3-7 初めてお友達ができました!!
「アル様、申し訳ありませんが...
明日からお昼は外させていただいてもよろしいでしょうか?」
いつもの特別室でのお昼の時間。
私は、恐る恐るアル様に聞いてみる。
ガタ、ガタッ。
「何だって!」
おもむろに椅子から立ち上がるアル様とレオン。
あまりの慌てように何かとてつもなく悪いことをしたような気持ちになる。
「理由を教えてもらえるかな。」
アル様が真剣な顔で訊ねてくる。
「たいしたことでは、ありません。
私、初めて仲の良いお友達ができましたの。
ですから、お昼をぜひご一緒したいと思いまして。」
申し訳なくて視線が下がり、上目遣いになって恐る恐る聞いてみる。
「ん~。かわいいシャルの頼みだけど、それだと私と会う時間がまるでなくなってしまうだろう。
婚約者として、それはどうだろう。」
やはりだめかなあ。
女の子とランチ。
夢だったんだけどなあ。
「それなら週末町に一緒に出掛けないか。
婚約者として、仲を深める時間も必要だろう。」
アル様がなぜか私の手をとって懇願してくる。
「それなら、俺もお供します。
町は危険がいっぱいですから。
父上からも殿下をしっかりお守りするよう仰せつかっていますからね。
それと、殿下はすぐに手をお放しください。
婚約者と言えど、適正な距離を保つことが大切です。」
なぜか、アル様の手をどけた。
その上、了承もしていないのに町にレオンまでついて来ようとする。
アル様は、一瞬レオンを厳しい目で見つめ、私の方に視線を戻した。
「申し訳ありませんが、今度の週末はそのお友達と町にできたカフェに行こうという約束があります。」
私が言うとアル様はひときわ残念そうに唇をかんだが、やがてまたじっと私を見つめた。
「友達ができてうれしいのは分かった。
その気持ちは尊重する。
だから週に2回だけはその友達にお昼の時間を譲ろう。
でも、それ以外は今まで通り私と過ごそう。
それと、大切なお昼の時間を失った分、たまの週末は町にデートに行こう。
二人きりで。」
身を乗り出して、私に詰め寄る。
「アル様が護衛もつけずに行けるわけはないでしょう。
町へはレオンも一緒によろしくお願いします。」
私がそういった途端、レオンが得意そうににやりと笑った。
アル様はなぜか残念そうだ。
でもよかった。
これから時々はリリーとお昼を食べたり、町に行ったりできる。
「レオン、お前さっきから邪魔ばかりじゃないか。」
「いえ、そんなつもりは全くありません。」
「自覚がないのが一番厄介だ。」
二人でこそこそと話し合っている。
しかし、許可を得たことに喜ぶ私はもちろん気付かなかった。
私は嬉しくて意気揚々と特別室を後にした。
もちろん、その背後で二人の男が静かに動き始めていたことなど、知る由もない。
その後、アル様が影を使ってシャルの友達を突き止め、その友達のことも調べ上げていたことを。
また、レオンは騎士団の仲間に聞きまくって、町で女の子が喜ぶような店をこっそり調べていたことも。
そして、リリーとの初めてのランチ。
私は嬉しくて前世でのお弁当のようなものを手作りして準備していた。
「うわあ。
これお弁当ですね。
もしかしてシャルの手作りですか。」
「そうなの。
嬉しくて頑張ってみたの。
一緒に食べてね。」
「卵焼きからいただきます。
ん~甘くておいしい。
唐揚げもあるんですね。」
リリーはどのおかずも喜んで食べてくれた。
そして、食べ終わった後。
私は、意を決して気になっていることをリリーに聞いた。
「リリー。
遠慮しないで答えてくれる?
リリーは誰と結婚したいの?」
「えっ。
いきなり何?
け、けっこんって。
焦るんだけど。」
リリーは照れているのか、顔を赤くしている。
「私の今後にも関係するからしっかり受け止めたいの。
どんな答えでも私リリーを応援する。
友達だもの。」
私は、こぶしを握ってリリーをしっかり見つめた。
「誤解しないで。
私、アル様推しではないから。
シャルから奪ったりしないよ。
私、転生したって気が付いたのが学園に入る寸前だったの。
だから、何にも対策できなくて。
それで、私はアル様になるべく近づかない方がいいと思って、ずっと避けていたの。
私のお父様はアル様と結婚させたいみたいだけど。」
「本当に?
本当にアル様とは結婚する気はないの?」
私は、慎重に確認するようにリリーを見つめた。
「絶対ないよ!
だって私エド様推しだもの。」
リリーが顔を真っ赤に染めて、下を向く。
よかった。
えっ。どうして?
私どうして安心しているの?
ゲームの時のようにリリーに嫉妬しないからかな?
それとも?
それより、エド兄様?え~
「何か言ってよ。
恥ずかしいじゃない。
ところで、シャルは誰推しだったの?」
「私?恥ずかしいな。
実は、私もエド様推しだったの。
素敵よね。
エド様。
優しくて優秀で、理想の王子様だわ。」
「分かる~」
ひょんなことで会話が一気に盛り上がり、授業に遅れそうになるほどだった。
こうして一緒に楽しく初めてのランチの時間を過ごした。
少し離れたところでアリアンナが最後の言葉を聞いているとは気づかずに。
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