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ダンジョン時代と人見知り  作者: 酉名酉丁
第三章 冒険者の分かれ道

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49話:チームワークが必要だ

 昨日のダンジョンで二人は理解した。このままではダメだと。

 チームワークというものが必要だ。複数の人間で一体のモンスターをフルボッコにする技術が。


 一度現場から離れて、腰を据えて話し合う。そういった時間も大事。

 その地に選ばれた神楽坂家。

 どこかでお菓子でもつまみながら話し合おうということになったとき、友達と家で遊ぶ機会だと勇ましく手を挙げたのだ。


 そんな勇気を出した蒼は今、ちょっと緊張していた。

 家に人を呼ぶなんて初めての経験。これで緊張しないでか。


 蒼が友達を連れてくると言ったものだから、家族は前の日からずっとソワソワしている。

 もしかしたら蒼以上に楽しみにしているのかもしれない。



 来客を告げるインターホン。

 自分以外の誰が出て面倒なことになる前に取る。


 インターホンのカメラに映っているのは伽代。

 待ち人来たれり。

 映ってはいないが、姫羅の声もする。


 インターホンの向こうに少し待っててと言い残し、てててと玄関に走っていく。

 父母弟は固唾をごくり。

 リビングに案内される客人。走る緊張。


 蒼に先導されて入ってきた二人、彼女たちを突き刺す視線。

 緊張感が支配する。

 意味が分からなくて伽代と姫羅は少しドン引き。カツの親戚。


 蒼ではない神楽坂さんたちは、なんかもう涙が出てきた。


「よかったねぇ」

「立派になって」

「仲良くしてあげてくださいね」


 家族から似たような言葉を代わる代わる投げられた蒼は、不本意そうに表情筋を固めた。

 その仲間たちは、何がなんだか分からない。しっかりドン引き。カツは他人。

 もはや恐怖を感じそうになったところ、神楽坂ファミリーはリビングから去っていった。去り際に用意されたお菓子や飲み物が、伽代と姫羅の困惑を一層深める。



 §



「なかなか……個性的なご家族だね」


 伽代の言葉に姫羅も同意。申し訳なさそうに小さく頷く。

 蒼は何を言っていいか分からなくなって、口をむにむにさせる。結局考えても分からなかったので、追加でむにむに。


 家族が用意したお菓子を開封し、リビングでお喋り。

 伽代と姫羅の持ってきたお菓子もあり、何を食べようか迷ってしまう。


 ああー迷ってしまうなー。


 そうやってお菓子を選ぶフリをしつつ、二人の視線に対抗。さっきの出来事を無かったことにしたい。


 そろそろ良いだろうと、手に取るポテトチップス藻塩味。

 蒼が大好きな味。「塩味との違いが分からない」とは翠の言。


 バカ舌翠の好きな、ポテトチップスお好み焼きソース味。姫羅の持ってきたレタス次郎。そして伽代の持ってきたアーモンドチョコレート。

 一人だけハイカラ!


 場には様々なお菓子、用意されたジュース。もはやパーティー。つまり私はすでにパリピ。

 蒼は現実逃避気味。



 まあいいかとお茶を濁し、本来の目的へと方向修正する伽代。

 本日の議題はパーティの連携について。それが最重要。


 途端に蒼は口を噤む。さっぱり分からんものなので。

 姫羅も口数を減らす。今までダンジョンに潜ってきて、考えたこともなかったから。必要だとは分かってはいるが、どうすればいいのかは分からない。


 会議は終始、伽代の発言で進む。

 ダメな二人は置いといて、ほぼ伽代一人の功績により出来上がった連携のルール、それを書き記したノート。


 今までに決めていたことも続投。『ヤバそうな時は伽代の後ろに下がる』、『勝てない相手からは蒼の爆速転移で逃げる』など、姫羅が新しく入ったので改めて明言した。伽代が。

 追加で『姫羅が馬鹿な真似をしそうになったら止める』、『姫羅が馬鹿な真似をしたら助ける』などの姫羅についての事項も盛り込んだ。伽代が。

 他にも『同時に攻撃するときは前後左右別の場所から行う』や『延長線上に味方がいるときは投擲しない』といった連携上のルールも決めた。伽代が。

 ポーションは惜しみなく使おうと姫羅が発言した以外は、基本的に伽代の決定である。姫羅も「何か意見を出さないと」とは考えていたが、前日の夜から考えに考え抜いていた伽代の前に手も足も出ず。


 基本的に全部伽代が決めて、二人は頷くだけ。

 姫羅についての事項については、さすがに姫羅本人が抗議しようとした。しかし、姫羅の担当受付嬢であった目代の話を聞いていたので、ここは譲らぬと睨みで一蹴。姫羅はしゅんとして沈黙。いつもの王子様姿を見せることもなく、誤魔化すかのようにお菓子をつまむ。

 目に見えて分かる力関係。


 こうして、連携が必要だと考えた二人とお喋りしたかっただけの一人の会議は終わった。

 実質的に考えていたのは伽代一人だったので会議という言葉が適切かは不明。しかし、無事方針が立てられたことにより、彼女たちの今後の活動は効率的に進むだろう。


 終わったのだから、楽しくお喋りしても良いじゃない。

 減ってきたお菓子のおかわりを台所から持ってきて、難しい話から楽しいお話に切り替えようぜの姿勢の蒼。頭を使って、脳が糖分を欲している伽代。

 正反対の立ち位置にいる二人が、目的を一致させた。そこからは楽しいお喋り。


 お喋りの途中、伽代が姫羅の服装について指摘。

 露出が多すぎると。今日はそうでもないが、なんだ以前のへそ出しファッションは、と。


 そこから発展、話はファッション観に移っていく。

 昨今の流行はどうだとか、自分の骨格はどうだとか、どんどんと複雑になっていく。

 この難しい話に、すでに蒼はついていけない。ジュース片手に、楽しそうに会話している二人を見て楽しむ。


 二人が仲良くなって嬉しい。ただ、話の節々で同意を求めようとしてくるのにだけは、困ってしまった。

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