5-3 冷徹な王太子の溺愛が止まりません
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「もうそろそろ手を離してもいいのでは?」
エド兄様がにやりと笑って声をかける。
「いや。それよりも今度は俺と踊ろうよ。」
レオンもいつもの口調に戻って誘ってきた。
「は・・」
答えようとしたところでアル様に強く腕をひかれた。
「いや。だめだよ。
シャルはのどが渇いたようだから、バルコニーにでも行こうか。」
私の肩を抱き、バルコニーに移動しようとする。
え~
どうしよう。
肩。
肩に手が。
肩に触れる手から、心臓の音が聞こえてしまいそうだった。
「一度くらいいいじゃないですか。
嫉妬深い男は嫌われますよ。」
レオンが口を尖らす。
「一度でも嫌だ。」
「じゃ、兄様とならどうだい?」
「早く行こうね。」
また、後ろを向いてすぐに返事をしようとする私を無言で促して歩く。
「仕方ないな。
なつかなかった猫が、やっと自分の手の中に来たばかりなんだ。
今日くらいは独占させてあげるよ。」
そんな声も聞こえないくらいドキドキとしていた。
アル様は飲みやすいシードル風のリンゴジュースを二つ手に取った。
バルコニーには、私達しかいない。
二人きりの空間に更に鼓動が高まる。
「アル様。ご卒業おめでとうございます。」
私はそっとグラスを合わせた。
リーン。
涼やかな音が静かな空間に小さく響く。
「ありがとう。シャルと参加できてとてもうれしいよ。」
「私も婚約者として参加できて、今とても幸せです。」
笑顔でアル様を見つめるとアル様は静かにグラスを置いた。
「シャルを失うかと思った時は本当に怖かった。」
そういったかと思うと、アル様は私を優しく抱きしめた。
「もう絶対に離さない。ずっとずっと一緒にいたい。」
その言葉を聞いた途端、私の目から涙がこぼれる。
「私も…あなたのそばから離れません。
ずっと、ずっと一緒です。」
そうしているうちにおもむろにガラス戸が開かれた。
「いつまで二人だけでいるつもり?
まだ、婚約者なんだからね。
主役は戻って、戻って。」
エド兄様が呼びに来た。
見られた?
恥ずかしい。
真っ赤になった私は、アル様に手を引かれるまま、再びパーティー会場に戻っていった。




