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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑧ ~冬空《そら》裂く暴風《かぜ》が奏でる異変~  作者: norito&mikoto
第1章 皇宮呪師の復帰

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第1話・その感覚に恐れを抱く ~詰んでる現実突き付けて~

第1章 皇宮呪師(こうぐうじゅし)の復帰



     第1話・その感覚に恐れを抱く ~詰んでる現実突き付けて~



「は~~~~~……」



 ぐったりと溜め息を吐くウスニー=メンテはここ、エスパルダ聖皇国の皇宮にある神殿に付属する医務殿の長官。


 茶色の髪と青灰色の目を持った、四十手前の外見をした医呪神官(いじゅしんかん)だ。



 医呪神官というのは、神殿に仕える呪師(じゅし)――魔法の使い手である神官呪師(しんかんじゅし)の中でも医学を専攻した者を言う。



「ん~~~っ! んん~~~~っ!!」



 そんなウスニーの目の前で、風の精霊魔法によってベッドに拘束され、口を塞がれてもなお抵抗をしているインス=ラントは皇宮勤めの皇宮呪師。



 青みのかかった銀の髪を振り乱し、赤みを帯びた紫の瞳に絶望に似た色を覗かせている。


 まだほんの十八歳でありながら、魔力量、実力ともに当代一と言われる青年。


 今の拘束された状態(この状況)で言われても信じられないかもしれないが……



 だが実際、元気そうに(こう)見えても、今のインスは重症患者だ。


 更にインスが混乱状態にあったからこその拘束の成功で、まともな状態だったのなら、この拘束は成立していなかった。


 それをウスニーは知っている。



 インフォース(この)大陸において、魔法の使い手である呪師というのは管理され、監視される存在。



 理由は、神話に『赤毛の魔女』と記された女呪師の逸話のせい。


 彼女は、あろうことかその魔法の力を己が欲望のままに振るい、魔族と化し、大陸の守護神である女神と争った。



 エスパルダ聖皇国はこの大戦の後、女神の巫女と神剣の騎士らによって興された国。


 再び魔法の力を悪用する者が出ないようにと、呪師を厳しく管理しながらも、その力がなければ対処できない事態のために保護・育成にも努めてきた。



(どうしてインス(こいつ)はアインに()()()()()気づいて(思って)るんだ? 私ですら今朝届いた主神殿からの知らせで初めて知ったというのに……)



 報告を思い出しつつインスを見下ろすウスニーは、呆れるというよりも、インスのその直感というか何かに少し怖さを感じる。



 先ほどから何度もインスが口にしている『アイン君』と言うのは、神殿側で保護している見者(けんじゃ)の少年。



 見者というのは、通常は視認でき(みえ)ないものを視認す()ることができ、魔力を魔力のまま使える生来の特殊能力者。


 一見黒にしか見えない、深い紫色の髪と瞳を持った、少女と見まごう美貌の子供で、記憶がないため身元どころか、本当の名前も、年齢も分からない。


 分からないが、体格的には三歳程度、けれど理解力の高さから五歳ほどとして扱っている。



 本来であれば、神官呪師は神殿で、皇宮呪師は皇宮で、それぞれの才覚に合わせて学校で魔法を学ぶ。



 けれど、アインはどちらの才覚も桁外れに高く、まだ幼いにもかかわらず、保有する魔力量も莫大なため、呪師学校の最低入学年齢の十三歳には満たないと分かり切っているのに、魔力の制御方法と魔法の使い方を学んでいた。



 インスはそんなアインの、皇宮呪師側の実技を担当している指導官。


 元は普通に教師と生徒程度の関係性だったのだが、とある事件以降、共依存の極みともいえる状態に至っていた。



「だから! 落ち着け!! アインは主神殿だ!!」


「……っ!?」



 なおも抵抗し続けるインスに、怒鳴るように告げると、ピタッと動きが止まった。


 大きく目を見張って、ウスニーを見つめる。



「昨日、主神殿に帰った後、神官呪師学校の校長室に呼び出されたようだが、保護したと今朝早くに報告が来ていた……お前、アインの怪我に残る魔力の消去に、皇宮側で精霊魔法を使わせると話したことを覚えているのか? 昏倒してろくに(そんな)動けない(ざま)でどうやって授業をする気だ?」



 肺が空っぽになるほど深い溜め息を吐いたウスニーが呆れた顔で問い詰めれば、暫く硬直していたインスの身体からゆっくりと力が抜けていった。



 その唇が微かに安堵の言葉を刻むのを見て取って、ウスニーは拘束を解く。



「……で?」


「……すみません……」



 じっとりとした目で睨むウスニーに、インスは小さくなって謝罪を口にする。



「……まったく……とにかく、アインの話は後だ。まずはお前の事を先に確認する。どこまで覚えてる?」


「……アイン君たちを見送って、すぐに胃の辺りに痛みが出て……多分、吐きましたよね?」



 聞かれて答えたインスに、ウスニーは重々しく頷く。


 何を吐いた、とは言わなかったが、お互いに分かっている。



「そうだ。私が様子を見に戻ってきた時には既に意識が朦朧としていたな。すぐに緊急手術の準備を命じたが……」



 そこで、ウスニーはまた溜め息を吐く。



「……さっきも言ったが、病巣がなかった」



 言われて、インスは軽く目を見開き、けれど納得したように頷く。


 そのインスの反応で、先ほどはろくに聞いていなかったのだと分かり、ウスニーは眉を顰める。


 そっと、インスが視線を逸らしたのは、そのことに気づいたからだろう。



「……もう一度言ってやるから、()()()()……」


「…………はい」



 全く笑っていない笑顔のウスニーに、素直に頷いたインスはきちんと聞く体勢を取った。



「病巣がないせいで外科的な手術は意味がない。当然、内科的処置も意味がない。もちろん、回復魔法をかけたところで意味はない」



 説明されて、インスも「完全に詰んでいるな……。」と理解する。



「……にもかかわらず、不調を起こし、血を吐いて倒れた……」



 その理由を二人は知っている。



「……原因は()()()()ということだ……」



 室内には他にも人がいるので、明言を避けて告げたウスニーに、インスも黙って頷いた。


第1章第1話をお読みいただきありがとうございます。


今回は、皇宮医務殿にて風の精霊魔法でベッドに拘束されながらも、必死に抵抗を続けるインスと、呆れてため息をつくウスニーの様子から始まりました。


遠く離れたアインの危機をなぜか察知し、取り乱すインス。


ウスニーでさえ今朝の報告で初めて知った事実を直感で言い当てるインスの姿からは、二人の共依存とも言える深い繋がりと、少しの恐ろしさすら感じさせます。


そして突きつけられたのは、インスには「病巣がない」という事実。


外科手術も魔法での治療も意味をなさない「完全に詰んでいる」現実の中、血を吐いて倒れたインスの本当の原因とは……?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第8弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


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