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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑧ ~冬空《そら》裂く暴風《かぜ》が奏でる異変~  作者: norito&mikoto
第2章 終わりは始まり

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第2話・区切りがついて、気が抜けて ~空気を震わす強大な~

第2章 終わりは始まり



     第2話・区切りがついて、気が抜けて ~空気を震わす強大な~



 ホッとしてしまったせいか、インスもまた地面に座り込んで、少しの間ぼんやりと意識を飛ばしていた。



 その間にもウスニーは止血位置をずらしたり、緩めたりしながらアインの腕が壊死してしまわないように注意しつつ治療を続ける。



「とりあえず、今日はここまでだろう。アインは一旦皇宮医務殿で応急処置を受けさせて、すぐに主神殿に戻す……医務殿で後の手当てをしてもらって、完治すればあとは貧血の治療や体力の回復を促すだけだな……」



 説明しながらも手を止めないウスニーはインスから反応が返って来ないことに漸く気付く。



「……インス?」



 呼び掛けながら顔を上げると、ぼんやりとアインを見つめているインスが居て……眉を顰めた。



(こいつ……まだ呆けていられる状態じゃないことに気づいてないのか?)



 小さく舌打ちして、気付けの薬を取り出す。



「……ウスニーさん……?」



 アインに、その薬を飲ませているのを目にして戻ってきたインスが、訝し気に呼び掛けた。



「……まだ授業は終わってないだろうが? ちゃんと締めろ」


「ちょ……っ!?」



 ウスニーのその言葉で、わざわざアインを起こすために薬を飲ませたのだと分かって、インスは目を見張る。



 その間に、ほんの一口分の気付け薬を飲まされただけのアインが小さく唸って、うっすらと瞼を持ち上げた。



 内心で百万は文句を思い浮かべつつ、インスは意識して表情を作る。



「……アイン君……」


「……ぃ、んす……さま……ぼ、く……」



 優しく呼びかけると、ぼんやりとした眼差しでインスを見上げたアインが弱い息で声を絞り出す。



「授業は成功です……怪我に残っていた神剣の魔力は消費しきれました……これで、治療ができます……アイン君の左腕にあった怪我は、罰でも何でもありません……だから、ちゃんと、治してください……お願いします……」


「……ぁ……」



 そうっと、アインを抱きしめたインスの、囁くような声に、微かに息を飲んだアインは、一瞬、泣きそうな顔をして……



「……は、ぃ……」



 重い体に力を入れ、自分からもインスに抱き着いて、アインはちゃんと治すと頷く。



「……ありがとう。アイン君……疲れたでしょう? もう、休んで大丈夫ですよ……また、会えますからね……」


「……ん……」



 頭を撫でながら告げるインスに、短く頷いて、アインは再び意識を失う。



 眠ったのを確かめて、インスももう一度、ホッと身体から力を抜いた。



「よし。皇宮に戻るぞ」



 それを見届けて、ウスニーが移動を告げる。



 すぐに馬車が回され、アインを抱いたインスが先に、続いて最初から最後までを静かに見守っていたディオネラと、急変に備えたウスニーが乗り込んだ。


――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 空を裂くその風は、皇宮どころか、皇都全域で観測され、何も知らない者たちの間で少し騒ぎになった。



 とは言え、実害的なものは一切なかったので、呪師(じゅし)が何かの魔法を使った結果だろうというのはすぐに分かり、不安からの暴動などが起こることもなく、「すごい風だったな!」といった噂話が流れた程度。



 逆に、魔力を感じ取ることができてしまう呪師たちの間では、恐れ戦く者が多発し、少しの間、業務に支障が出てしまっていた。



 陳情は呪師長のキプラの元に届けられたが、キプラは笑って流すだけ。



 当然、キプラ自身も暴風と呼んで差し支えのない風と、そこに宿る魔力を観測していたが、気にする様子は一切なかった。



 いや、むしろ、少し楽し気な様子で陳情に訪れた呪師らを黙らせ、業務に戻す。



 ついでに、皇城側と神殿側にアインとの面会を希望する書類を出し、インスには戻ったら報告に来るようにと伝言を命じる。



「……あの力を、暴走させずに終わらせましたか……流石ですね……」



 各所に連絡を送り、一人呪師長室で書類を捌くキプラは、それはそれは愉しそうに呟く。



 それから、ふと思い至って一度席を立つと、隣接する仮眠室から大きな箱を運び出した。



 観音開きの扉には錠がかかっていて、中身は用として知れない。


 けれど、軽々と運んできた様子から、恐らくは空なのだろうと知れた。



「……さて、彼らはどれだけ、私を愉しませてくれますかね……」



 うっそりと笑みを浮かべて呟くキプラの声を聞く者はなく。



 乾いた冬の風が小さく音を立てるだけ。



 執務机に戻ったキプラは、新たな書類の処理を始める前にもう一通、別の書類を書き始める。



「……私の趣向に、頷いてもらえるでしょうか……それとも……」



 クク……と、小さく笑いを零したキプラは、書き上げた書類を一旦仕舞い、インスが報告に来るまでの間、残った仕事を片付けることに時間を費やした。


第2章第2話をお読みいただきありがとうございます。


無事に授業の「締め」を終え、アインとインスにようやく安息の時間が訪れました。


長かった怪我の治療に光が見え、ウスニーも一安心といったところですね。


しかし、規格外の初級魔法は周囲に少なからず影響を与えていたようで……。


呪師長キプラの怪しい動きが気になります。


インスの報告を待ちわびる彼の「趣向」とは一体何なのか?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第8弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


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