5-1 アル様とのダンス
最終章スタートです。
思いもよらない断罪劇の後。
会場には重い静けさだけが残っていた。
豪華なシャンデリアの光も、色とりどりのドレスも、今はどこか遠くに感じた。
誰もが言葉を失っているようだ。
その時だった。
「場を騒がしてしまって申し訳なかった。
今日は、本来若者たちの門出を祝う日だ。
存分に楽しんでくれ。
これより、卒業パーティーを再開する。」
静まり返った会場に、ミハイル王の落ち着いた声が響いた。
それに呼応するかのように、控えていた楽団がゆっくりと穏やかな曲を奏で始める。
止まっていた時が動き出す。
白黒の空間に光が差し、色を取り戻す。
最初は戸惑っていた人々も、次第に表情を取り戻していった。
笑顔も戻り、会場ににぎやかな喧騒が広がった。
身体がこわばり、立ち尽くしていた私の前に影が差す。
おもむろにアル様が目の前にひざまずいた。
「婚約者の私に、最初のダンスを踊る栄誉を。」
優し気に私を見つめ、そっと手を出す。
胸が喜びでいっぱいになり、私は優雅な仕草で右手を重ねた。
「ええ。喜んで。」
突然、周りから大きな拍手が。
驚いて振り向くと、周囲の人々が私たちを見つめて笑顔で拍手をしてくれている。
「それでは、私アルフォンス・ヴァレンシュタインと婚約者シャルロット・ローゼンベルク嬢が最初のダンスを務めさせていただく。」
みんなが固唾をのんで見守ってくれる中、アル様に導かれ、ゆっくりと会場の中央に移動した。
「シャル。」
優しい声で名前を呼ばれる。
「踊ろう。」
胸の奥がふわりと温かくなった。
「はい。」
アル様の手をとった。
ダンスの音楽に合わせて、踊りだす。
私の目の前には、アル様だけ。
他には何も見えなかった。
「君を失うかもしれないと思った時、怖くなった。」
「私もです。」
その時を思い出し、胸がぎゅっと締め付けられる。
「でも、もう離さない。」
アル様が私の手を少し強く握る。
「私も離れません。」
私は思わず微笑んだ。
「これからは、ずっと。」
広い会場に二人しかいないかのように、見つめ合った。
「ずっと共にいます。アル様の隣で。」
瞳を逸らさず決意を込めて。
音楽がひときわ大きく響き渡り、最後の旋律を奏でる。
アル様が私をくるりと回した。
赤いドレスが喜びと共に大きく広がった。
音楽が終わった。
一瞬の静寂。
次の瞬間。
会場からは大きな拍手が沸き上がった。
それはまるで、私たちの未来を祝福しているかのようだった。
これから始まる新しい日々を思いながら。




