異能管理人と拝受者
やるしかない。と主時は言ったが、実際のところはかなりのピンチだ。
主時の異能【反逆時間】は1日3分の制限が設けられている。先ほどの戦闘でその半分を消費してしまっており、早期決着がいつも以上に求められる。
そしてもう1つのポイントが、目白が拝受者ということだ。
異能使いは、異能管理人と拝受者の2つに分かれている。元々異能を所持しているのが異能管理人。異能管理人は異能を2つ所持しているがそのままの状態で異能を乱用すると身体が不可に耐えきれず死亡してしまう。そんな異能管理人から片方の異能を分けられたのが拝受者だ。主時や才賀が異能管理人。爽や目白が拝受者だ。
そんな拝受者だが、異能を使うのに条件がある。それは、自身に能力を分けた異能管理人が近くにいないと異能が使えない。異能だけではない。能力者になると戦闘時に一定の身体能力の向上がされるようになるのだが、それも異能管理人がいないとなくなる。目白の異能管理人は才賀だ。主時じゃない。主時の拝受者も目白ではない。爽だ。主時はいつも以上に時間制限がかかった状況で、人を守りながら戦わなくてはならない。
「目白、スナイパーで遠くから援護する必要はないから適当なところに隠れて助けを呼んでくれ」
そういいながら主時は刀を出し、抜刀した。
「こっちは時間も余裕もないんだ。すぐに終わらせてもらうぞ」
異能を発動させて斬りかかった主時の刃を、少年はナイフで受け止めた。
「残念だけどこっちは時間も余裕もたっぷりあるんだ。もっとゆっくりしていこうよ。お兄さん」
すると突然、少年の体が白い繭のようなものに包まれた。主時が危険を察知し距離を取った次の瞬間、その白い繭から大量の針が生えてきた。
「うわっ、これまた長期戦得意なタイプか」
針を刀で破壊しながら主時は少々絶望していた。時間制限というデメリットがあるため、主時は爽と同じで長期戦が苦手だ。3分間フルで残っているのなら白い繭を正面から破壊するほどの力はあるが、もう残り時間は半分を切っている。白い繭の攻略が難しい。ここは助けが来るのを待つしかない
そう主時が思っていると、その横を走り抜ける人影があった。異能使い同士の戦闘では珍しい一般人レベルの速度。それは、スナイパーを抱えた目白だった。
「は?ちょ、目白!下がれ!」
主時がそう叫ぶがそれを無視して白い繭の上に立ち、スナイパーの銃口をピタリと充てるとそのまま引き金を引いた。そしてそのままボルトを操作し、2発目、3発目と何発も撃ち込んでいる。
しかし、少年もただ撃ち込まれているだけではない。再び針を勢いよく生やして攻撃した。目白はそれを回避しようとしたが、身体能力が上がってないからか、それとも至近距離だったからか、回避し切れずに腕に針が貫通した。しかし、痛そうな顔をしつつも引き金を引く手は止まらない。そして、突然白い繭が崩れた。主時はその瞬間に少年に接近し、ナイフを叩き落し、手刀を首に入れて気絶させた。
「目白、大丈夫か⁉」
主時が慌てて目白に駆け寄ると、目白はふらついていた。
「大丈夫。問題ないから」
「どの口がそれ言ってるんだ。いったん座れ」
爽を相棒に持つ主時は医療道具の形態を常にしている。スクールバッグから消毒液と包帯を取り出した。
「うわこれ見事に貫通してるな…」
長袖の上からでもわかる大き目の穴が開いている。とても大丈夫でないことは、一目瞭然だ。
「あの、本当に大丈夫だから」
「同じくらいの怪我で同じこと言ってた爽が数秒後にはふらついて電柱に激突してた。おとなしく手当されてろ」
「はい…」
主時は、なんで自分の周りには無茶する奴しかいないのだろうかと思いながら手当てをした。自分も無茶をして心配される側だという自覚はないようだ。
「おーい、2人ともー、大丈夫-?」
遠くから声が聞こえてきた。見てみるとそこには才賀がいた。おそらく目白に読んでくれと頼んだ助けなのだろう。
「もう片付いた」
「そうかそうか仕事が早い…って目白ちゃん⁉」
目白の怪我に気付くと才賀は急いで目白に駆け寄った。
「目白ちゃん、大丈夫⁉死なないよね?ねぇ?ねぇ?」
ものすごい圧だ。目白は少し引きながらこくこくと頷いている。
「ねぇ、主時くん。これはどういうことかな…?」
目白に向けられていた圧とは違う。脅迫するような、恐怖心を煽る圧が主時に向けられた。
「いや、なんていうか、その、俺は下がってろって言ったんだけど、気が付いたらスナイパーもって突撃してて…」
「何?じゃあ、ボクの相棒が悪いって言いたいの?」
「いや、そういうわけじゃ…その…すいませんでした」
本日3回目の戦闘を終えた主時に、才賀との口論をする気力は残っていなかったようだ。
「それで、この気絶してる少年は何だ?」
「そいつが俺たちに襲い掛かってきて…って爽⁉」
しれっと現れて会話に参加している爽に3人は驚いた。
「お前何でここに?」
「今日のことみんなに言ったら、創生に呼び出された。この感じだと秋弥もいるだろうな。お前らも来るか?」
創生と秋弥。主時たちの中3の同級生にして異能使いの2人だ。2人とも情報収集に長けている。そんな2人からの呼び出し。しかも夜中にとなるとよほど大事なことなのだろう。
「わかった。俺も行く」
「ボクも行くよ。目白は?」
「じゃあ、私も」
「わかった。それじゃ連絡入れとくわ」




