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PURGEー83 縁談!!

 入間が音尾の動向を知っている。思わぬ情報源を知った黒葉と信乃は、家にいる全員をリビングに集めた。用意された席に座る入間は、自分が知っている事を話し始めた。


「『御伝流(がでんりゅう)』の道場は、色んな世界にわんさかある。でも幸いな事に、音尾が習っていた道場は、私のいとこが習ってたところでな。以前から出入りしたことがあんねん」


 入間が知らせた事実に、黒葉達は全員目を丸くして身を乗り出した。


「嘘でしょ!」

「そんな偶然が!」

「では、木花小隊長が次警隊を辞めてしまった理由って」


 レジアからの問いかけに、入間の顔色が少しだけ曇った。


「あそこの道場、事情があって跡取り息子が塞ぎ切っとってな。このままじゃ道場が傾きかねないってんで、前から音尾の事を目に付け取ってん。

 んでこの度、向こうの跡取り息子と音尾の縁談が成立して、戻る事になったっちゅう訳で」

「縁談!? それって小隊長の意志は?」

「拒否権なんてありゃせんよ。賭けに負けてもうてんやから」

「賭け……まさか!」


 シャウ以外の全員が入間の言う賭けが何なのか気が付いた。間違いなく、この前リドリア達がレジア達と戦った団体戦だ。


「あの団体戦に、そんな意味が……」


 そうとも知らずに戦っていた事に悔やむ顔を浮かべる信乃。入間はそこに補足を告げた。


「元々音尾は住み込みの門下生としてあの道場におったからなぁ。月謝は払ってない身やし、育ててもらった恩もある。

 挙句話を頓挫にすれば、次警隊と御伝流(がでんりゅう)の関係にヒビが入る危険も考えてんやろう。ま、そこに関しては考え過ぎと思いたいけど」


 入間が語る音尾の事情。下手に他人が介入すれば、それこそ入間が危惧している事になりかねない。

 それは多種族がお互いに配慮し合ってバランスを保っている次警隊という組織において、一派閥との対立は致命的な問題だ。


 口を閉じざる負えない事情。だが黒葉はどうにも納得しきれない思いが喉から飛び出す手前にまで上がって来ていた。

 あと少し経てば我慢出来ずに吐き出してしまう。そうなりかけた黒葉だったが、彼よりも先に口を開いた人物がいた。


「そんなの、おかしいわ! そうでしょ皆!」


 入間にいちゃもんを突き付けたのは、ある意味この場で一番裏表がない人物、シャウだった。


「シャウ……」


 隣でレジアがシャウの動きを止めようとするも、シャウはこれを押し切って反論を続ける。


「たとえ恩があるからって、その道場に与する必要なんてない! 小隊長のやる事は、小隊長自身が決めないと! 小隊長、せっかく春山の事を知って嬉しそうにしていたのに」

「え……」


 黒葉はシャウの勢いで引っ込んだ言葉の代わりに、困惑の声が口から出て来た。


「アタシ、小隊長はいつも仕事に真剣で、感情的になっていることろなんて見た事がなかったんだ。それを春山の事を知った途端、本当に人が変わったのかってくらい取り乱して、嬉しそうな顔をしてた。

 そんな人が、好きな人を差しおいてそうでもない人と結婚するなんて、絶対おかしい!」

「シャウさん」


 勢いのままに口走るシャウに、レジアが肩を掴んでブレーキをかけて来た。


「こちらの事情を赤裸々に話すのはやめてくださいませ。今以上に事態がややこしくなりますので」


 レジアに言われて横に視線を向けるシャウ。そこにはどう反応すればいいのか分からずに固まっている黒葉と、それぞれで悪い方向に重く受け止めているリドリア達三人が見えた。

 一方で正面にいる入間は、シャウの言った台詞を受けて再び高らかに笑い出した。


「カッカッカ! ドストレートに言ってくれるやないかい。ええなアンタ、私はそういうの好きやで」

「あ、ありがとうです……」


 隊長格からの率直な褒め言葉に、シャウも反応に戸惑ってしまった。入間は続けて、他の面々にも呼び掛ける。


「他の面々も、考えてるんはだいたい同じってトコやろ? まあ、個人個人別で思うところもあるんやろうけど」


 入間は椅子から立ち上がり、黒葉達に問いかけて来た。


「どうする? お前らの知る小隊長、戻ってきて欲しいか?」


 社会的な問題がある以上、本来ならここで口を閉ざすのが正解なのだろう。だがシャウの言葉もあり、今の黒葉達は良くも悪くも自分の気持ちに素直な口を吐くことが出来た。


「そんなの、戻って欲しいに決まってます!」

「アタシだって! やっぱり率いるリーダーは、木花小隊長が良い!」


 まずは先走る木花小隊の二人。そこに森本小隊の隊員達も、各々口を開いて自分の気持ちを吐いた。


「そんなの聞いて、アタシも放っておけない! おきたくないです!」

「お家事情、ボクも同じような身の上だったから! 今度は、ボクがそういう人を助けたい!」

「私が勝ったがためにこうなった。後がどうなろうとも、ケジメを付けたいです!」


 リドリア、レニ、信乃と続く中、最後に黒葉が残った。入間は少し震えているように見える彼に問いかける。


「あとはお前だけやな黒葉。どうする?」

「俺は……」


 黒葉の脳裏に浮かぶ記憶。自分が初めて助けた少女。そして再開し、心から自分の事を思ってくれていた音尾の存在に、当然高ぶる思いがあった。


「俺も! 戻ってきて欲しい! せっかく再開できたんだ、今度こそ仲良くしたい!」


 入間の口角が上がった。


「決まりやな。んじゃ仕度しい」

「仕度?」


 椅子から離れる入間。表情はそのままに堂々と黒葉達に宣言した。


「善は急げや! 気合のある今、早速カチコミ賭けに行くで!」

「ええぇ!?」


 入間のペースに乗せられ、黒葉達は音尾を助けるために御伝流(がでんりゅう)の道場に向かう事となった。

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