3-11 この手を離さない ~アルside
私の世界からサアーッと色が消えていった。
シャルが誘拐された。
その知らせを聞いた後のことは何も覚えていない。
私は生まれた時から王太子だった。
誰もが私を王太子として接してくる。
誰でも同じだ。
そうして私の心は動かなくなった。
王太子として誰にでも好かれるように振る舞う。
すべてのことをそつなくこなす。
そのための努力は、誰にも見せない。
そんな時に決まった婚約。
誰でも同じ。
未来の王、王妃として適切に役目を全うする。
そう思っていた。
それなのに。
シャル。君は。
王太子の私に興味を示さない。
王太子なんて価値はない。
そう私には感じた。
だから、王太子じゃない私を見せたくなった。
王太子じゃない私を選んでほしくなった。
そう思ったらどんどん惹かれていったんだ。
惹かれていったのは、
私の方だった。
私を変えたのは君だよ。
シャル。
だから、シャルがいなくなるかもしれないと思った時、
私の世界がなくなってしまう。
そんな不安に駆られたんだ。
シャルを失いたくない。
だから、シャルを救えた時。
私の腕の中に飛び込んできた時。
私の周りに一瞬で色が付いた。
歓喜の色が。
もうこの手を絶対に離さない。
シャルの素敵なところはたくさん思いつくけど、
一番素晴らしいのは家族を思う気持ち。
私のいつもの食事は、形式的なものだった。
静かな食卓。
父上も母上も王、王妃としての顔でいることが多い。
ローゼンベルク家に行くたびに感じる。
ここには、私の知らない『家族』がいる。
面白い話をして笑わせる父親。
それを聞いて楽しそうに笑う母親。
妹をからかいながらかわいがる兄。
怒りながらも楽しそうにしているシャル。
こんな食卓があるのか。
そんな家族だからこそ、シャルは『家族』をことさら大事にする。
家族だけではない。
周りの人を大切にする。
そんなシャルがいい。
そんなシャルとなら私も『家族』をつくれるだろうか。
いや。
シャルと『家族』になりたい!
シャル。
愛してる。
誰よりも。
とうとう言いました。




