↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/47

魔法の世界でお買い物、自重も忘れずにね☆

真面目に考えたのなら、真面目に締めれば良いのに。

 今日(きょう)まで、何だかんだ自分のことに手一杯で、世界のことを殆ど考えた事がない。


 例えば、俺自身が使っているが、一方で魔法使いが居るのかも、俺は知らない。


 ……多分で良ければ、ここは魔法はある世界、そう思っている。

 根拠は、夜の街のあちこちに有る街灯。


 曇ガラスに覆われている光源は揺らめく事がないので、松明(たいまつ)や蝋燭(ろうそく)の類(たぐい)ではない。

 科学技術の線もあるが、何となく……魔法なんじゃないかと思っている。


 あれが科学技術、電気による物だったら、ちょっと色々バランスが悪い気がするのだ。

 何が? と問われると、それこそ「何となく」としか言えないんだけど。


 まあ、そんなあれこれの疑問を解消するのも、この世界で生活する事に繋がっていくだろう。

 目が醒めるまでの間でも。


 たまには真面目でかっこいい、それが俺です。




「という訳で、準備も含めて、出発前の買い物に行きまーす」


 ジェシカさんの号令で、俺達は商業エリア……活気あふれる商店街へと足を踏み入れる。

 昨日も来たね、そう言えば。


「なあ、タイラーくんよ」


 色々と必要な物を買い込む前に、俺はタイラーくんを呼び止める。


「どうした? トイレか?」

「お前はデリカシーってやつを覚えろ」


 幾らまだ出発前だっつっても、緊張感無さ過ぎだろうがメガネ。

 なんでお前とのやり取りがいつもこんな調子なんだよ、ジェシカさんも笑ってないでコイツなんとかして下さい。


「魔法道具屋ってドコだ?」


 気を取り直して、さも知ってる風(ふう)に言ってみる。

 もしそんなもん無くても「ああ、この国には無いのか」くらい言っときゃ誤魔化せるだろ。

 多分。


「ああ、何か必要なのか。ついてこい」


 タイラーくんは事も無げに答えると、当たり前のように歩いていく。


 ……成程、普通に有るのね。

 やっぱこの世界(コレ)、俺の夢なんじゃないのか?


「おい、行くんじゃないのか。早く来い」


 足を止めずに軽く振り返りながら言うタイラーくん。

 そういう台詞は、足を止めてから言うもんだろうが。


「お前が進み過ぎなんだよ」


 むしろジェシカさんの方に着いて行く感じで、俺は足を動かすのだった。




 少年少女も物珍しそうに店内を見回し、小さく走り回っている。

「危ないから、転んだりするなよー」

 声を掛けると、各々返事をくれる。


 元気なのは良い事だ。


「悪いね店主。で、マジックバッグは今、良いもの有るかい?」


 パルマー魔法道具店。


 タイラーくんに案内されて訪れた店は俺のイメージに反して広い店内に、俺では見ただけでは使用方法もわからないようなアイテムが並んでいる。

 素人目には雑多に並べたてている様に見えるが、ごちゃごちゃした印象は無いので、それなりキチンと管理はされているらしい。


「元気な子供は良いもんさ。こっちも元気になれる。んで、マジックバッグってのは、アイテムボックスの事かい?」


 店主の老婦人が子供達を眺めてから、柔らかい口調で対応してくれる。

 やっべ、フツーに名前間違えたらしい。


「あ、ああ、そうそう、アイテムボックス。珍しい物だから、言い慣れなくてさ」


 不思議そうな顔で俺を見るタイラーくんの視線を無視しながら、俺は取り繕う。


「で、アイテムボックスだけど、どんなのが有るかな?」


 冷や汗を笑顔で誤魔化しながら、まず欲しい物の確認をしようと決める。


 アイテムボックスは、大まかに言って2種類有るそうで、その説明でもう、何となく理解(わか)った。


「時間停止のと、そうじゃないのかな」

「そうそう。良く知ってるね」


 話を聞く俺の両側には、何故かタイラーくんとジェシカさんがついている。


「それは何が違うの?」


 顔を向ければ、不思議そうな顔のジェシカさん。

 ……美人って、可愛い仕草も似合ってずるいよね?


 それはそれとして、時間停止するかしないか、わかりやすい説明と言えば。

 不思議そうな顔のジェシカさんの質問に、ちょっと頭を捻った俺だが、洒落た言い方が思いつかない。


「食べ物が腐るか腐らないか」


 なので、すごく簡単にイメージ出来そうな事を挙げてみる。


「そんなの有るの⁉」


 そんな適当で投げやりな説明に、思った以上の食いつかれ、圧されつつもタイラーくんを見れば、何やらコチラは考え込んでいるご様子。

 まあ、悩み事も人生のスパイスと言うし、大いに悩むといいさ。


 俺がアイテムボックスを欲しいと思ったのは、ひとつには俺の持ってるアイテムボックスと、この世界で流通してる物との違いがあったとき、誤魔化す為だ。

 予め仕様の違いを知っていれば、誤魔化しようも思いつくという訳で。


 なんか誤魔化す事ばっか考えてんな、俺。


 それに、容量次第ではホントに予備として使える。

 俺の手持ちは時間停止が有るとは思えないし、そもそも容量的な不安もある。


 なにせ、深層領域とかで拾ったウィザード向けのレジェンダリーアイテムがそこそこ入っているのだ。

 金貨の総量の事を考えても、余裕が有るとは思えない。


 そんな馬鹿な理由で依頼(クエスト)お出かけセットが収納できなくなったら困るので、補助用に、なんならメイン収納として欲しいと思ったのだ。


 アイテムボックスが存在しなかった場合、荷物を増やすしか無い。

 そういう意味で、切に願っていた部分でも有るのだ。


「今、ウチに有るのは時間停止系だと、100万リットルのが一番大きいかしら」


 ……単位リットル、ときたか。これは俺が翻訳されて理解しているだけか。


 いや、夢だからなんだろうな……。こういう「自分に都合のいい話」とか「自分にわかる単位・言葉」が出てくると、コレが夢なんだといちいち意識させられる。

 確かに便利だけどさー? もう、目が醒めるまでどうしようもないし、苦笑いで受け入れるしか無いね。


「それってどれくらいの大きさなの?」


 遠い目の俺を脇に置いてジェシカさんが質問しているが、ちゃんと容量についての質問なのか心配になるな……。


「あー、1000立方メートル……10メートル四方で、高さ10メートルの部屋くらいだよ」


 頬を掻く心算(つもり)で仮面をコツンと突付き、ちょっとだけ苦い顔の俺が即答する。

 なんで俺にそれができたかと言えば、最近、リアルの仕事絡みで調べたんだよ。

 リットルと立方メートルの関係を。


 正直なんでこんなもん調べてるんだと思ったもんだが、こんなすぐに、生活? に関わる形で活(い)きてくるとは思わなかった。


 ふーん、と呟いて店内を見渡すジェシカさん。

 イメージ湧かないんだろうな……。


 そう思った俺は、店内をざっと見回してから言葉を続ける。


「この部屋よりもでっかいよ、空間的には。奥行き足りないから、幅も当然足りてないし、天井もね」


 あくまで目測だが、奥行きで8メートルくらいじゃないかな? 10には届いていそうにない。

 幅はもっと狭いから当然10どころじゃないし、天井は高いけど良(い)いとこ3メートルってトコだろう。


 多分、漠然とこの部屋くらいをイメージしていたのか、俺の言葉にジェシカさんは即座に振り返る。


「嘘⁉」


 目測が甘くても、10に届いて居そうなのは奥行きしか無いので、どちらにせよこの空間では1000立方メートルに届くことはない。


「お嬢ちゃんの言う通りだよ」


 老婦人もニコニコと、俺の説明を補強してくれる。


「じゃ、じゃあ、それってこのお部屋よりどれくらい大きいの?」


 当然の疑問。

 ジェシカさんが驚いている様子が珍しいのが、子供達も集まってきた。


 3メートルの空間を3つ積んで高さ9メートル。

 横が概ね7メートルかな。


 となると、もうひと部屋乗っけたら、良い感じかな?


「あー。この部屋を縦にもう3個重ねたくらい、かな」


 ジェシカさんは大げさに驚くこともなく、しかしそれなりに圧倒はされてくれたようで、呆然と天井を見上げている。

 そんなジェシカさんを申し訳ないが放り出して、俺は改めて店主に顔を向け直す。


「それ、どれくらい有るの? あ、数ね?」


 子供達はもう想像することを放棄しているようで、俺と老婦人の話を黙って聞いている。


「そうねえ、数でいうと12個だけど……高いわよ?」


 そりゃそうだよね。

 家買うより高いようなら諦めるかな。


「まあ、物が物だしね。ちなみにおいくら?」


 高価(たか)いと聞いて購入断念も視野に入り、却って聞きやすくなった俺は気軽に尋ねる。

 気分は冷やかしだ。


「金貨54枚ね。あ、1個に付きだよ?」


 4枚の端数感(はすうかん)よ。

 しかし、そうなると、掛けること12で、648枚か。


「じゃあ、それ全部。650枚出すから、なんかサービスしてくれる?」


 事も無げに言う俺に、店内の大人組(含(ふくむ)老婦人)が驚愕の相で言葉を失ってしまう。

 子供達は何のことか判っていない風(ふう)で、大人たちを不思議そうに眺めていた。

自重という意味を、辞書で百回引け。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。