2人の増援
まだ日本が平安時代と呼ばれていた頃。神は、人類の進化を促した。異能と呼ばれる力を一部の人間に与え、その力を自覚させるために神獣と呼ばれる生物を地球へと送った。
人類は異能を使って神獣たちに対抗した。しかし、異能は一個体で扱うのには負担が大きく、早死にするものが多かった。そこで異能を誰かと2人で分け合い、負担を軽減するようになった。そうすると、異能の負担で早死にする者はいなくなった。
しかし、負担とともに個人の戦闘力も1/2になってしまったことにより、神獣との闘いは長引き、現在まで続くようになった。
「…なんて話だったよな?」
「そうだけど何故それを今言う?」
突然の主時の発言に、爽の表情には困惑が浮かべながら、スクールバッグから出した包帯で先ほど斬った手首を止血している。
「要は、今俺とお前は異能を分け合った状態だから、神獣相手に戦うのは結構大変だぞってことだろ?」
「あぁ、そうだが。どうしたんだ?」
「いや、なんていうか、今回の神獣、やけに弱かったなって」
「確かにそういえばそうだな…」
本来神獣は、異能を使える者2人で戦ってトントンといった戦闘力だ。しかし、巨大蜘蛛は2人で戦いこそはしたものの、どちらか片方だけでも充分楽に勝つことができただろう。
そう。極端に弱すぎるのである。2人はこの戦いが初めてではない。中学3年の夏頃から戦っている彼らはその違和感に気付いた。
弱かった理由。それは考えても出てこない。しかし、何か良からぬことが起きていると思考するのは容易いことだった。
「ただの腹痛…ってわけじゃなさそうだな」
「あんな図体でかいやつが腹痛ってあまり想像したくないな」
などと少々くだらない会話をしていたその時、公園内に生えている木からカサカサと音が聞こえた。2人がそれに気付いて身構えた次の瞬間、その木から1人の人間が主時に斬りかかってきた。主時がそれを自身の刀で受け止める。相手の武器は大鎌。黒く、ボロボロなローブを着ており、フードを深くかぶり顔はよく見えない。死神に似た見た目をしている。
「お前、何の用だ?」
「それをわざわざ教える必要はない」
刃物のように鋭い、女性の声だ。鍔迫り合いをしながらのわずかな会話を終えたのち、2人は距離を取った。
「爽、こいつ強い」
「だろうな。あと何分残ってる?」
「1分半は切ってない。が、多分倒しきれない」
主時の異能【反逆時間】は自身の身体能力を大幅に上げることができる。しかし、その強力な性能は1日3分という制限が設けられている。先ほどの巨大蜘蛛との戦闘ですでに半分近くは時間を消費してしまっている。
「わかった。じゃあ、俺がやる」
そういいながら死神女に発砲しながら接近した。そしてまたもや鍔迫り合い。
「名前、なんていうんだ?」
「お前らに名乗って何になる」
「なるほど会話はあまりできそうにないか」
爽は銃口を自身の右手首に当て、発砲した。鮮やかな赤色が宙を舞う。【血液昇華】の発動条件が満たされた。死神女を大鎌ごと押し飛ばし、拳銃で追撃を入れる。しかし、死神女はそれを何とか大鎌で防ぐ。
「自強化系の異能か。でも、その発動条件じゃこれには弱いんじゃないかな」
そういいながら死神女は大鎌を前方で回し始めた。そして
「【ウェポンズ・ロストガーディアン】」
大鎌が形を変え、バズーカ砲になった。彼女の首より下を隠すほど大きなバズーカ砲。それを彼女は両手で持ち、右肩に乗せた。そして狙いを定めて。トリガーを引いた。心臓が破裂するかのような大きく、重い音があたりに響いた。そして、その音と同時に放たれた砲弾を爽は刀で受け止めようとした。しかし、刃と砲弾が触れて一秒も満たず、爽は上方向へと飛んで砲弾から逃げた。流石にバズーカの破壊力を正面から受け止めるのは厳しいと判断したのだろう。死神女は続けて何発も爽に向かってトリガーを引く。それを爽は回避し、接近しようとするが、死神女はそれから逃げながらトリガーを引き続ける。【血液昇華】の弱点である、長期戦への弱さに気付いた立ち回りだ。




