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ダンジョン時代と人見知り  作者: 酉名酉丁
第三章 冒険者の分かれ道

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48話:アトラクションの待ち時間

 姫羅が仲間に加わったことで、パーティは三人体制に。

 どのような感じになるのかということで、三人はドラゴンダンジョンに来ていた。


 姫羅がパーティを組めたということで、驚き涙ぐむ受付嬢。

 受付嬢の行動に、解せない姫羅、本格的に心配になって来た伽代。そして人見知りする蒼。


 ちょっと問題もありつつ、たどり着いたドラゴンダンジョン上層。



 今回の目的は、自分以外の戦闘スタイルについて知ること。


 モンスターが現れたら、一人ひとり相手をしていく。

 一人が戦い、二人が見学。

 モンスターとは一対一。人数有利を捨て去る形。


 蒼と伽代は今までこのやり方でやって来たし、姫羅はそもそもパーティを組むのが初めて。

 無駄多きこの陣形に、最適化のメスを入れる者はいない。

 ただ、新しく仲間になったばかりで、連携が期待できない現状においては、チュートリアルとしてそこそこいい感じに機能していた。


「ボクが持っているスキルは、剛力とヒール、触覚強化の三つ。どれもたいして強いものじゃない」


 戦闘の順番待ち中に、姫羅から始まったスキルの開示。

 彼女のスキルは三つだけ。とは言っても、三人の中では二番目に多い保持数。

 剛力は力が強くなり、触覚強化は触覚が鋭くなる。ヒールは軽傷を短時間で治せるが、効果は高くなく自分にしか使えない。

 どれも便利といえば便利だが、戦闘を一変させるようなものではない。


 姫羅に続いて伽代が話し始める。

 葵にとっては勝手知ったるいつも通りのラインナップ。——と思いきや、新しいスキルが追加されていた。


 衝撃吸収、雷属性、気配察知。ここまではいつも通り。

 初出は『遠視』と『蛇の加護』。それぞれ、遠くのものが見えやすくなるスキルと、常時発動型っぽい効果不明なスキルらしい。

 そこまで強いスキルではなさそう。しかし蒼は、新しいスキルを手に入れた伽代が羨ましい。


 続いて最後の蒼。

 持っているスキルは転移だけ。最短でスキル紹介を終え、物足りなかったので武器の紹介に移る。

 一本の投げナイフ。投げることの方が少ない、もはやただのナイフ。


「ナイフに名前は付けてないの?」


 姫羅の疑問に『名前はまだない』と答えておく。

 本当のところは、まだないというか、付ける予定がない。


「私は付けてるぞ。名前。こっちがDXニクケズリで、こっちがDXホネクダキ」


 その言葉を聞いて、予定ができた。

 名前のある武器はカッコよく見えたから。


「ダッサ……。児童向け玩具じゃん」


 伽代は姫羅の完成についていけなかったらしい。

 モンスターにトドメを刺して、振り返りながら呟いた。

 蒼も正直その名前はどうかと思うが、それはそれとして武器に名前を付けたいとは思った。


 エクスカリバー……。いや、グラム。それともデュランダルの方が良いだろうか?

 蒼はナイフに名前を付けようと考える。

 思い付くのは無駄に荘厳な名前ばかりで、ナイフは荷が重そうに鈍く輝く。


 ダサいと言われた姫羅。その隣で自分の武器のカッコよさを熱弁し始めた。


「ダンジョン産の武器だから、特別な効果を持っているんだぞ」


 ダンジョン産の武器が持つ効果、それには伽代も少し興味を持った。口を挟まず次の言葉を待つ。

 蒼と伽代の視線を受けつつ、二本の鉈を鞘から取り出し、構える。


 薄っすらと光る刃。動くたびに鳴る、鈴のような音。

 現れたモンスターに対して、鉈で斬りかかる姫羅。


 伽代は確信する。この武器が人間の手によって作られたものではないと。

 ゆっくりと鉈を振るう動きも手伝って、鈴の音は神楽を想起させる。

 しかしこの神聖な音は、確信の理由ではない。


 鈴の音が真後ろから聞こえる。まるで誰かが後ろで鈴を鳴らしているよう。

 振り返っても何もない。振り返ったらさらにその後ろ、そこから感じる。


 自身の尻尾を追いかける犬のような動き。そんな伽代を見て蒼は萌えた。



「私の戦闘をちゃんと見てろよ」


 モンスターが光になっていくの見届けた姫羅が二人の元に帰ってきた。

 伽代はグルグルとその場で回っていて、蒼はそれを眺める。


「違和感ないんですか?」


 呆れた姫羅に対して、いや蒼も含めた二人に対して伽代は聞く。二人は顔を見合わせる。

 しかし二人は違和感と言われてもなんのことか分からないし、音源の位置という説明を受けても分からない。

 自分よりも高い身体スペックの二人、彼女たちが感じないというのであればそれは気のせいなのだろうと無理やり飲み込む。


「ところでその武器の効果ってなんなんですか?」

「……。……」


 伽代の「ところで」に、『ほらぁ、見てないからあ』というような顔の姫羅。

 一度鞘に仕舞った鉈。しかし説明のために左のDXニクケズリを抜く。

 薄っすらと光る刃。動くたびに鳴る鈴のような音。


「な?」

「いや……『な?』と言われても分かりませんけど」


 仕方ないという顔でDXニクケズリを振るう。

 薄っすらと光っている刃。動くたびに鳴る鈴のような音。

 未だにはてな顔の伽代。もう説明してしまう。


「光ってるだろ?」

「はい」

「音がなってるだろ?」

「はい。……え? それが能力?」

「そうだよ」


 やっと分かってくれたかと頷く姫羅。こんな武器を欲しいと思った蒼。呆れる伽代。


「音が鳴って光るって……本当に児童向け玩具じゃん。名前が適切に思えてきた」


 伽代はそう呟いた。

 蒼は新しく現れたモンスターに、自分の番だと向かっていった。



 §



 ダンジョンから出た三人は思った。


 ほとんど会話していただけだな——と。


 三人もいると、順番に戦っていては待ち時間が多くなってしまう。

 伽代と姫羅はこのままではダメだと思った。この陣形は無駄が多すぎると。もはや戦闘よりも待ち時間がメインだった。


 友達とお喋りができて楽しかった。蒼は一切合切偽りなく、そう思った。

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