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ダンジョン時代と人見知り  作者: 酉名酉丁
第三章 冒険者の分かれ道

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52話:殺伐としたお泊まり

 お泊りに行ってきます。


 蒼はこの発言が次にどのような景色を生み出すかは理解していたが、未成年ゆえに言わざるを得ない。


 子供は外泊にも保護者の許可が必要で正直面倒。早く大人になりたいものだ。

 現実逃避気味に思考を思春期に向けてみる。

 それでもやっぱり現実は変わらなくて、家族はお泊りに行く本人以上に喜んでいる。


 しかしこれはただのお泊りではない。1泊2日のダンジョン泊。面倒な申請が必要なお泊りだ。

 未成年冒険者は保護者から許可をもらわなければいけないが、それは目の前の家族を宥めるのとどちらの方が面倒だろうか。


 まずは家族を宥める。そして弟を隔離した後、両親に書類を見せる。



 父親が少し反対したけれど、自分がどれだけ強くなったのかを熱弁して説き伏せる。


 そして勝ち取った1泊2日への切符。

 少々堅苦しい文言が書かれたそれを、丁寧にファイルにしまう。



 §



 お泊り当日。集合時間は朝早い。

 蒼はこの日が楽しみで仕方なかった。


 楽しみで眠れないなんてこともなく、ぐっすり眠って日の低い時間でも元気満タン。実は蒼は、いつでも安眠自信ネキ。


 蒼とは対照的に、少し眠そうな伽代と姫羅の二人。

 こんな早くから三人が集まったのは、ダンジョンに泊まるための準備をするため。


 準備と言ってもそこまで大変なものではない。

 キャンプ道具などは組合から貸し出してもらえる。一番面倒なのは宿泊許可の申請で、それは三人とも事前に終わらせてある。

 これから準備するのは二日分の飲み物と食べ物。



 ということで向かうはスーパー。

 駅前にある、蒼の家から最も近い店。そして、無人レジがないから一度も利用したことのない店。


 近くのスーパー案内してよと言われて二人を連れてきたが、お店の目の前にまでやって来てようやく気付いた。やってない。

 動く気配のない自動ドアには、午前8時開店の文字。それに対して現在時刻午前6時。


 開いてないスーパーに案内したのは蒼だが、そもそもこんな早い時間に集まったのは全員の意志によるものなので、そこら辺を加味して蒼は無罪。弁護人は伽代。

 原告不在の裁判は閉廷。


 蒼と伽代の茶番に飽きれた様子の姫羅。「じゃあコンビニで買おう」と言って歩き出した。


 見当違いな方向に歩き出していた姫羅を呼び止めて、近くのコンビニに案内する。

 にっこり笑顔のロゴマークが特徴的なコンビニ。三人で入店。


 生鮮食品こそ置いてないものの、食品の味はなかなかに満足のいくもの。三人は既にここでいいやと思い始めていた。

 ただしスーパーよりも少し割高。冒険者として活動している三人にとってそこは問題にならない。お菓子にパンに、目についたものをかごに入れていく。


 会計を済ませて外に出る。買ったものは全て姫羅のマジックバッグに入れたので、一見して三人はほぼ手ぶらである。


 蒼の要望で購入したホットドッグを食べながら、三人はこれからどうしようかと話し合う。

 菓子パン、お菓子はあってもいいが、それがメインはちょいと問題。


 組合から借りれるキャンプ道具の中には、バーベキューコンロもあるという。せっかくだから肉も食べたいよなとは姫羅の言。激しく頷く伽代。


 蒼もテンションを上げる。

 友達とバーベキュー。死ぬまでにやりたいこと上位五本の指に入るイベント。ぜひともやりたい。

 しかし焼くべき肉がないことには始まらない。正直蒼はバーベキューという概念を味わえれば良いので肉が無くても楽しめる。しかし伽代を見ているとそうも言ってられない。


 蒼の脳内に閃きが舞い降りる。

 少し歩いたところに商店街があったはず、その中の肉屋なら早い時間でも開いているかもしれない。

 そうと決まれば連絡を取るのみ。スマホを開いてピポパポピ、ガチャリと出た相手は弟の翠。



 弟の翠をその場に召喚。

 夏休みということで受験勉強に取り組んでいた翠、姉の要望により暑い中呼び出された。


 こんな早い時間から勉強に取り組んでいた弟を情け容赦なく呼び出す蒼のムーブに、二人は少し引き気味。

 翠はちょっと不機嫌。なぜ呼び出されたのか分からないからだ。



 §



 じゃあねと、またねと、翠が手を振って去っていく。その表情は、課せられた使命を果たしたかのように満足げ。


 三人の元には大量の肉と野菜、ついでにもらったお菓子などが残った。といっても、マジックバッグに仕舞われて、パッと見何も残されていない。


 蒼は、いつも買い出しを手伝っている翠なら、商店街について知っているのではないかと考えたのだ。

 そして翠の持ち前のコミュ力。直接矢面に立たせることで、収穫の微増を狙った。

 結果としては大成功。姉のバーベキューという一大イベントに関われた翠はやり遂げた感を出しながら帰っていったし、収穫は少しどころではなく増加した。


 普段から買い出しの手伝いをしているという翠に感心している二人を見て、慌てて蒼は付け足した。


「私も! 普段は洗濯掃除を手伝ってるよ……」


 自分もお手伝いはしますとアピール。

 尻すぼみは、最近サボり気味の後ろめたさ故か。

 さらに、料理の手伝いをして即日NGを食らったのを思い出し、少しテンションが下がる。


 いざバーベキュー、と空元気を吹かす。

 腕を振り上げ、動作は大きく。これが元気の吹かし方。

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