4-5 真実は?
「何か反論はないだろうか?」
重々しい声で
公正な判断を下すために
ミハイル王が私たちに声をかけた。
「それでは、私からこの断罪の真実をお話しします。」
エド兄様がミハイル王の前に出た。
「ここで、一番重要な証人を呼ぶことをお許しください。」
「よかろう。」
「ではこちらへ。」
呼び出されてゆっくりと歩いてきた人物を見て、驚きで目を見張る・・
「証人は、我が家の執事マイケルでございます。
順を追って話しますと、取引を一手に引き受けているランベルト商会からの問い合わせに疑問をもったことが始まりでした。
調べるうちに、うちの収益の一部を誰かが別の場所に移していることを知ったのです。
その収益の行方をたどるうちに、名もない架空の会社が存在することに気付きました。
そこで、妹の学園での不穏な動きについて調べている王太子殿下と協力し、この件について調べることになったのです。
そんな時、妹シャルロットが何者かに誘拐されました。」
エド兄様の声を聞き、一斉に私に視線が集まる。
「妹を呼び出したのはなんとここにいるマイケルでした。
マイケルは、長年うちに仕えてくれている信用のおける執事でした。
では、なぜそんな彼が裏切ったのでしょう?
彼にはたった一人の妹がいます。
その大事な妹を人質としてとらえられ、言うことを聞かなけば殺すと脅されたとしたらどうでしょう?」
「何だって?」
「そんな非人道なことが・・」
「妹を呼び出した者の正体がマイケルだと分かった時、怒りながらも、理由を聞き出しました。
もちろん、したこと自体は許されないことです。
私にとってもシャルロットは何にも代えがたい大事な妹です。
だから、妹を人質に取られたマイケルの気持ちも分かってしまったのです。
そこで、この関係を逆手にとって、私はある提案をしました。」
周りは固唾をのんで聞いている。
「指示した人間に従うふりをして私に情報を渡すことを。
そして、これ以上ローゼンベルク家を裏切らないことを。
その上で、マイケルの妹の安全を確保しました。
今はまだ、ここでは話すことはできませんが。
それでは、マイケル。
まず、何を指示されたか全て話してくれ。」
マイケルは下を向いて、泣くのを我慢しているようだったが、やがて、何かを決意したかのように顔をあげた。
「すべてお話しします。
まず、私の妹が人質に取られ、
指示を聞くよう命令されていたことは事実です。
一つ目は
ランベルト商会からの利益の一部をファーウスト公爵家の架空会社に移すことです。
二つ目は
シャルロットお嬢様を一人でランベルト商会に向かわせることでした。
そして三つ目は、
事実と違う裏帳簿をローゼンベルク家のものとすり替えて屋敷に置くことです。
そして、私に指示を出した人は・・」
「! 何を言い出す。」
慌てたようにマイケルを捕まえようとするファーウスト公爵。
場が騒然とするが、レオンが毅然と公爵を止める。
「話は途中だ。下がれ。」
ミハイル王も強い視線を向け、指示を出す。
ファーウスト公爵は抵抗をやめて、レオンにつかまれたまま後ろに下がる。
マイケルは公爵の視線を受け止め、震える声で続けた。
「そんな、非道な指示を出したのは、
・・・そこにいる、ファーウスト公爵その人です。」
一瞬、会場が静まり返った。
次の瞬間――
ざわめきが爆発した。
「違う。私じゃない。
そうだ。妻が。」
もはや、髪形も崩れ、目が血走っている。
「そんな。あなたが言ったんじゃない?
私は言われたことをしただけよ。」
公爵夫人も涙ながらに訴える。
「うるさい。
もとはと言えば、マーガレット。
お前が役目を果たさないから。」
「もうやめるんだ。
さっきから責任逃ればかりではないか。」
ミハイル王が立ち上がり、
その場を収めた。
近くでアル様がそっと私の手を握った。
それだけで、
私の肩から
力が抜けていく。




