PURGEー82 気になる!!
音尾の退職とレジア達の移動。突然告げられた情報に動じた森本小隊は、すぐにクオーツの元にまで脚を運んでいた。
「どういうことですか隊長!」
「木花小隊長が次警隊を辞めただなんて!」
「隊員達の移動があるのでしたら、何故一言声もかけてくれなかったんですか!」
次々と飛んでくる質問に、クオーツは最初黙っているだけだった。しかし全員の声を聞き入れたをの確認してから、口を開いた。
「事前の説明をしなかったことは、申し訳ありません。しかし、これは本人から言われた事なのです」
「木花小隊長から? 辞めた理由は、一体?」
「プライベートな事情なので、私の口からはこれ以上は」
「そんな! いきなり過ぎてこれじゃ納得が」
「とにかく! これより『レジア アイズ』隊員と、『シャウ シャッキー』隊員は、森本小隊の所属となります。二人の事、よろしくお願いしますね」
一歩的に話を切られ、黒葉達は隊長室を追い出されてしまった。無理問い詰めたところで相手は隊長、何も吐かないだろうと判断。一旦帰ることになった。
「これからどうしよう、信乃さん」
リドリアからの問いかけに、信乃は少し不安な顔をしながらもこう答えるしかなかった。
「事情が分からないとはいえ、レジアさんとシャウさんはこれから同じ小隊の仲間です。木花小隊長の事よりもまず、二人のために色々準備しなくては」
その後、レジアとシャウにはそれぞれ部屋が与えられた。幸い仕事はなかったこともあり、リドリア達もその準備を手伝っていた。
リドリアはレジアの部屋を整える最中、次々と出て来る分かりやすい高級品に顔が引きつった。
「アンタ、分かりやすい高級品ばっか使ってるわね」
「当然、オーダーメイドの一級品ばかりですわ。一流の人間は、揃えるのも一流でなければいけませんから」
「小隊の中で一人だけこんなものを。怒られなかったの?」
レジアの表情が途端に曇った。
「木花小隊長は、受け入れてくれました。個性は大事だからって」
「個性……」
リドリアは団体戦を終えた後、黒葉から彼が音尾と知り合いだった事を聞いた。おそらく幼少期に黒葉を助けられなかった経験から、どんな個性でも受け入れる思考になったのだろう。
幼少期から我が強いレジアが、汚い手を使ってでも音尾を勝たせようとするまでなついていた理由が分かった気がした。
同様の話が、別室で引っ越し荷物を整理中のシャウにも起こっていた。戦った間柄の縁で片付けを手伝っていたレニも、彼女から同じ内容を聞いていたのだ。
「アタシもレジアちゃんも、最初にいた小隊でうまくなじめなかったんだ。それを木花小隊長が新たに作った小隊に入れてもらって、活躍させてもらえたんだ」
「二人共、そうなんですか」
シャウは手元のダンベルを片付けつつ、話を進める。
「だから小隊長が春山隊員の事を知った時、アタシ達が橋渡しをしてあげたいと思ったんだ。果たせなかったけど」
シャウの言い分を聞き終わり、レニはふと思い浮かんだ疑問を口にする。
「もしかしてですが、団体戦に負けたことが、木花小隊長が辞めた原因じゃ?」
シャウの顔が俯く。宛はあるが、確信はないといったような様子だ。
「分からない。けど小隊長がいた道場は、とても厳しい所だったと聞いている。負けることは、許されなかったのかも」
「道場って、木花小隊長が習っていた御伝流の?」
同じ頃、リビングでの黒葉と信乃。二人も音尾の退職の事が気になり、唯一の手掛かりともとれる『御伝流』について調べていた。
「御伝流。異能力を持たない人や、力の小さな人が、異能力を持つ敵に対処するために編み出した武術。門下生は多く、教える道場もいくつもあるって」
「勢力が大きいのか。もし木花さんがそこに行ったのだとしても、どの道場に行ったのか分からないな」
信乃と黒葉は結局音尾の動向を掴めない事に悔しさを感じていると、後ろから二人に向かって声がかけられた。
「なんやお二人さん、あの子が行った先が知りたいんか」
「はい、唐突過ぎる今回の件、とにかく理由だけでも知りたくて」
「このままじゃ、色々もやついたままだから……って、え?」
黒葉と信乃が突然後ろから聞こえて来た声に今更違和感を感じて振り返ると、そこには前回の団体戦の仲介役になっていた、次警隊二番隊隊長『疾風 入間』の姿があった。
「疾風隊長!?」
「何でここに!? どうやって家の中に入ったんですか!」
「まあまあ、細かい事は気にすんなや」
「いや気にする!」
「不法侵入じゃないですか、これ……」
当然の指摘をする二人に、入間は高らかに笑いながら足を近づけた。
「カッカッカ! ついこの前戦った小隊長の事が気になるとは、結構なお人好しやな」
(誤魔化した)
(誤魔化せてないけど、誤魔化した)
入間の堂々とした態度に出かけた台詞が引っ込んでしまう二人。そこに入間は更に鶴の一声を口にして来た。
「あの子、木花音尾が行った場所なら、私に心当たりがあんで。ついでに言うと、止めた事情もな」
「「ええっ!?」
予想外の所にいた情報源に、黒葉と信乃は仰天してしまった。
そして森本小隊の家とは全く違う別の場所。道着を乱れなく着こなし、小さな和室の中で正座をしている。静かに瞑想をしていた彼女だったが、ふすま越しに声が聞こえて来た。
「音尾、坊ちゃまから呼び出しが」
「はい……」
音尾は畳の上に立ち上がり、部屋を後にするのだった。




