検証
第六話 武将の仕事
カイの名前を、畑の枠へ入れた。
決定する前に、生産量の数字が変わる。
「増えた」
隣から覗いていたカイが言った。
「少しだけな」
名前を外す。
数字が戻る。
もう一度入れると、さっきと同じ数字になった。
周に教えてもらった通りだった。武将を施設へ配置すると、その能力に応じて働きが変わる。
俺は決定を押さず、今度は伐採所を選んだ。
こちらも増える。
ただ、畑と比べてどちらが得意なのか、よく分からなかった。
「これ、どっちに向いてるんですか」
「施設ごとの基礎生産量が異なります。増加する量だけでは比較できません」
「割合を見る?」
「はい」
説明を開き直す。
カイの能力欄と、施設側の補正が並んでいた。
順番に確かめてみたが、どこか一つだけ大きく伸びるわけではなかった。
「……だいたい同じか」
「俺、何でもできるんじゃない?」
「そういう見方もあるな」
カイは満足そうに頷いた。
俺はもう一度、能力欄を見た。
目立って高い数字はない。
逆に、何も任せられないほど低いわけでもなさそうだった。
最初に登用したときは、もっと分かりやすいものを期待していた。戦うのが強いとか、畑に置けば収穫が倍になるとか。
実際には、少し増える。
その少しを、どこへ回すか考える必要があるらしい。
*
「配置したら、ここにずっといるのか?」
畑の前で、カイが聞いた。
畝の間を、作業をする者が行き来している。
周が答えた。
「担当施設で勤務していただきます。別の任務に就く場合は、配置の変更が必要です」
「飯は?」
「勤務外の時間にお取りいただけます」
カイは俺を見た。
「それならいい」
「飯が一番心配なのか」
「食べられない仕事は嫌だろ」
それはそうだった。
配置画面へ目を戻す。
伐採所を作った後、木材の数字ばかり追っていた。その間に、別の資源が足りなくなった。
一つ多く作れば全部解決すると思っていたのが、間違いだった。
今は食料にも余裕が欲しい。
「今日は畑を頼んでもいいか」
「何すればいい?」
俺は周を見た。
カイも周を見た。
「作業の割り振りと、進行の確認をしていただきます」
「自分で耕すんじゃないのか」
「必要に応じて補助はできますが、担当者としての仕事が優先となります」
カイは畑を眺めた。
「分かった。やってみる」
決定を押す。
名前が枠の中に収まり、生産量の数字が確定した。
*
広間へ戻ってからも、何度か畑の表示を開いた。
故障した機械を気にしているみたいで、自分でも落ち着かなかった。
配置は有効。
生産は進行中。
同じ内容を確認して、閉じる。
昼過ぎ、とうとう畑まで行った。
カイは畝の端に立っていた。
手に薄い板を持ち、そこに書かれたものと畑を見比べている。
「どう?」
「今、こっちが終わった」
指した場所では、数人が道具を片づけていた。
「次は向こう」
「困ってない?」
「この字、最初読めなかった」
板の隅を指す。
「周に聞いたら分かった」
「そっか」
会話が途切れた。
俺は畑を見るふりをした。
カイがこちらを見る。
「ほかに何か?」
「いや。様子を見に来ただけ」
「まだ終わってないぞ」
「うん」
邪魔をしている気がして、引き返した。
*
夕食で、カイは椅子に座るなり肩を回した。
「疲れた?」
「ずっと立ってたから」
俺は生産の記録を見せた。
「少し増えてた」
「少し?」
「ちゃんと、表示されてた分くらい」
カイは数字を見てから、椀を手に取った。
「じゃあ、できたな」
「うん。ありがとう」
口にしてから、妙に改まった気がした。
カイは気にせず食べ始めている。
「明日も畑?」
「まだ決めてない」
俺は別の項目を開いた。
兵舎。
これまでは、名前を見ただけで閉じていた場所だった。
カイが匙を止める。
「兵?」
「外へ行くなら、必要みたいだ」
食料の必要量が、最初に目に入った。
俺は今度こそ、説明を下まで読んだ。




