第27話:「世界魔石サミット」開幕! サクラコと5大魔石を狙う傲慢な「覇権大国」
あの甘くも凄絶(?)な隠し部屋事件から数日。
「観察記録」という名の重すぎる愛を受け止めたことで、私とギルベルト陛下の絆はより一層強固なものとなった。……まあ、相変わらずサファイアさんたちには毎日いじられているけれど。
そんな中、帝国の首都では大陸の歴史を揺るがす一大イベント――『世界魔石サミット』が盛大に開幕していた。
前世で国際展示会や大型サミットの運営経験があった私は、会場の動線確保や警備の配置、さらには各国使節団へのおもてなしプログラムの立案に大張り切り。社畜時代のスキルがこんなところで役に立つなんて思わなかった。
「サクラコ、あまり無理はするなよ? お前が倒れたら、俺は世界サミットなど即刻中止にしてお前を抱えて寝室へ引き籠もる」
「ギ、ギルベルト様、公務中に恐ろしいことを言わないでください……!」
相変わらず過保護すぎる陛下に手綱を引かれつつ、私は迎賓館の大ホールへと向かった。
今回のサミットの目玉は、私が提案した『生活魔石の技術共有と国際平和協定』だ。
捨てられていた低出力魔石を有効活用し、世界中の人々の生活を豊かにしようという提案に、多くの小国や中立国の使節たちは目を輝かせて賛同してくれていた。
……だが、全員が善意で集まっているわけではない。
「ハハハ! 国際平和協定だと? くだらん『おままごと』に興じていると聞いて来てみれば……まさかこれほど呆れ果てた宴とはな!」
大ホールの重厚な扉を蹴り開けるようにして入ってきたのは、豪華な金銀の鎧を纏った大柄な男だった。
その背後には、威嚇するように黒塗りの重装騎士たちがずらりと控えている。
周囲の使節たちが一斉に息を呑み、怯えたように道を開けた。
大陸西方の覇権大国――『ヴァルハラ帝国』の覇王、ガルシアである。
ガルシアは太い足音を響かせて中央へ進み出ると、私を一瞥し、露骨に鼻で笑った。
「貴様が噂の『元地下牢の無能姫』か。なるほど、顔だけは男を惑わしそうだが……まさかこんな女を皇后に据え、おもちゃのような魔石ビジネスに現を抜かすとはな。ギルベルト皇帝も焼きが回ったものだ」
「侮辱は許さんぞ、ガルシア」
ギルベルト陛下の低い声が響いた瞬間、大ホール全体の空気が凍りついた。
陛下の紅蓮の瞳が鋭く光り、手にした剣の柄に手が伸びる。
しかし、ガルシアは不敵な笑みを崩さず、威圧するように腕を組んだ。
「事実を言ったまでよ! 5大魔石だか何だか知らんが、強大な魔力を秘めた古代魔石を、民草の洗濯や調理などに使うなど豚に真珠! 魔力とは兵器であり、国力そのものだ!」
ガルシアはギラギラとした強欲な目を私に向け、堂々と宣言した。
「無能な皇后に古代魔石を管理させるなど危険極まりない! ギルベルト皇帝よ、真に世界を治めるにふさわしい我がヴァルハラ帝国へ、その5大魔石と技術の全利権を移譲せよ! さもなくば……我が国の圧倒的軍勢が、この国を灰にしてくれよう!」
あまりにも時代錯誤で傲慢な要求。
周囲の各国使節たちは、ヴァルハラ帝国の圧倒的な軍事力を恐れて青ざめ、誰も反論できない。
だが――私の胸元と頭上では、魔石たちが大爆笑を始めていた。
『ぷっ……あはははは! 出たーー! 自称・覇権大国の脳筋オジサン! 「魔力は兵器」とか、いつの時代の思考回路してんの!?』
サファイアさんが青い光をバチバチ弾けさせる。
『うわぁ、見てよみんな。あのオジサンの心の中、「本当は帝国の経済成長が羨ましくてたまらない。魔石の利権を奪って威張り散らしたい」って卑屈な劣等感でいっぱいだよ!』
フローライトくんが真実の光で容赦なく内面を暴露する。
『あらあら……我が予言によれば、あの覇王様、あと1時間後には自分の浅はかさを骨の髄まで後悔することになりますわね?』
アメジストさんが妖艶な紫の光を怪しく点滅させた。
『ふむふむ、ヴァルハラ帝国の財務状況、裏で軍備の拡充をしすぎて破綻寸前ですわ! 威勢がいいのは外見だけで、金庫はスッカラカン! 賠償金むしり取る絶好のチャンスですわぁ!』
シトリンちゃんがそろばんの音をジャラジャラ鳴らす。
『主様! 結界の準備はいつでもオッケーだよ! こいつらが暴れてもかすり傷一つつけさせないからね!』
ダイヤくんもヤル気満々だ。
殺気をみなぎらせるギルベルト陛下の服の裾を、私はそっと引っ張った。
「ギルベルト様、大丈夫です。あのような時代遅れの野蛮な圧力に、私たちが屈することはありません」
「……サクラコ」
私は歩み出ると、高圧的なガルシア覇王に向かって凛とした笑顔を向けた。
「ガルシア様。我が国の生活魔石が『おままごと』かどうか……サミットの体験会にて、とっくりと思い知っていただきましょう」
覇権大国の横暴に対する、社畜元令嬢と6番目の仲間(?)を巻き込んだ大反撃の幕が、今上がろうとしていた。
(第27話おわり)




