第28話:熱血騎士な新魔石『ルビー』の覚醒と、前世のおもてなし外交
「ハッ! 『体験会』だと? くだらん手品で我がヴァルハラ帝国を騙せると思うなよ!」
ガルシア覇王は鼻を鳴らし、会場の壁に飾られた由緒ある儀礼用の宝剣を乱暴に引っ掴むと、その柄をサクラコへと突きつけた。
「我が国の武力こそが絶対! この剣に嵌められた赤い大魔石を見ろ! 幾多の戦場で血を吸い、戦意を鼓舞してきた誇り高き『戦術魔石』だ! お前たちの使うおもちゃとは年季も格式も違うのだよ!」
ガルシアが自慢げに誇示する宝剣の柄。そこには、赤くくすんだ大きな石が鈍い光を放っていた。
だが次の瞬間――私がその石にそっと視線を向けただけで、宝剣の赤石が「ピキーン!」と激しい音を立てて眩い真紅の光を放ち始めたのだ!
『ぬおおおぉぉぉーっ!! 燃えてきたぁぁぁーっ!!』
突如として頭の中に響き渡ったのは、暑苦しいほどの熱血ボイスだった。
『我が名はルビー! 数百年の間、薄汚い野心に満ちた男どもに道具として使われ、眠りについていたが……見つけたぞ! 真の主君を!!』
宝剣からまばゆい真紅の光線が放たれ、ガルシアの手から離れると、空中をくるりと舞って私の手元へと収まった。
『サクラコ様! あなたの「人々を癒やし、笑顔にするために魔石を使う」という気高き魂、このルビー、深く感銘いたしました! 我が情熱の炎は、本日よりサクラコ様とギルベルト陛下のためだけに燃やします!!』
「な、なんだと……!? 我が国の宝剣の魔石が……勝手に離脱しただと!?」
目を見開いて絶句するガルシアを余所に、脳内の魔石たちが一斉に大歓声をあげた。
『うわーっ! 新入りは体育会系の熱血騎士タイプー! 暑苦しいけどよろしくねルビーくん!』
サファイアさんがパチパチと青い火花を散らす。
『熱血か……俺のバリア(結界)と相性が良さそうだね。サクラコお姉ちゃんを守る隊長を命じる!』
ダイヤくんがチカチカと誇らしげに輝く。
『ふむ、情熱の赤! これはおもてなしイベントの爆発的集客にめちゃくちゃ使えますわ!』
シトリンちゃんが商機を見出せば、アメジストさんも『ふふ、頼もしい騎士様が増えましたわね』と艶やかに微笑んだ。
私は覚醒したルビーくんを胸元に抱きかかえると、前世のイベントプロデューサー魂を全開にした。
「ガルシア様が武力をお誇りになるのはご自由に。ですが……長旅でお疲れの各国の使節団の皆様、まずは我が国の『おもてなし』をご体験ください!」
パンッ!と私が手を叩くと、訓練された給仕たちが一斉に動き出した。
会場に運ばれてきたのは、魔導冷蔵庫でキリッと冷やされた特製の『果実ジュースとひんやり和スイーツ』。さらに、フローライトくんの真実の光とアメジストさんの癒やし波動を組み合わせた『クイック肩こり解消マッサージブース』、そしてルビーくんの情熱の熱力(微調整)を活用した『特製足湯コーナー』だ!
「な、なんだこの飲み物は……! 長旅の疲労がみるみる吹き飛んでいく……!」
「うわあああっ! 肩が軽すぎる! 長年悩まされていた腰痛まで消えたぞ!?」
「足湯が……足湯が気持ち良すぎて、もうヴァルハラ帝国の殺伐とした話なんて聞きたくない……!」
冷酷な覇権国家の威圧感に怯えていた小国や中立国の使節たちが、一瞬で「サクラコ特製スパ&スイーツ」の虜になり、うっとりと蕩けた表情を浮かべ始めた。
前世のサミットや展示会で培った「ターゲット層のニーズ(疲労回復)を的確に突くおもてなし外交」の完全勝利である。
「素晴らしい……! 武力で脅すヴァルハラ帝国とは違い、アルピナ(帝国)のサクラコ皇后陛下こそ、真に世界を導くお方だ!」
「我が国は、生活魔石協定に全面賛同いたします!」
「ヴァルハラ帝国の圧力など断固拒否するぞ!」
会場の雰囲気は一変。各国使節団の心が一つになり、サクラコ支持の歓声が巻き起こった。
「く……くそがぁぁぁっ! たぶらかしおって……! お前たち全員、我がヴァルハラ帝国の敵とみなすぞ!!」
味方を完全に失い、孤立無援となったガルシア覇王は、顔を真っ赤にして血走らせ、怒り狂って叫ぶのだった。




