第25話:甘々すぎる貸切混浴と、気遣い(?)できる魔石たちの試練
夜の帳が下り、満天の星空が広がるアルピナの最高級離れ。
そこには、極上の源泉が注がれる贅沢な岩造りの「貸切露天風呂」があった。
湯上がりの体に湯浴み着を纏い、足湯に浸かりながら星空を見上げていると、引き戸が静かに開く音と、心地よい低音の足音が響いた。
「……待たせたな、サクラコ」
振り返ると、そこには湯気の中に立つギルベルト陛下の姿があった。
濡れた漆黒の髪を無造作にかき上げ、胸元を少し肌けさせた姿は、いつにも増して色っぽく、息を呑むほど美しい。
「ギ、ギルベルト様……!」
目のやり場に困って真っ赤になる私。
陛下は相変わらずのポーカーフェイスで私の隣に腰掛けたが、その大きな体が心なしかガチガチに強張っている。
もちろん、そんなふたりの様子を静観する気など毛頭ない「彼ら」が、黙っているはずもなかった。
『うわあああぁぁぁ! 主様の脳内、湯上がりのサクラコちゃんの可愛さに完全ノックアウトーー! 「湯気に煙るサクラコが神聖すぎて直視できない……だが抱きしめたい、理性が持たん」って大パニック中だよ!』
サファイアさんが胸元でバチバチと青い光を弾けさせる。
『あらあら、純情な皇帝様。今夜の運命を占って差し上げましょうか?』
アメジストさんが妖艶な紫色の輝きを点滅させながらクスクスと笑う。
『主様! 男でしょ! 覚悟を決めてお姉ちゃんをぎゅーってしちゃいなよ!』
ダイヤくんがノリノリで煽り、
『ちょ、ちょっとダイヤ! お姉ちゃんが照れて困ってるでしょ! (と言いつつ自分も楽しみでピンク色に発光)』
フローライトくんも大騒ぎ。
『ふふん、今夜の二人の甘い時間はプライスレス! 邪魔する奴はウチが許しまへんで!』
シトリンちゃんが威勢よく宣言した瞬間――魔石たちが一斉に眩い光を放ち始めた。
『『『それじゃあ主様、サクラコちゃん、お邪魔虫は退散しまーす! 最強の完全防音&完全遮蔽結界、展開っ!!』』』
ピカーッと光ったかと思うと、魔石たちの声が一瞬にして完全に遮断され、周囲はしん……と静まり返った。
石たちなりの、最大の「気遣い」である。
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静寂が包み込む露天風呂。
湯の湧き出る心地よい音と、夜風に揺れる樹木の音だけが響いている。
結界のせいで石たちの実況が聞こえなくなった分、かえって二人の間の緊張感が跳ね上がってしまった。
「……あいつらめ、余計な真似を」
ギルベルト陛下が低く呟き、耳の裏を真っ赤に染めながらそっぽを向く。
けれど、ゆっくりと私の手元へ伸びてきたその手は、少しだけ震えていた。
「サクラコ」
「はい……っ」
陛下は私の指に自分の大きな指を絡めると、その紅蓮の瞳でまっすぐに私を見つめてきた。
低く、甘く、胸の奥に響く最高の低音ボイス。
「改めて……最高の旅行をありがとう。冷めきっていたこの街に温もりを取り戻してくれたのは、他の誰でもない、お前の優しさと智慧だ。お前は本当に……俺の自慢のお妃様だよ」
「ギルベルト様……」
「だが、一つだけ言わせてくれ。……俺以外の男に笑顔を振りまくのは、いくら民のためだとしても、少し妬ましい」
(ひぇっ、皇帝陛下の素直すぎる独占欲……!)
照れくさそうに、けれど誤魔化さずに本音を伝えてくれる彼が愛おしくて、私の胸は甘い痛みでいっぱいになった。
「ふふ、私の目の前にいるのは、いつだって世界で一番かっこいい私の旦那様だけですよ?」
私が悪戯っぽく微笑んで顔を近づけると、ギルベルト陛下はハッと目を見開いた。
次の瞬間、強い力で引き寄せられ、温かい湯気の中で身体が重なり合う。
「……そんなことを言われたら、もう我慢してやれないぞ」
耳元で低く囁かれ、重なる唇。
湯の温もりよりも熱く、甘い誓いのキスが、夜空の下で何度も繰り返された。
結界の向こうで、魔石たちが『主様やったーー!』『尊すぎて直視できない!』と大はしゃぎで光を明滅させているのをうっすら感じながら――。
私たちは、世界で一番甘くて賑やかな、最高のハネムーンの夜を過ごすのだった。
(第5章・完)
第5章:『愛のハネムーンと、極上温泉スパリゾート開発』
【作者より】
第5章『愛のハネムーンと、極上温泉スパリゾート開発』完結いたしました!
秘湯の街「アルピナ」での新婚旅行、いかがでしたでしょうか?
温泉の利権を横取りしようとしゃしゃり出てきた隣国の傲慢使節&「偽聖女クロエ」は、新魔石アメジストさんの占い&予言と、フローライトくんの真実の光で一網打尽! 敵の護衛騎士たちまでサクラコちゃんの極上スパの虜にして寝返らせる展開は爽快でしたね!
そして何より、貸切露天風呂での甘々混浴タイム……!
表向きはどこまでもクールに、けれど熱い眼差しで「愛している」と囁くギルベルト陛下。ストーカー並みに一目惚れしてから一途に愛し続けてきた彼の想いが溢れ出た最高の夜となりました。
5大魔石(サファイア、ダイヤ、フローライト、シトリン、アメジスト)と、重愛ストーカー皇帝陛下&サクラコちゃんの物語はまだまだ続きます!
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