番外編2-5 いつの間にか ~エドワードside
エド様の気持ちも知りたかった。
最初はシャルの初めての友達だとして、喜んで家に招待した。
ちょっと変わった子だったけど、シャルが嬉しそうなのを見ていい友達ができたと思っていた。
それに、ピンクの髪色、水色の瞳。
実は芯の強そうな素敵な女性だと感じていた。
そんな、リリーと運命の再会は、なんとうちだった。
驚いたのなんのって。
執務のできる人を探していたのに、そこに現れたのが彼女だったのだから。
リリーは本当に有能だった。
僕が知らない”表”というものを作り出し、収支計算を簡略化した。
それだけではない。
自分から仕事を欲しがり、あっという間に仕上げてくれる。
もう雇用契約しよう。
そう思っていた矢先、リリーが倒れた。
急に仕事をさせすぎただろうか。
私は、侯爵家まで送っていき、事情を話したうえで、1週間休んでもらうことをお願いした。
1週間・・・
最初は違和感だった。
なんかおかしい。
私の周りに明かりが灯らない。
仕事が楽しくない。
すぐに手が止まってしまう。
そうして気が付いた。
手が止まっている時、考えるのはリリーのことだって。
リリーがいないと生活に彩がない。
リリーがいないと仕事も楽しくない。
リリーがいないと・・・・寂しい。
リリーがいないと・・・嫌なんだ。
リリーとずっと一緒にいたい。
隣で笑っていたい。
私が、浮かない顔をしていたからか、シャルと殿下に声をかけられた。
「そんなにつまらなそうなら結婚でもしたら・・・」
シャルが簡単に言う。
「私が、素敵な令嬢を何人か紹介しようか?」
殿下が言うと、シャルが怒る。
「素敵な令嬢?どなたですの?おっしゃってください。」
殿下が慌てて、否定する。
「違うよ。君以外に私にとって素敵な女性はいないよ。誓って言う。
僕にはシャル、君だけだよ。」
「嫌だ。アル様ったら・・・」
なんか、砂糖を吐きそうな雰囲気だ。
これが、新婚の破壊力か。
そんなことより、結婚って?
ぼくが、結婚?
まあ、それも悪くないか。
今までは、そんなことを考えたこともなかったのに、結婚してもいいなんて、どんな心境の変化だろう?
仕事でだけど、エド様と言われて嫌じゃなかった。
いや、むしろ嬉しかった。
今までは、他の令嬢では、こんなこと思ったことなかったのに。
だから、思い切ってリリー嬢と呼んでみた。
思いのほか、心が温かくなった。
思えば、リリアーナ嬢という名前は最初から私の意識に残っていた。
そうか、リリーか。
僕は、リリーと結婚したいのか。
そんなことを考えていて、殿下の声を聞いていなかった私はそのことをひどく後悔した。
後日、リリーが見ている目の前で、殿下はなんと婚約者候補の釣り書きを持ってきてしまったのだ。
焦ったのなんのって。
僕は、あわててその釣り書きの束を一瞬で視界から消し去った。
殿下には申し訳ないけど、そんなことより、リリーに誤解されたくなかったからだ。
次の日のリリーはおかしかった。
いつものひまわりの咲くような明るい笑顔が見られなかった。
心配で声をかけても何も答えてくれない。
僕も意識しすぎて名前さえ呼ぶことができない。
軽い気持ちで呼んでいるんではないってことを知らせたかった。
僕は、無意識にリリーの手を握って落ち込んでいる理由を聞き出そうとした。
必死だった。
だって、大好きな子が落ち込んでいたら、助けてあげたいと思うだろう。
そうしたら、僕の気持ちが口をついて出ていた。
それでも、リリーは私の言葉が言葉足らずだと言う。
ちょっと怒っている君もかわいいけど、そうか。
はっきり伝えなければ。
「僕は僕はいつの間にか君のことが気になりだした。
最初に会った時から、目が離せなかったのかもしれない。
君がいないと、何かおかしいんだ。
つまり、どうやら、君のことが好きになったようだ。」
そして、とうとう言ってしまった。
君のことが好きで、結婚したいことを。
でも、もうちょっとカッコよく決めたかったな?
だって一生に一度のことだろう?
リリーとの将来をこれで決めるんだ。
責任ある行動をしたい。
そこで、次の日一緒にデートに出掛けることにした。
そこは、もちろんローゼンベルク領。
王都のおしゃれな場所に行ってもいいけど、大事なことを伝える場所はやはりここだ。
二人で初めて出かけた場所は、どこに行っても色鮮やかに見えた。
やはり、私にはリリーが必要だ。
思い切ってリリーの手を取った。
細い腕に小さい手。
強くつかんだら折れそうだ。
それでも、手をつなぎたい。
人込みを理由にしっかり手をつないだ。
まるで、私のものだと誇示するように。
誰にもとられたくない。
どこに行ってもリリーは可愛かった。
何を見てもリリーは笑っていた。
そんな可愛いリリーを私はずっと見つめていた。
そうして、訪れた、街を一望できる丘の上。
私が領地の中でも一番好きな場所だ。
「リリー。今日はとても楽しかった。
私の人生の中でも一番に。
でも、これからこの記録は毎回すぐに打ち破られるだろう。
君が隣にいてくれたら…
初めから君のことが気になっていた。
気付けば君のいない一日なんて考えられなくなっていた。
他の誰かと比べたことなんて、一度もない。
今はもうわかる。
君のことが好きだ。
大好きなんだ。
私は君と共に人生の長い道のりを歩いていきたい。
これから、私とこの領地を共に治めていってくれないか。」
一言一言心を込めて伝える。
リリーは、満面の笑顔を見せた後、顔ゆがませた。
断られたらどうしよう?
一瞬そんな考えが頭をよぎった。
だから、泣き顔に変わったリリーを思わず抱きしめる。
断らないでくれ!
願いを込めて一層強く抱きしめた。
リリーはしばらく静かに泣いた後、腕の中から出てきた。
「エド様。
私エド様が思うよりもずっと前からエド様を見てきました。
エド様の苦労を知っています。
エド様を助けたい、力になりたいとずっと思ってきました。
どうしてだと思いますか?
それは、エド様のことこの世の誰よりも好きだからです。
だから、エド様の今の言葉。
私がずっと待ち望んだ言葉でした。
ありがとうございます。
私は、何があってもエド様の隣から離れませんよ。
いいですか?覚悟してくださいね。」
「もちろんだよ。」
私は嬉しくて、また、リリーを抱きしめてしまった。
そして、今日の記念に、リリーにプレゼントを渡した。
もちろん『ローゼンベルクカット』のイヤリングを。
これから、共に歩もう。
ーーーローゼンベルクを、君と共に。
お楽しみいただけたでしょうか?
これでリリーの番外編は終わりです。
明日からは、レオン編です。
私は、レオンも大好きです。
みなさんはどうですか?




