51話:チームワーク
ガンガン行こうぜ。
これが蒼たちのこの夏の標語。決めたのは姫羅。
夏休み中にいっぱいダンジョン潜ろうな。
そんな意味が込められている。
そんな意味しか込められていない。
高校一年生の蒼と伽代、二年生の姫羅。学校が違うから少しズレたが、全員が夏休み入り。
これは潜るしかない、ダンジョンに。
ということで蒼と伽代の夏休み初日。三人はゴブリンダンジョンにやって来ていた。
三人の最寄りのダンジョンはそれぞれ、伽代がゴーレムダンジョン、蒼がゴブリンダンジョン、姫羅がドラゴンダンジョン。
その中でも真ん中に位置するのがゴブリンダンジョン。
三人全員が来やすい位置にあるため、今後パーティで通うことになるだろう。
先日の話し合いの成果を見せる時。
相手は上層のゴブリン。今の三人にとって苦戦するような相手ではない。
練習相手、案山子、もしくはサンドバッグ。
なんだっていいが、ぴったりの相手だった。
§
しばらく歩いてようやくゴブリンを発見。またの名を今回の犠牲者。
話し合いで決めた通りに戦闘開始。
最初に斬りかかる姫羅。
姫羅本人からの提案によるものだが、特に理由はなさそう。ファーストアタックを取りたいとかその辺だろう。
場所は上層。普通であれば一撃で倒せるようなモンスター。
しかし今回は集団戦闘の練習。意図的に手を抜く。
撫でるように斬りつけて、傷をつけるに留める。
つい癖で相手の右腕を切り飛ばしてしまったが、素知らぬ顔をしてその場を伽代に譲る。
得物が薙刀で距離が取りやすく、さらに伽代はスキルによって怪我をしにくい。
それ故の正面戦闘要員。
その間に姫羅と蒼が横から攻撃する。
三人の中で一番仕事の少ない蒼は肩身が狭め。
遊撃要員蒼ちゃん。
ここで挽回せねばならぬ。ふんすと意気込み攻撃開始。
練習のために軽く打つ伽代。
薙刀を大きく振りつつも、横から攻撃する二人に当てないように気を付ける。さらにゴブリンを倒してしまわぬように手を抜いているので、普通に戦うよりも難易度が高い。
武器はナイフでスタイルはインファイト。そんな蒼に当たりそうになって、慌てて薙刀の軌道を変える。
練習だということを忘れて本気で攻撃した蒼。右手逆手の投げナイフ、それで犠牲者の側頭部をザックリと切り裂く。
それがトドメとなったのか、光になり始めた。
蒼の正面、伽代の左から攻撃を仕掛けていた姫羅。その手の鉈は、光となったゴブリンを通り抜けて蒼のナイフとごっつんこ。意味もなく鎬を削る。
嫌な予感がした蒼。
即座にナイフを手放して、負荷を少しでも逃がす。ナイフは地面に転がる。
連携は難しい。
次のゴブリンを見つけて再び練習。
ファーストアタックの撫で斬り姫羅、正面から相手をする脱力の伽代。そして全力投球遊撃の蒼。
練習のために二人が手加減しているのに、蒼がまたもや力余った。
第三の被害者とエンゲージ。
今回の被害者はナイフを所持。ゴブリン面と合わさり加害者の出で立ち。被害者が加害者を装う珍しい状況。
もちろん最初に斬りかかるのは姫羅。
ダメージを与え過ぎないように気を付ける。
そして慣れてきた伽代によるゴブリンの足止め。
他の二人への攻撃も止めつつ、逃げられないように相手する。
流石に三度も同じ失敗はしない蒼。ちゃんと手加減しつつゴブリンに攻撃。
この手加減は本気の手加減。ナイフは収めて徒手格闘。
ただ殴るだけでもワンパンしかねないので、中国武術にありそうな掌で相手を打つ攻撃。
肩を狙った軽い掌打。それでも上層では十分過ぎるくらいの威力で、ゴブリンはバランスを崩してよろける。
よろけたゴブリン、蒼と反対にいた姫羅の方に倒れ込む。
ゴブリンは鉈で撫で斬りされ、瀕死の重体。
そろそろいいだろうと判断した蒼は、トドメを刺すべく距離をガン詰め。
ゴブリンの腹に穴をあける貫手。飛び散る鮮血。
手がはらわたを掴んだ時、すでにゴブリンの昇天は始まっている。引き出したころにはすでに光。
ゴア表現のタグは不要そう。むしろキラキラしていて綺麗。
戦闘を終わらせ、ナマコの如き光り物を投げ捨てる。
そんな蒼に迫る刃。
伽代の振るっていた薙刀は、消えていくゴブリンの代わりに蒼を標的に選んだ。
伽代は咄嗟に対応。
柄を握って回転させる。刃は空を見上げた。
安心安全の峰打ち。振るっていた勢いを完全には殺せなかったので、軽くだが蒼の頭を叩いた。
刃が無かろうと鉄の塊を打ち付けられたわけで、安全性には甚だ疑問。しかし冒険者だからか、伽代の手抜きが功を奏したか、頭を少し押さえるだけで済んでいる。
頭を押さえて、ちょっと涙目。




