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戦略

第七話 兵を持つ


「十人なら、これだけか」


 募集人数を減らすと、必要な資源も減った。


 増やせば、その分だけ多くなる。


 そこまでは分かりやすい。


 俺が見落としかけたのは、その下だった。


「これ、毎日減るんですか」


「兵の維持に必要な食料でございます」


 周の説明を聞きながら、数字を見直した。


 集めるときに払って終わりではない。


 城にいる間も、外へ出ている間も、兵がいれば食料を使う。


 試しに募集人数を大きく増やした。


 食料の収支が赤くなった。


「……これは駄目だな」


 数字を戻す。


 隣のカイは、黙って画面を見ていた。


「どれくらい欲しい?」


「何をするんだ?」


「近くの土地を取りたい」


「近くって?」


 俺は地図を開いた。


 城の周りに、小さな区画が並ぶ。


 隣接している土地を一つ選ぶと、情報が表示された。


 平地。


 所有者なし。


 土地等級一。


 守備兵の項目もあった。


「誰の土地でもないのに、兵がいるのか」


「占領には、守備兵を退ける必要がございます」


 周の答えに、俺はもう一度、土地の名前を見た。


 空いているから使える、というわけではないらしい。


     *


 結局、二十人にした。


 大勢いた方が安心だとは思った。


 ただ、安心するためだけに増やすと、今度は食料が心配になる。


 土地の守備情報と、兵舎で用意できる兵種を見比べる。周に表示の意味を一つずつ確認した。


「二十人なら勝てますか」


「兵数のみでは決まりません」


「じゃあ、何で?」


「指揮する武将、兵種、相性などが影響いたします」


 俺はカイを見た。


 カイも俺を見ていた。


「俺だよな」


「……頼める?」


「やるけど、勝てるかは分からないぞ」


 簡単に大丈夫とは言わなかった。


 そのことが少し怖くて、少しだけ助かった。


「準備してから決めよう。募集したら、すぐ出なきゃいけないわけじゃないんだろ」


「はい」


 周の返事を聞いてから、俺は募集を決定した。


     *


 時間が来ると、兵舎の前に二十人が並んだ。


 槍を持ち、同じような装備を着けている。


 顔は違った。


 背丈も少しずつ違う。


 けれど、立つ姿勢やこちらを見る動きは揃っていた。


「募集が完了いたしました」


 周が告げた。


 俺は何か言わなければと思った。


「……よろしくお願いします」


 兵たちは一斉に頭を下げた。


 それきりだった。


 誰も話しかけてこない。


 カイが列の前を歩き、一番端で止まった。


「前へ進めるか?」


 兵が動いた。


「あ、全員じゃなくて」


 列が止まる。


 カイはこちらを振り返った。


「これ、言い方をちゃんと決めた方がいいな」


 周が基本の号令を説明した。


 前進。


 停止。


 整列。


 向きを変える指示。


 カイは一つずつ試した。


 兵は指示に従った。聞き返すことも、相談することもなかった。


 見ているうちに、俺はカイとの違いを意識した。


 畑を頼んだとき、カイは何をすればいいのか聞いた。


 飯の心配もした。


 この兵たちは、何も聞かない。


「武将も、みんなカイみたいに話すんですか」


 小声で周に尋ねた。


「寡黙な者も多くおります」


「そうなんですね」


 カイが戻ってきた。


「とりあえず、歩いて止まるのはできた」

「どう?」

「二十人、一緒に動くと長い」


 振り返ると、兵たちは次の指示を待っていた。


     *


 広間に戻り、食料の収支を確認した。


 朝より増え方が遅くなっていた。


 表示の中では、もう二十人分の食料が使われ始めている。


 募集しただけだ。


 まだ何も手に入れていない。


 それでも、費用は掛かる。


「明日は道を確認しよう」


 地図を机の上へ広げる。


 カイが隣に立った。


「ここまで?」

「うん。出発する前に、帰りまで見ておきたい」


 城のすぐ隣にある、小さな平地。


 指一本で隠れるその区画が、昨日より遠く見えた。

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