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2人の高校生

 まだ夏の暑さが残る9月。大乗高校の1年3組の教室にて、一人の男がいた。

 時刻は午後五時。終学活はとうに終わり、クラスメートたちはすでに教室を後にしている。

 そんな中、ただ1人だけ窓から外を眺めている男がいた。

「おい、主時(ぬしとき)。何やってるんだ。とっとと帰るぞ」

 彼のことを、主時(ぬしとき)と呼んだのは、淡く、爽やかな水色の髪を持った男だった。名は速水(はやみ) (そう)。異常なまでに表情筋が固く、今この瞬間も表情一つ変えずに話しかけている。長時間学校中を探し回って疲れているはずなのに。

(そう)、悪い。帰るか」

 主時(ぬしとき)と呼ばれた男。(あかつき) 主時(ぬしとき)。爽とは対称的に発色のいいオレンジ色の髪をした男は、そういいながらスクールバッグを持って2人で教室を後にした。

 秋という季節によく似合う赤色の紅葉の絨毯が敷かれている下校道。二人はその絨毯を踏み、黒く汚しながら下校している。

 そのまま2人は最寄りの駅まで向かい、やってきた電車に乗り込んだ。それまで2人は1言も喋らなかった。別に仲が悪いわけではない。むしろかなりいいほうだ。小中高と一緒であり、現在は同じクラス。お互い帰宅部なこともあり登下校は常に一緒。相棒という言葉がよく似合う2人だ。無言が苦ではないのだろう。そのまま2人は1言も発さず同じ駅を降りて、同じ方向へと歩いて行った。

(そう)

「あぁ、わかってる」

 静寂を切り裂くように人が会話したかと思った次の瞬間、2人は走り出した。

 たどり着いたのは、とある公園だった。中央公園。通常よりも少し大きめだが、小学低学年が遠足に来るには少々小さいような規模の公園だ。いつもならこの時間は遊んでいる小学生たちで溢れているはずなのに、今日は不自然なまでに人がいない。

「ここ、だよな?」

「あぁ、間違いない」

「わかった。今回は俺がやるわ」

 そういいながら主時(ぬしとき)は前に出た。そして、真横に手を伸ばす。すると、手のひらに光の粒子が集まり、それが次第に棒状へと形を変える。更に細かく形を変えていき、そして質量をもち、主時(ぬしとき)がそれを握る。すると、それは鞘に収まった日本刀になった。

 それをゆっくりと抜刀し、上に振りかぶる。

「真実を照らせ。岩戸狩り」

 そういいながら刀を振り下ろすと、空間に切れ目が生まれた。そして、その切れ目を中心に空間にひびが入っていく。ひびどんどんと増えていき、そしてパリンと音を立てながら空間そのものが砕ける。砕けた空間の先にあったのは、先ほどと同じ空間だ。同じ空、同じ景色、同じ気温。何もかもが同じだ。ただ一つの存在を除いて。

 公園丸々全部使ってようやく収まるほどの大きさ。その巨体の中で特に目を引くのは八本の細い足だ。いや、体の大きさによって細く見えるだけであって、足一つとっても人一人分の太さがあるだろう。

 次に目を引くのは、人はおろか、家一つを丸々飲み込んでしまいそうな巨大な口だ。その奥には何か白く粘着性を持ったものが見え隠れする他、生ごみを熟成させたような異臭を放っている。

 蜘蛛の姿をしたその巨大なそれは、二人を視認すると、きろりきろりと声をあげながら前足二本をあげて威嚇している。

「相変わらずでかいなぁ」

「大きさがどうであろうと俺たちのやることは変わらない」

「それもそうだな。それじゃ、行ってくるわ」

 そういいながら主時(ぬしとき)は刀を鞘に収め、抜刀の構えをとる。そして、ちらりと自身の左腕に着けてある時計を見た。

 5時56分57秒…58秒…59秒…

 そして、秒針が00を刺した瞬間。

「【反逆時間(リベリオンタイム)】」

 主時(ぬしとき)が抜刀と同時に地面を力強く蹴り、巨大蜘蛛のほうへと走り出した。いや、飛んだといったほうが正しい表現かもしれない。

 1蹴りで50メートルはあった蜘蛛との間合いを詰めた。一瞬にして。

 そして、刀を抜いて巨大蜘蛛の首を斬りつけた。傷口からは毒々しい紫色の血が噴き出している。

 巨大蜘蛛は苦しみながらも口から白い糸を大量に吐き出して攻撃してきた。主時(ぬしとき)はそれらを刀で斬り落としていく。1つ、2つ、3つ…

 そして、残り3つも斬り落とそうとしたその時、白い糸が発砲音とともに落ちていった。

「1人で片付けようとするな。俺がいることを忘れるな」

 発砲音のしたほうを見てみれば、左手にはピストルを構え、右手にはすでに抜刀されている日本刀を手に持つ(そう)がいた。

「安心しろ。俺1人で片が付く」

「2人ならもっと早く片が付くだろ。ちょっとは人に頼ることを覚えろ」

「ったく…好きにしろ」

 別に何か邪魔をしようとしているわけではないし、(そう)の実力は主時(ぬしとき)も認めている。そして正論言われて反論できるほど、主時(ぬしとき)は頑固ではない。

「素直じゃないな。相変わらず」

 そういいながら(そう)は日本刀の刃を自身の左手首に当て、そしてそのまま斬りつけた。鮮やかな赤い血が手首から流れている。傷はそこまで浅くはなさそうだが、痛いには痛いのだろう。少し歯を食いしばっている。

「やっぱこればかりは慣れないな…」

 そう呟きながら構えを取った。そして

「【血液昇華】」

 そう呟いた瞬間、突然傷口から勢いよく血があふれ出した。そして、それと同時に駆け出した(そう)は、先ほどの主時(ぬしとき)に劣らない速度。いや、それ以上の速度で巨大蜘蛛に斬りかかった。

「相変わらず無茶するなお前は」

「百歩譲ってもお前にだけは言われたくない」

 そんな会話をしながら振った(そう)の刃は、巨大蜘蛛の足を8本すべて斬り離した。

主時(ぬしとき)、とどめは頼んだ」

 そういいながら(そう)主時(ぬしとき)のそばまで駆け寄る。そんな(そう)に向かって主時(ぬしとき)は地面を一蹴りして宙に浮き、そのまま落下した。

「任せとけ。速攻で終わらせる」

 (そう)は、そんなことを少しかっこつけながら言っている主時(ぬしとき)をバレーボールのように上に飛ばした。その力は凄まじく、主時(ぬしとき)は建物の2回ほどの高さのある巨大蜘蛛の2倍もの高さまで飛んでいた。

 その高さから主時(ぬしとき)は巨大蜘蛛に向かって自身の刀を投げる。刀は見事に蜘蛛の背中に刺さった。

 ふと、主時(ぬしとき)が腕時計を見てみると、5時58分12秒。

「思ったより楽に片付きそうだな」

 そう呟きながら勢いよく落下し、その勢いを丸々使って巨大蜘蛛に突き刺さった刀を蹴り込んだ。

 すると、巨大蜘蛛は金切声のような悲鳴を上げながら蹴り込まれたところから紫色の血を勢いよく吹き出し、そのまま息絶えた。

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