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第33話:食料危機につけ込む「悪徳穀物貴族」の妨害と、前世農業イノベーション!

帝国北部の不毛地帯――「黒の荒野」。

ひび割れた土壌と冷たい風が吹きつけるこの地で、私とギルベルト陛下、そして7大魔石による『大農園開拓プロジェクト』がスタートした。


「サクラコ、風が冷たい。俺の外套を着ろ。いや、車から出ない方がいい。荒れ地の微粒子がお腹の赤ちゃんに吸い込まれたらどうする」


「ギ、ギルベルト様、特注の『ふかふか防風馬車』に乗っていますし、ダイヤくんの結界もありますから大丈夫です!」


相変わらずの超過保護モードな陛下に苦笑しつつ、私は広大な荒野を見渡した。


この土地が放置されていた理由は単純だ。土壌の栄養が完全に枯渇しており、寒冷な気候のせいで作物が入植してもすぐに枯れてしまうからだ。

そして、この「北部不毛」の状況を最も喜んでいたのが、帝国の食料市場を独占する『悪徳穀物貴族・ブランドン伯爵』一派だった。


「ハッハッハ! 元地下牢の無能姫が、泥にまみれて土いじりだと? 笑わせるな!」


開拓地に乗り込んできたのは、肥満体型に豪華な毛皮を羽織ったブランドン伯爵だった。彼は配下の私兵を従え、見下すような嫌味な笑みを浮かべている。


「いいか皇后様。作物が育つには何ヶ月もかかるのだ! それまでに北部の民は干上がってしまう! 我がブランドン商会から高値で穀物を買い続けるのが、賢い皇帝陛下の選択というものだ!」


ブランドン伯爵は裏で買い占めた穀物の価格を吊り上げ、北部の民から暴利を貪っていた張本人だ。

彼らは裏で手を回し、開拓地に「害虫の卵」を大量に撒き散らし、開拓を物理的に妨害しようと企んでいた。


だが――私のお腹の前に立ち塞がった7大魔石たちが、冷ややかな視線を送る。


『うわぁ……見てよみんな。あの太っちょオジサンの心の中、「害虫で全滅させてサクラコお姉ちゃんを失敗させ、高値で腐った小麦を売りつけてやる」ってド黒い悪意でいっぱいだよ!』

フローライトくんが真実の光(ピンク)で容赦なく内面を暴露する。


『ふむ……害虫撒き散らしの違約金、および損害賠償請求額、金貨3億枚に追加ですわ!』

シトリンちゃんがジャラジャラとそろばんを鳴らす。


『サクラコ様、あのような卑劣な害虫ども、我が情熱の炎で黒焦げにしてやりましょうか!?』

ルビーくんが真熱の赤を爆発させ、


『あらあら、ご心配なさらないで。ワタクシの緑の芽吹きは、そんな邪悪な虫など寄せ付けませんわ』

エメラルドさんがお母さんのような温かな光で大地を優しく包み込んだ。


私はブランドン伯爵に向かって、凛とした笑みを向けた。


「ブランドン伯爵。前世……いいえ、私の知識によれば、農業は『気候』と『環境』をコントロールすれば、一夜にして革命を起こせるのです」


「な、なに……!?」


「ダイヤくん、ルビーくん、エメラルドさん……お願いします!」


『了解だよサクラコお姉ちゃん! **【ドーム型環境遮断結界(温室バリア)】展開!!**』


ダイヤくんが放った透明な光が、荒野の広大な一角をまるごと包み込む巨大なガラスドームのように覆った! 外部の冷気と害虫を完全に遮断する超・巨大温室の完成だ。


続いてルビーくんが地熱を微調整し、ドーム内部を常春の最適な気温に保つ。


『そして、ワタクシの癒やしの芽吹きと……サクラコ様の『アグリテック(土壌改良&栄養調整)』の知識ですわ!』


エメラルドさんが新緑の光を大地に注ぎ込むと、前世の社畜時代に学んだ「連作障害を防ぐ輪作計画」と「肥料の黄金比率」が完璧に噛み合わさった!


ドーム内の不毛の土壌が、一瞬にしてふかふかの黒土へと生まれ変わる。

そして――。


パラパラパラ……!と蒔かれた小麦と野菜の種が、目に見える速さで芽吹き、茎を伸ばし、大輪の穂をつけ始めたのだ!


「な、なにぃぃぃぃぃっ!?? 芽が……作物が一瞬で育っていくだと!?」


ブランドン伯爵が目玉を飛び出させて絶叫する。


ドームの中には、黄金色に輝く最高品質の小麦と、瑞々しいトマトやキャベツが山のように実っていた。通常なら半年かかる育成プロセスが、7大魔石の魔法と前世の知識によって、わずか数時間で完了してしまったのだ!


「素晴らしい……! これぞ我が妻サクラコがもたらす『奇跡の農業革新』だ!」

ギルベルト陛下が感極まったように私を抱きしめる。


「ば、バカな……! こんな真似が許されるか! 買い占めた我が家の穀物が……全滅してしまうではないかーっ!!」


頭を抱えて狂乱する悪徳貴族を余所に、北部の大農園から溢れ出す甘い作物の香りが、どこまでも広がっていくのだった。

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