表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン時代と人見知り  作者: 酉名酉丁
第三章 冒険者の分かれ道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/62

38話:ナチュラルクレイジー

「いやぁ、死ぬかと思ったわ」


 わっはっはっはと笑う女性を前に、蒼と伽代は何を言っていいか分からなくなった。

 普段は中層で活動しているが、なんとなく行けそうだと思って下層に進んだらしい。そうしてモンスターに腹を食いちぎられたとのこと。


「下層は思ったより危険なとこだったから君たちも気を付けた方が良いよ」

「一時生還率3割切ってたんですから、ダンジョンが危険なんてことは知ってますよ」


 助言だよ、というようなノリで言った言葉を伽代はバッサリと切り捨てる。

 ダンジョンに潜る人間であれば知らぬ者はいない常識だ。伽代としては軽く流してほしかった。


「「そうなの?」」


 まるで今初めて聞いたというような反応。

 目の前から帰ってきた言葉に少し呆れる。隣から聞こえてきた言葉は聞かなかったことにする。

 何が理由なのか、伽代自身も分からない溜め息が口から出た。


「そういえば名乗ってなかったな。ボクの名前は姫羅(きあら)という。命を助けてもらって感謝する」


 キザに演技がかった仕草の姫羅。王子様系というのだろうか、精悍な顔立ちも相まって似合っている。正直伽代はこういうタイプ苦手。


「どうも蒼です」


 いつもと様子が異なる蒼、伽代は少し引っかかる。王子様系にキュンしてるんじゃなかろうな。


「どうしたの蒼ちゃん。いつもの人見知りは」

「え、別に私人見知りじゃないよ。クール美少女だし」


 そっぽを向き、キス顔でとぼける蒼。もしかして口笛を吹こうとしているのだろうか。


「伽代です」


 蒼の反応に納得行かない様子を出しながらも、とりあえず名乗っておく伽代。

 改めて姫羅を見てみると色々なことに気が付く。腹部に大きな穴が開いていた彼女、腹部布面積が少なくても食い破られたのだと考えておかしく感じていなかったが、よく見ると服の元からのデザインとして布面積が少ない。伽代はこういった人間を表現する言葉を知っている。露出狂というのだ。

 こっそりと蒼に告げておく。


「蒼ちゃん、この人ヤバい人かも。露出狂だよ絶対」

「知らないの? ビキニアーマーって言うんだよああいう服。アマゾネスとかがよく着るんだよ」


 今の返答で、なるほど理解した。

 蒼ちゃんはどうやら目の前の女性を物語のキャラか何かと思いながら接しているな?

 アマゾネスがどうだろうと、現実でビキニアーマー着てたら普通に露出狂やねん。ヤバい奴やねん。伽代はそう力説したくなったが、本人が目の前にいるのでやめておく。



「ポーションの礼にはならないが、手持ちがこれしかない。気持ち程度に受け取ってくれ。ポーションの礼は後で必ずする」


 暫く自身のポーチを漁っていた姫羅が出したのは不透明の小袋。『かやく2番』の文字。

 不審物を渡そうとしてくる姫羅の前に立つ伽代。蒼を庇う形になる。その表情からは不信感が見て取れる。


「心配するな。ただのカップラーメンのかやくだよ」


 髪をかき上げ、何のこともなしに告げる。

 告げられた二人は、内容が理解できずにしばし放心した。


「な、なんだよ。そんな猫みたいな顔するなよ。あれだぞ、普通のカップラーメンのかやくじゃないぞ? カップラーメンたぬき入りたぬきそばエディションのかやくだぞ?」


 レアなんだぞ?――と続ける姫羅だが、二人は話についていけない。

 理解できないものに相対する時、人は最も恐怖する。


 抱き合う二人。

 さながらホラー映画の名脇役。


「そ、そんなにかやく嫌か?」


 少し落ち込んだ姫羅が話を変えようとする。


「ボクはドラゴンダンジョンから潜ってきたのだけれど、二人はどこから?」

「私たちはゴブリンダンジョンからです」

「分かった。ゴブリンダンジョンから潜っていた蒼と伽代に、組合経由でお礼の品を送るようにしておくよ。かやくに匹敵するほどの品をね」


 そう言うとかやくを開けて中の粉を一息に飲む姫羅。

 粉薬みたいに飲むじゃん。伽代はそう思ったが、口にはしない。変態は刺激しない方が良いのだ。



「ひとまず回復しきったかな」


 姫羅の左腹部。まだ完全には再生しておらず、空いていた空間に内臓が詰め込まれているだけでそれを隠すものは何もない。

 待っていても姫羅の体はうんともすんとも言わず、皮膚の再生が始まる予兆はない。おそらくもう1本くらいポーションを飲めば再生し始めるだろうと、姫羅は帰る準備をし始めた。帰ってから家にあるポーションを服用するとのこと。3本目のポーションは頑なに受け取らなかった。


 筋肉や皮膚がなく、内臓を晒しているのに堂々としている姫羅。まるで痛みを感じていないかのよう。


 どうしても気になってしまった。指先でつついてみる蒼。

 姫羅は息を止めうずくまる。


「ごめん」


 それには流石に伽代も苦言。姫羅もやめてと苦言。

 全面的に蒼が悪いので素直にごめん。


 こんにゃくみたいな感触だったな。



 §



「おかえり。少し遅かったね」


 ダンジョンから出て受付に寄ると、そこにいるのは受付嬢の飯島。

 丁度良いと、伽代は今日会ったことを報告する。


「怪我をして倒れてた人がいたので助けました。ドラゴンダンジョンで活動している方らしいので、一応後でダンジョンから帰還できたか聞いといて貰えます?」

「分かった。あとで聞いておく。人を助けるなんてお手柄ね」


 サムズアップ飯島。蒼もサムズアップで返す。

 二人はゆっくりと視線を動かし、じっと伽代を見つめる。

 少しして圧に耐えられなくなった伽代もサムズアップ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ