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冒険者としての

考えてもいなかった、歩む道。

 いや、冒険者とは何か、というのは、それなりに知っているつもりだよ?

 だがしかし、俺は何かと問われたら。


 捻くれたリーマン? いや、それは現実の俺か。


 んじゃあ、この夢の中では?

 あのゲームでは、単にウィザードだった。

 自分の職業が何か? そんな問答する余裕があったら敵を殺せ!

 ……っていう世界だからなあ、あのゲーム。


 そうなると……さて、どう答えた物か。


「ああ、冒険者……では無いな。俺はウィザードで、旅人だ」


 黙考すること3秒。これ以外、答えようが無い。


 ウィザードなんて単語が通じるかは不明だが、まずは冒険者であることは否定しておく。

 つまらない嘘は、大体面倒事しか呼んでこない。


 素直が一番だ。


「旅人……! じゃあ、街へ行くの!?」

 少年の問いに視線を巡らせれば、青空の下、少し遠くに城壁が見える。


「あそこが、街か?」


 期せずして、質問に対して質問で返してしまう俺。

「うん! 僕達の街だ!」

 答える少年はそんな事を気にした様子もなく、輝かんばかりの笑顔で言う。

 後ろでは他の少年少女がやはり笑顔で、少年の言葉に頷いている。


 キミタチ、ちょっと人を信用し過ぎでは無いかね?


 こんな怪しい仮面被った人、簡単に信用しちゃダメでしょうが。

 全く、眩しい子供達だ。

「そうか……。急ぐ旅じゃなし、立ち寄るのも悪くないか」

 急ぐ旅どころか、ハッキリ言えば行く宛など無い。


 というか夢……だしな。


「じゃあ、一緒に行こう! お礼もしたいんだ!」


 元気を取り戻したらしい少年と仲間たちの笑顔を踏みにじるとか、これ無理だろ。

 せっかくだし、感謝されていい気分で目をさますのも悪くないかもな。


 特に深く考えもせず、少年の提案に頷く。ちょっと前に「お姉さん」呼ばわりされたことは無かった事にしちゃう、そんな俺です。




 所で、こう、異世界っぽい所に居るとさ?

 よく有る、アイテムボックスとか、便利アイテムって付き物じゃない?


 そんな便利アイテム、そうそうあるわけないだろ。


 都合よくバカみたいに容量があって、ホイホイ出し入れ可能な魔法のアイテム。

そんなモンまで持ってたら、ただの「ボクの考えた最強の〜」ってやつだ。

 なぁんて考えて頭の中で自分を笑ってた俺だけど、冷静に考えてみると。


 あるわ。


 あのゲーム、そんな説明なんぞ当然のように無いが、考えてみたら一度戦場――人によっては狩り場という――に出ると、結構な数のアイテムを拾って帰れる。

 よくあるラノベみたいに無闇に容量が多いわけじゃないが、無くはないのだ。


 というか、実は俺が思ってるよりは大きい可能性すら有る。


 なぜかって?


 君は、約50億枚の金貨ってのがどれくらいの量なのか、理解(わか)るかね?

 俺はワカンネ。


 何も考えずに出そうもんなら、どれくらい広がるのか分からないが、そこそこですむ量ではないだろうというのは想像出来なくも……なくもない。

 そんな物まで持ち歩いてて、かつ、この状態で保管箱にもアクセス出来るため、合わせればかなりの容量が入る。


 流石は横着者である俺の夢、保管箱アクセスがどこでも可能ってのはポイント高い。

 都合のいい夢を見すぎ、っていう点も含めて。


 で、それが何の自慢かって?


 違えよ、自慢じゃなくてな。

 倒した狼……魔獣らしいが、この死体を持って帰りたいって子供達がな?


 ギルドに報告すれば、良い小遣いになるんだと。


 生活も色々大変なんだろう。

 袖触れ合うも他生の縁、っていうしな。


 ギルドとやらまで、運ぶのを手伝うことにしたのだ。


 胴体を斬り飛ばしたほうと正面からバラバラにしちゃった奴は、拾えるものは拾って、ばっちい部分が肉まで汚染してたり、そうでなくても細かすぎて、って部分は焼却。


 焼却にデストレアを使ったら軽く引かれたけど、これ、俺が悪い訳じゃないよね?


 ほうっとくと他の魔獣が寄ってきたり、一般的な魔獣は腐ると内臓が瘴気を放ったりで危ないとか、ラノベの定番だ。

 そうでなくても臭ってくるだろうし、というか既に臭いし、仕方ないよね?


 頭を吹き飛ばしたほうは、そのままアイテムボックスに放り込んだ。

 飛び散った脳漿やら頭部パーツ類も、念の為焼却。

 比較的まともな牙やら目ン玉やらは売れるかもってんで、回収してある。


 ……こんなもん放り込んで、俺の装備類に変な匂いとかつきやしないだろうな?


 今更心配になってきた。


 そんな感じでデカ犬の死体まるまる1体プラス細々としたパーツ類をアイテムバッグに収めたが、これでもまだ多少の余裕が有る。

 見ていた少年少女たちは何やら呆然としている……かと思えば、次の瞬間には俺はキラキラの目で囲まれ、質問攻めに遭うことになった。


「今のなに!?」

「魔法カバン!? カッコいい、どうやって使うの!? コレしまえる!?」

「どうなってるの!? どうやってるの!?」

「た、高価(たか)そう……」


 そんなセリフを皮切りに、もう揉みくちゃだ。

 興味があるのは分かったから、薬草の束を仕舞わせようとするんじゃない。


 君の大事な稼ぎでしょうが。


 そんな感じで、初めてアイテムボックスという現象を見た少年少女に尊敬の眼差しを向けられ、こそばゆい思いを味わいながら、彼らの案内で街へと向かうのだった。




 街の入口、まんま砦門なそこで衛兵に魔獣の出現を報告する少年冒険者。


 訝しむ衛兵たちの前に、少年に請われて俺は魔獣の死体を出し、検分してもらう。

 結果、確かに魔獣だと言うことで、防壁の外の警戒を強くする事を決定してくれた。


 一方で、俺たちはそのまま冒険者ギルドとやらにも報告しに行く事に。


 そうする事で、各冒険者達に注意喚起と、優先討伐依頼とやらが出されるらしい。

 その辺の事は1個も判らないので、少年少女にお任せである。


 俺はと言えば、初めて訪れる異国情緒と、冒険者ギルトとやらの活気に当てられ、お上りさんよろしくあちこちを見回している。

「あの、お姉さんは、冒険者にはならないんですか?」

 ポーションを飲ませてあげた子がすっかり元気になった様子で、目をキラキラさせながら問いかけてくる。


 冒険者ねぇ……。

 出来ればおいちゃん、危険な事はしたくないけどねぇ。


 あんなバイオレンスなゲームのプレイヤーが今更何を、だって?


 あのな。

 ゲームはゲームだし、あれは斜め見下ろし(クォータービュー)だから出来るようなもんだ。


 FPS視点でハクスラ世界とか……いや、意外と有りかも知れないが、俺は泣く自信がある。

 とか言いつつ、興味は無くもないのでちょっと想像してみる。


 ……やっぱ泣くわ。想像しただけで怖すぎだろうが。


 おっといかん、目の前の天使を無視し過ぎた。

「冒険者か……」

 とは言え、どう答えたものか。


 というか、この少年少女は何を期待しているのか。

 ……うーん。

 一緒にパーティ組んでとか、そういう事なのかなあ。


 どうせこの夢だけの話だし、うーん。

 登録するだけして見せても、良いかもな。


「悪くはないな。登録は、ここで出来るのか?」


 少年少女の顔が一層輝く。


 そんなにか。


 というかおいちゃん、こんなに子供にモテた事、今まで一度も無いからどう接したもんか判らん。

 少年に手を引かれ、俺はさっき少年たちが魔獣について報告し、魔獣の死体の買取を申請したカウンターへと再び着いたのだった。

流されて、そういう選択も時にはある。

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