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第4話:死の荒野で「ここに穴を掘ってください」と言った結果

翌日、私はギルベルト陛下と共に、馬車で数時間の場所にある「死の荒野」を訪れていた。


見渡す限りの赤茶けた土。

草木の一本すら生えておらず、ひび割れた地面がどこまでも続いている。

ここは、帝国の優秀な魔導師たちが何十年調査しても原因が分からなかった、呪われた魔力枯渇地帯だ。


「サクラ・コ、ここが我が国の最大の難所だ。お前の耳には、この土地がどう聞こえる?」


ギルベルト陛下が、風に漆黒の髪をなびかせながら私に問いかける。

その背後では、視察に同行した帝国の気難しい老官僚たちが、「本当にこんな小娘に原因が分かるのか」と懐疑的な目を向けていた。


(……すっごく痛々しい叫び声が、地面の底から聞こえてくる。みんな、苦しんでるわ)


私は静かにしゃがみ込み、ひび割れた大地の土にそっと両手を触れた。

その瞬間、泣きじゃくるような無数の小さな声が、一斉に脳内へ飛び込んでくる。


『お腹が空いたよぉ……。痛いよぉ……』

『上のほうにある、あの真っ黒で大きな岩が、魔力の通り道を完全に塞いじゃってるの……!』


「陛下、原因が分かりました。あそこにある大きな黒い岩……あれをすべて撤去してください」


私が立ち上がり、荒野の中央に鎮座する不気味な巨岩を指差すと、老官僚たちが一斉にざわめいた。

「馬鹿な!あの岩はただの石ころだぞ!」「魔力の枯渇とは何の関係もない!」と口々に批判の声を上げる。


しかし、ギルベルト陛下は冷徹な瞳で彼らを一喝した。


「黙れ。俺はサクラ・コを信じる。――工兵隊、ただちにあの岩を爆破しろ!」


陛下の絶対的な命令により、鋭い爆音と共に黒い巨岩が木っ端微塵に砕け散る。

官僚たちが「無駄なことを……」とため息をついた、その直後だった。


ドゴォォォン……! と、大地の底から激しい地鳴りが響き渡る。


「な、なんだ!? 地震か!?」


官僚たちが慌てふためく中、砕けた岩の隙間から、濁流のような純白の魔力が勢いよく噴き出した。

冷たい風が吹き抜け、魔力の清流が荒野全体へと広がっていく。

茶色かった大地へ一瞬にして青々とした緑が芽吹き、見たこともない鮮やかな花々が次々と咲き誇った。


「ば、馬鹿な……! 何十年も不毛だった荒野が、一瞬で豊かな恵みの土地に……!?」


腰を抜かして地面にひれ伏す官僚たち。

彼らは涙を流しながら、「サクラ・コ様は本物の聖女様だ!」と、神を拝むように私を称え始めた。


(……よかった。石たちの詰まりが取れて、みんな元気になったみたい。やっぱり私のチート能力、前世の残業に比べたらめちゃくちゃ人助けになるわね)


自分の成功にほっと胸をなでおろしていると、不意に、背後から力強い腕でぎゅっと抱きしめられた。

驚いて振り返ると、ギルベルト陛下が私の肩に顔を埋めている。


「ひゃいっ!? へ、陛下!? みんなが見て……!」


「……見せておけ。サクラ・コ、お前は本当に最高の聖女だ。もう絶対に、誰にもお前を渡さない」


耳元で囁かれる、低く独占欲に満ちた声。

陛下の大きな身体から伝わってくる熱い体温に、私の心臓はうるさいほど激しく鼓動を刻み始める。


『わあ! 主様、嬉しすぎて脳汁がドバドバ出まくってるよ!』

『「こんな素晴らしい聖女を捨てた前の国は本物の馬鹿だな、サクラ・コが愛おしすぎて今すぐ婚姻届を出したい」って、頭の中で大歓喜のダンスを踊ってるよー!』


「サファイアさん……っ、もう本当にやめてあげて!」


私は真っ赤になりながら、陛下の胸元のサファイアを両手で必死に押さえた。

抱きしめてくる陛下の顔も、茹で上がったトマトのように真っ赤になっている。


冷徹な皇帝の威厳はどこへやら。

私の無自覚な大活躍によって、ウブな陛下の過保護と独占欲は、いよいよ引き返せないところまで暴走し始めていた。


(第4話おわり)

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