2-7 マリーおばさまを救いたい
「マリーおばさま、今日はお願いがあるのですが。」
消化に良い食事を摂る様になって、一進一退を繰り返しながらも少しずつ顔色がよくなってきたマリーおばさまに声をかけた。
ちなみに、マリー様では距離を感じるから今まで通りマリーおばさまと呼んでほしいと言われて今に至る。
「なあにシャルちゃん。」
こちらも小さい頃の呼び方だ。
「レオンハルト様もお誘いして今度一緒にお昼を食べるのはいかがでしょう?」
「そうねえ。あの子も王太子殿下の側近として行動するときもあるから、なかなか忙しいみたいだけど、声をかけてみようかしら。」
「無理にとは申しませんが、できるならご一緒してお話したいこともあるものですから。」
「シャルちゃんは王太子殿下の婚約者さんだものね。いろいろ知りたいのね。うふふふふ。」
「い、いえ。 あ。そうです。」
慌てて否定しようと思ったけど、誤解させておいた方が心配させずに済むと思って心の中で涙をのんだ。
(違いますよ。)
「レオンとはよくシャルちゃんの話をしたり、最近の食事の話をしたりしているの。あの子心配性だから。」
そうして、1週間後。
ようやくレオンと3人の昼食が実現した。
「おい。なんでお前までこの席にいるんだよ。」
「あら。レオン。お前じゃなくてシャルちゃんでしょう?小さい頃はよくシャルって呼んでいたでしょう?」
「マリーおばさま、いいんです。それよりいただきましょう。今日はおいしそうな野菜たっぷりのシチューですね。」
「母上、無理しないでくださいね。」
「大丈夫よ。あら、ニンジンやジャガイモ、お肉までもとても柔らかく煮込んであるのね。とてもおいしいわ。」
「私も大好きなメニューなんです。」
マリーおばさまは量は少ないながらも少しずつ食べられる量も増えてきているようだった。
そのおかげか顔色もだいぶいい。
会話の弾む楽しい食事が終わり、レオンに休むように言われたおばさまと別れ、レオンと二人で話す時間を取ってもらった。
「話って何だ。」
おばさまの体調が思ったよりよくなっているのを感じて機嫌は良かったようだが、まだ私への嫌悪感は隠しもせずにいる。
「おばさまは、胃腸が弱っていることによる栄養失調だったと思います。だから、胃腸にも優しい食べやすい食事で無理なく栄養を摂ってもらおうと思っていました。」
「それは、分かっている。」
「ただ、原因はそれだけじゃないのです。おばさまと話していて気付いたのですが、おばさまは寂しいんだと思います。」
「俺は、一生懸命母上を!」
「分かってます。おばさまにもたくさん。たくさん聞きました。レオンハルト様がいつもおばさまのことを心配してお医者様を何人も手配してくださったり、おばさまのお世話を夜遅くても続けてくださっていたことも。おばさま、とても感謝されてました。レオンハルト様は思いやりのある最高の息子だと。」
私は、なるべく目を見て静かにレオンの頑張りをおばさまの言葉で伝えるように努めた。
「じゃ、何が寂しいと言うんだ?」
そこで、おばさまから聞いたレオンのお父様との生活について確認していった。
騎士団長の仕事が忙しくなかなか家に帰ってこられないこと。
家に帰ってきても訓練や仕事をしていて、ほとんど会話もないこと。
食事もおばさまが一人で食べることが多いこと。
静かに確認していけば、思い当たることがあったのか、手をぐっと握りしめている。
「だから、レオンハルト様には大変だとは思い・・」
「レオンでいい。」
「えっ。」
「なんか様なんてつくと背中がぞくぞくする。敬語もいい。」
「分かった。レオンにお願いしたいのは、お父様にお母様の様子をお話して、一緒に食事をするだけでもいいの。ちょっとの時間でもいいの。おばさまを気に掛けるようにお話してもらえないかな。」
「・・・・ 分かった。」
ここからは家族の問題。
このことで私ができることはない。
食事の支援や今後もおばさまに顔を見せることを約束した。
おばさまが元気に。
そして、レオンの家族がみんな笑顔になる様に。
話を聞いてくれたレオンに感謝をしてモンフォール家を後にした。
門を出て振り返ると、レオンはまだ静かにこちらを見ていた。
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