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第20話:世界一やかましい、初めての「夫婦の共同プロジェクト」の成果

実家のバルトフェルト伯爵家と悪徳商会が一網打尽にされてから、数日。


帝国の経済は、私たちが立ち上げた『生活便利魔石』ブランドの爆発的な普及により、かつてないほどの好景気に沸いていた。

軍事用としては使い道がなく廃棄されていた「低出力のクズ石」は、今や一般家庭の台所や美容に欠かせない宝の山となり、市場に莫大な富をもたらしたのだ。


「お姉様! 今期の最終決算、出ましたで! 帝国の税収、前年比200%増! ウチのそろばん、嬉しすぎて摩擦で火が噴きそうやわぁ!」


私のオフィスで、黄金のシトリンちゃんが金貨の山の上を転がりながら、大歓声を上げる。


『ふふん、僕が認証マークの光を配ったおかげだからね! 感謝しなさいよね!』

ティアラの上のフローライトくんが、嬉しそうにサクラ色の光をぽわんと咲かせた。


『二人とも大活躍だったね! サクラコお姉ちゃん、本当にすごいよ!』

ダイヤくんもチカチカと無色の輝きを弾けさせる。


「みんな、ありがとう。……でも、これは私一人じゃ絶対に無理だったよ。陛下が全面的に支えてくださったおかげです」


私がそう言って隣を振り返ると、デスクで書類にサインをしていたギルベルト陛下が、ぴくりと手を止めた。

相変わらず完璧なポーカーフェイスだが、その耳の裏は、みるみるうちに沸騰したように真っ赤に染まっていく。


「……俺は、何もしていない。お前がその知恵と勇気で、自ら勝ち取った成果だ」


低い、けれどどこまでも優しい声。

すかさず、陛下の胸元でサファイアさんが青い光を大爆発させた。


『あははは! 主様、口ではクールぶってるけど、脳内では「俺の妻は世界一の女神か? 尊い。国中の広場にサクラコの銅像を建てたい。いや、俺だけのものにしておきたいから銅像は撤回する」って、誇らしさと愛おしさで胸が張り裂けそうになってまーす!』


「サファイア……っ、後で裁断室に来い……」


真っ赤になってそっぽを向くギルベルト陛下。

そんな彼のウブで愛おしいギャップに、私はクスッと胸を温かくするのだった。


---


その夜。


すべての執務と祝勝会を終え、私とギルベルト陛下は、静まり返った私室(寝室)へ戻ってきた。


月明かりが差し込む広い部屋。

シルクのナイトウェアに着替えた私が、少し緊張しながらベッドの端に腰掛けていると、着替えを終えたギルベルト陛下がゆっくりと近づいてきた。


「……サクラコ」


「はい、陛下……あっ」


返事をした瞬間、ふわっと体に浮遊感が走った。

陛下が私の腰をすくい上げ、軽々と膝の上に抱き上げて抱きすくめたのだ。


「へ、陛下……!?」


「……昼間の続きだ。二人で勝ち取った共同プロジェクトの成功を、祝わねばな」


ポーカーフェイスの仮面がそっと剥がれ落ち、そこには熱を帯びた紅蓮の瞳があった。

大きな手が私の背中に回され、ぐっと距離が縮まる。耳元に吹きかかる熱い吐息に、私の心臓が跳ね上がった。


「ビジネスに夢中なサクラコも格好良かったが……俺を放置して、あの金ピカのシトリンばかり構っていた罪は重い」


「そ、それはお仕事で……っ!」


「だから、今夜はたっぷり甘えさせてもらう。……いいな?」


冷徹皇帝の、ウブで過保護な独占欲が大爆発している。

あまりにも甘い声にお顔が近すぎて、私の頭はキャパオーバーで真っ白になりそうだった。


と、その時――!


机の上に置かれたブローチやティアラから、待ってましたとばかりに大合唱が聞こえてきた。


『うわあああぁぁぁ! 始まったー! 主様、脳内で「今夜は絶対に途中で日怯まない、朝まで抱きしめ倒す」って決意を固めてまーす!』

『主様カッコいいー! でも手元がちょっと震えてるよ!』

『ちょっと新入りたち! 主様の心拍数が限界突破してるんだから静かにしなよ!』

『せやで! ここからは大人の時間や! ウチらはお邪魔虫(石)やからな!』


サファイアさん、ダイヤくん、フローライトくん、シトリンちゃんの4大魔石たちが、脳内で大騒ぎを始める。


しかし次の瞬間、ダイヤくんが頼もしく叫んだ。


『よし! みんな、気遣いの時間だよ! 僕の【過去最大級の絶対遮断結界】を展開するよー!!』


キィィィィィィン……!


ダイヤくんの合図とともに、机の上の魔石たちの周りに、分厚い無色の結界がシャットアウトするように展開された。


『主様ー! 朝まで心置きなくサクラコお姉ちゃんを愛でてねー!』

『サクラ色から濃いピンク色の遮断光線、出しておきますねー!』

『お姉様、明日のお肌のツヤの査定、楽しみにしてますわー!』


最後にそんな愉快な声が聞こえたのを最後に、石たちの声は完全に途絶え、部屋には静寂が戻ってきた。


「……ふっ。ようやく静かになったな」


ギルベルト陛下が、可笑しそうに低く笑う。

結界を張って配慮してくれた(?)石たちの優しさに、私は顔から火が出そうなほど真っ赤になってしまった。


「サクラコ。……愛している」


「……私も、愛しています、ギルベルト様」


重ねられた唇から伝わる、どこまでも深い愛と温もり。

王国の地下牢という暗闇から始まった私の人生は、世界一ウブな冷徹皇帝と、世界一やかましい石たちに囲まれて、今、世界で一番幸せな輝きに包まれている。


(第4章・完)

第4章:『皇后様の生活魔石革命&強欲な実家へのお仕置き』


【作者より】

第4章をお読みいただき、本当にありがとうございました!


捨てられるはずだった「低出力魔石」を活用し、前世のマーケティング知識(アフィリエイト&認証マーク制度)で大成功を収めた生活魔石ビジネス!

「親の恩」を盾にパクリ商品で一儲けしようとした強欲な実家(バルトフェルト伯爵家)&悪徳商会は、サクラコちゃんの完璧なリスクマネジメントの罠にかかって完全自爆・破産! 鉱山送りという最高のざまぁとなりました!


新入りの関西弁商人シトリンちゃんも加わり、陛下のツンデレな「夜の予算仕分け」も含めて賑やかさが増す一方です。


次章・第5章は、毎日プロポーズで妻を手に入れた陛下が、超過保護に計画した**『愛のハネムーン&極上温泉スパリゾート開発』**です!

二人きりの混浴……!? 陛下の理性が保てるのか!? 乞うご期待です!

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