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ダンジョン時代と人見知り  作者: 酉名酉丁
第三章 冒険者の分かれ道

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34話:滝

 ダンジョン中層。ここではパーティでの活動が推奨される。

 スキルがあろうと普通に死ぬ可能性があるので、一人で中層に潜っている冒険者は少ない。一人で潜っているのは大概が変人である。

 蒼はその少なくて変な側に入りそうだったが、今の蒼には伽代がいる。たった二人だが、ひとつのパーティである。



 勝てないかもしれないと思ったらすぐに逃げる。

 中層に歩みを進めるにあたって、二人が飯島と交わした約束を思い出す。


 飯島との約束とは別に、少しでも怪我や死亡の確率を下げるために二人は学び、作戦を立てた。


 作戦は2つ。

 やばいと思ったら、蒼は伽代の後ろに隠れること。伽代の持つ衝撃吸収というスキルは非常に強力で、ほとんどの攻撃を無効化するからだ。伽代はこれを絶対に譲らなかった。

 そして、逃げるときは蒼の転移を使う。伽代を範囲内に含めた状態で1mmの転移を爆速で繰り返し、モンスターからすぐさま距離を取るという作戦だ。そのための練習もしてある。



 扉を抜けたらそこはひらけた空間。周囲は普通に石造り。足元にある魔法陣のようなものが、ダンジョンであると主張している。

 二人はさあ冒険だと歩み始める。


 古代遺跡の様相を呈し始めた階段を抜けた先で、二人を巨大な滝が出迎える。

 どこから来たのか分からない水が、瀑布となって下層、おそらくはそれよりももっと深い場所に落ちていく。


 これまでにゴブリンダンジョンで見ることのなかった景色。水が落ち続けている大穴と、周囲に広がる巨大な空間。

 森の広がるゴーレムダンジョンや、山岳地帯のドラゴンダンジョン、それらの方が近い景色。所々の石造りの部分が、ゴブリンダンジョンとしての主張をするよう。

 ここはゴブリンダンジョン中層。そしてゴーレムダンジョン中層でもあり、ドラゴンダンジョン中層でもある。

 中層からは付近の別のダンジョンと接続する。

 モンスターのバリエーションは増え、地形はこれまでよりも大きく変化する。


 他のダンジョンとの接続はあらかじめ学んでおいたことの一つ。

 それでも目の前に広がる風景に二人は感動していた。モンスターのバリエーションが増えたとかは頭の隅から消え去り、城・森・山岳の融合した景色に圧倒される。

 ゴブリンダンジョンが持つ城要素。それがまるで古代遺跡の様で、蒼はワクワクが止まらない。気分はトレジャーハンター。冒険者とたいして変わらない。



 冒険者は二つに分けられる。

 中層に足を踏み入れた者と踏み入れなかった者。

 中層に足を踏み入れた冒険者は二つに分けられる。

 生き残れる者と生き残れない者。


 蒼の安易な白黒思考。白と黒では収まらず、赤と青も足しておく。

 三原色には一足りず、もはやただの適当な考え。


 蒼が変な思考を始めた理由は、冒険者にとって中層に入れるかどうかが分かれ道であるとネットに書いてあったから。

 生物系モンスターが苦手な冒険者も中層では生物系モンスターと戦わなければならない。それは冒険者にとっての関門のようなもので、乗り越えられるかが冒険者として活躍できるかを分ける。最初から気にしていなかった蒼には関係のないことだし、すでに乗り越えた伽代にとっても関係のないこと。


 であれば次に大切なのは生き残れるかどうか。

 お前たちはどちらだと、二人を試すようにモンスターが現れる。


 事前に勉強しておいたおかげですぐに分かった。勉強会の名残りで、自然と口に出す。


「「ウェポンマスター」」


 見た目はごくごく普通のマネキン。

 ゴーレム系モンスターのウェポンマスターは、コピー能力を持つ。

 コピー対象の武器と戦闘方法を真似るのだ。精度は粗いが意外と厄介。


 蒼を対象としたコピー。手にはナイフが現れ、無駄の多い見た目を重視した動きを繰り出す。

 体は一向にマネキンで、武器と動きだけの手抜きコピーが透けて見える。


 アイコンタクトで互いに頷く。

 伽代がバックアップ、戦闘のメインは蒼。アイコンタクト関係なく、初戦はこうしようとあらかじめ決めていた体制。


 蒼とモンスターが睨み合う。伽代は直線上に蒼が入らないよう位置を調整。



 蒼がナイフを刺そうと近づく。と見せかけて蹴りを入れる。囮のナイフと本命の蹴り。

 蹴りを入れた後にナイフも当てられそうだったので、ついでとばかりにナイフで突き刺しておく。


 ウェポンマスターは蒼の蹴りに反応して普段蒼がするように体を捻ったが、躱しきれずに食らってしまった。ウェポンマスターの能力では対象のフィジカルまではコピーできない。そこまで高度な能力ではないのだ。

 しかし流石はコピー能力持ち。蒼が気まぐれで何かしてくることを読み、腹部を狙ったナイフをガードして見せた。まあ腹部を左腕でガードしてしまい、結果的には左腕にナイフが刺さっただけなのだが。

 戦闘方法を真似るというのは嘘ではなく、蒼が特に考えないで動いていることをこのモンスターは看破した。


 蒼は身体能力と戦闘の才能によるゴリ押し戦法である。そんな蒼から武器と戦闘方法を真似たからところで何にもならない。

 ウェポンマスターご臨終。相性が悪かった。


 ナイフを腕に刺された後、顎を蹴り上げられ、右腕の手首を破壊された。その手首からナイフを奪い二刀流になった蒼に蹂躙される。そうやって倒された。


 コピー能力といった厄介な能力を持っているからか、中層の中では純粋な身体能力の低いウェポンマスター。

 コピー能力を持つこのモンスターは蒼に負けてしまった。もっと深い階層にいるコピー能力持ちモンスターであれば仇を取ってくれるのだろうか?



「あっさり倒しちゃったね」

「まあね。ウェポンマスターとは頭の出来が違ったからね。アイツには考えるということが足りてなかったんだよ。動きも無駄が多かったし」


 中層初戦に少し興奮している蒼は、考える大切さを力説するのであった。

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