騎士様の心の内
シアの台詞を聞いてアステリアはため息をついた。自らを追い詰めるような思考を繰り返し、気持ちを抑えようとする姿は悲しいほどに切実だった。
「シア、顔を洗って」
「え?」
唐突な話題の変換にシアが目を瞬く。湯を持って来させ、支度を整える。
「さっぱりしたでしょう?」
「は、はい…」
「これからグレイ様が来るわ」
「え…?」
怯えたようにぎくりと身体を強ばらせるシア。
そんな反応はしなくてもいいと言い聞かせてもシアの緊張が解けることはなかった。
グレイ様が座ったのを見てアステリアはすぐに話を切り出した。
「本日はお呼び立てして申し訳ありません」
「どうしても、グレイ様にお聴きしたいことがありましたので…」
手紙にはシアのことで話がしたい、そう書いてあった。
「その前に俺からも話したいことがある」
グレイ様は落ち着いて、しかしはっきりとアステリアに言った。
「シアを俺にくれないか」
「妾にでもするおつもりですか。 貴方にはすでに具体的な縁談が来ているはずです」
「違う」
「何が違うと言うのです? 中途半端な関係はあの子のためにならない。それは貴方にもわかっているはずですが」
アステリアの問いにグレイ様はひとつの答えを口にする。 それは簡単にはできない決断だった。
「俺が王族だから世間が認めないというのなら、王位継承権は完全に放棄する」
「……」
「俺は、シアを愛している」
力を込めて断言する。その言葉に込められた力にアステリアは破顔した。




