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目覚めの選択

目を逸らせば逸らすほど、直視する現実は厳しい。

 妙に連続した長い夢だと思ったんだよコンチクショウ!


 これはアレか、所謂異世界転生とかいう奴か?

 いや、なんか違う感じもする。

 そうなると、異世界転移と言うやつか?


 そう考えても、違和感は拭えない。

 まず、俺が本来の姿ではない。

 というか自分の顔が判らない。


 遅れ馳せでその事に思い当たった俺は、室内を見渡す。

 さっき、鏡的ななにかを見かけた気が……あった。


 壁に掛けられた小さな鏡を見つけ、歩み寄ると迷わず、とはいかず。

 恐る恐る、覗き込む。


 そして数秒、言葉と思考力を失う。




 ゲームの女ウィザードの容姿は、アジア系の、大人のお姉さんだ。

 いや、他の人は違う感想かもしれないが、俺はそう思っている。

 それも、切れ長の目の、キツ目の美人さん。

 綺麗だけどなんか色々容赦の無さそうな見た目で、居た堪れなくなった俺は仮面を被せていたのだ。


 幾らなんでも気が弱すぎだろう、俺。


 そんな美人さんが、今、鏡の中で。

 なんか、面影は有るが、幾分……いや、随分幼気な、良く言えば……優しげと言うか。

 将来は、あー言うキツ目の美人さんになりそうな、いいとこ15~6歳の少女になっている。


 これはどういう事だろうか?


 昨日、まだ夢の中だと逃避していた俺は、自分の顔を見れなかった事から――脱いだ仮面の外側に反射して見えては居たが、曲面に映った顔は判断しづらいし――ゲームのウィザード、あの見た目のままだと思いこんでいた。


 ちなみにだが、あのゲームに凝ったキャラメイクなんて無い。

 職業ごとにデフォルトで用意されているパーツを幾つか組み合わせて創ったキャラクターを操り、モンスターとの殺し殺されを愉しむゲームである。


 キャラクター? 重要なのは装備だよ装備!


 そんなノリなので、特にキャラメイクなぞ気にしたこともなかった。

 精々が肌の色を病的じゃない程度の白い肌を選んで、顔の輪郭を細めにして、瞳の色を俺の好きな色、エメラルドグリーンにした程度だ。


 それはさて置いても、この状況は不可解過ぎる。


 まず、元の俺の姿でもなく、かと言ってゲームの見た目まんまでもない。

 だがしかし、現実の俺とゲームの使用キャラ、どっちの見た目に近いかと言われれば間違いなくゲームの方な訳で。


 あのウィザードの娘とか妹とか言われたほうが納得出来る感は有るが、まあ、そのくらいには面影が有るということだ。


 これはホントにどういうことだろうか?

 無い知恵を絞って考えてみる。


 まず、1つめ。


 ゲームプレイヤーが複数転生してる関係で、見た目に大きな変化が必要になった為に起こった現象。

 つまり、転生? 転移? も含めて、世界側からの干渉でこうなった、と言う事。


 これは色々と無理が有り過ぎる。


 色んな無理をひとまず飲み込んで、その考えた通りの事が起こったのだと仮定してみよう。

 世界云々というより、もう神様とかそういうレベルの存在が意図的にやらないと、そんな事にはならないだろう。


 少なくとも、俺はそんな存在に会ったこと無いぞ。


 という訳で、この可能性は多分無いだろう、的な位置で保留。

 保留にしてるのは、俺だって少しは夢を見たいからだ。


 で、もう1つの可能性。

 こっちのほうが有りそうで、かつ、俺にとって洒落になっていない可能性。


 何らかの事故か病気かで意識を失い、治療を受けている俺が見ている夢、という可能性だ。


 事故にも病気にも思い当たるフシは無いが、事故なんてそんなものだろうし、病気だって大抵は急に発覚するものだ。

 こちらの世界で目を醒ます直前の記憶は、部屋でゲームを始める直前だった。


 そこで意識を失うなにかがあったんだろう。


 夢を見始めたのがその直後とも限らないが、夢を見れているという事は、誰かに発見されて医療施設で治療を受けていると言うことか。

 ……誰にも発見されず、失われる命が見せてる最後の楽しい夢……だったら悲しすぎるから考えない事とする。


 どちらも根拠がない。


 なんでこの世界にいるのか、そもそもこれは夢なのか現実なのか、全く見当も付かない。

 少なくとも、慣れ親しんだあの暴力的な、画面を――この場合、視界を、か?――モンスターが埋め尽くすゲーム世界では無さそうだ、という事は判る。


 だが地球だとしても、此処は何処かが判らない。

 英語圏、ということだろうか。

 そうなると意外と広いが、しかし。


 文明の利器が見当たらないが、そういう文化レベルの地域なのだろうか。

 何だかそういうのも考え難い。

 窓から見た、通りを歩く人達の服装は馴染みの薄い格好だが、簡単なボロ布などでは決して無い。


 まあ、俺が見慣れた服装よりも、随分と簡素だったり機能に振られた格好の人が多い、そんな印象だ。


 鎧を纏った傭兵だか衛兵だかも見受けられるし、ソレより簡素な装備の者は、あれは冒険者だろうか。


 そういう所を見ても、文明レベルは俺の知ってる世界ほど高くは無いが、だからって無闇矢鱈と低くも見えない。

 文字があり、服もきちんと身につけ、建物は石造りや木造、レンガ造りと様々だ。


 ……いやホントに文化レベルが判らないな。


 街灯らしきはあちこちにあるが、電柱や電線は見当たらない。

 地中敷設なのかと思ったりもしたが、何だかそれも違和感が残る。


 そういえば、この部屋の照明はなんだった? 寝る前に普通に消した記憶は有るけど、どうやって消したのか、その記憶はない。


 判らない。夢か、現実か。


 どちらにせよ、この状況は長く続く可能性もある。

 そう考えて行動したほうが良いらしい。

 溜め息を吐(つ)いた俺は、この先の行動を見定めるため、ひとまず昨日訪れた冒険者ギルドへと足を向けることにした。


 無駄に持っている金貨50億枚、コイツの使い途が無いかも確認したいので、さり気なくチラ付かせて見ようとか考えながら。 

……チラ見せできる枚数ではない。

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