきまで。
『お疲れさまでした』
と並んでいた場所に。
新しい書き込みが増え始める。
『追加情報見ました?』
『見ました』
『これ方面から決め直しでは?』
『北西どうですか』
『待ってください』
『第四側でも話します』
『今日もう一回会議します?』
俺は。
画面を閉じた。
「今日はしない」
「されると思います」
「しない」
「通知が来ております」
「見ない」
「会議招集です」
俺は。
ゆっくり。
顔を上げた。
通知を見る。
【第三・第四世界合同会議】
【追加情報について】
カイが。
果物をもう一つ取った。
「頑張れ」
「他人事だな」
「俺、役職ないし」
そうだった。
俺は。
今日一番。
カイが羨ましかった。




