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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第4章 愛を紡ぎ捧げるアドヴェンチャラーズ
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第三十六話 妖精騎士アイギスさんと盗賊の半妖精との仁義なき戦い(6)









そしてこのわたし、神祖の妖精王こと妖精騎士アイギスさんと妖精連盟の艦隊は、バーゼウ王国の王都で平和的解決への糸口を付け、公都ヴェスタに凱旋を果たした。



バーゼウ王国の悪辣な陰謀を事件が起きた日から三日でスピード粉砕して、妖精連盟の艦隊に公都の民衆が歓呼の声を上げるの。


北の山脈を越えた所に領土を持つバーゼウ王国は昔からシルヴェスターの貿易相手国だけど同時に仮想敵国でもあるからね。


戦いになれば折角、無税政策で生活が楽になるというのに肝心の収入の方が入らず、あまつさえ徴兵で働き盛りの国民が戦争に駆り出されるとの不安が広がっていたの。

それを一瞬で掻き消す知らせよ。そりゃ大歓声で迎えるよね。


しかも使節団が皆殺しにされた事件で、まさかのこのアイギスさんに疑惑の眼が向けられていたの。ご立腹の末に殺ったという噂が出ていたのも粉砕したわ。


ボロックめ、その噂を流してバーゼウ王国と結託してさらに揺さぶりをかけようとしてたのよ。

事実無根の噂を流しやがるのよ。バーレアがわたしに会いに行くのを待ってたってな。


そもそも、その陰謀を共謀した時点で計画が破綻してんだよね。

債権の買取だけでバーゼウ王国が引く訳がないじゃん。

外交交渉で何とでもなるだろっておまえよぉ、こっちがそんな妥協する理由がねぇじゃんよ。引くに引けなくなるわ。


そんな訳で全ての問題を一挙解決する秘策として妖精連盟の艦隊をバーゼウ王国の王都に向けたの。


金融ギルドのバルガスのおっちゃんと汚い取引してよ。このアイギスに止むを得ず手を汚させるとはボロックめ、本当にクソだな。


もちろん、恫喝しまくりの交渉は成功よ。

バーゼウ王家の非を認めさせ、誠意ある謝罪と賠償を請求したの。細かい交渉は後回しにして。




そして後日……


やっと公国の状況が落ち着いて初夏に差し掛かる頃。冒険者ギルド2階の作戦本部を撤収させる為、わたしは書類の整理だとか事後の対応の確認だとかを仕切っていた――



「書類関係はコピーを取ったら原本は公城に送っておけば良いよ、解りやすく整理しといてね。コピーと機材は全部、戦艦アイビーメルに。ネメシスの改修が終わるまではうちの艦隊の旗艦になるから」

「通信設備は置いといても良いんじゃないですか? また使うかも知れませんよ、アイギスさま」


「ゴモリー……それでも良いんだけど盗まれない? 冒険者ギルドの2階だよ?」

「冒険者ギルドに盗みに入る生命いのち知らずが居るんすか……聖魔帝国じゃ考えられないんですが。……しかも持ち運ぶには大き過ぎますよ」


「シルヴェスターの連中を甘く見ちゃいけないぞぉ、ゴモリー。金目の物ならヤツらは生命いのち惜しまず狙って来るぜ。どんだけ後先考えない連中が居ると思ってんの。売れば結構良い金額になりそうだし……置かないのが安全よ」


「うぃっす。……持って行くってさ」

と、ゴモリー達が手伝いに来てた闇羽妖精ダークピクシーたちに指示するの。

「ケーブル外して……魔力源はシャットダウンしてからで。ちょ、精密機器っすよ!」



そして皆でせっせと仕事してるとギルマスが顔を出して来るの。相変わらず覇気がない面構つらがまえなんだよね。しかも、ややくたびれた感じ出してよ、まだ午前中なのに。


「ギルマスぅ、辛気くさい顔してんな。なによ、見ての通り忙しいんだけど?」

「ああ、悪いな……ただ、こっちも相談があってな」

「あ〜ん? もうグラマスってお大臣にもなろうってヤツが自力で問題を解決できないって、おまえさぁ」


「アイギス……グラマスって程の権限だとか裁量がねぇだろ。……やる事が以前と変わらないのに仕事量だけ増えてんだから」

「ここが踏ん張りどころだろー。公国が栄えれば左うちわじゃん。もっと効率的に仕事こなすこと覚えなよぉ」


「いや、仕事に不慣れで手間取ってる訳じゃねぇんだわ。また人手不足でな、冒険者の」

「……前に依頼の消化率は悪くないって言って無かったっけ?」


「それがいきなり落ちてんだよ。仕事の方は増える一方だってのに」

「原因は? 対策とセットで報告頼むぞぉ」

「娼館の嬢ちゃんらを解放して、しかも本来の稼ぎの一時金渡したろ。で、冒険者どもとくっつく奴らが多くてな……」



このアイギス、まるで理解に及ばぬ。それと冒険ギルドの仕事がはかどらない理由の因果関係に。


「いや……くっつくのは良いじゃん。仲良かった連中でしょ? 冒険者には良くある話じゃん」


結構、娼館だとかの嬢ちゃんを射止めて、身請けする冒険者って多いよ。大体、そのパターンが大半じゃないかな。

家庭持てるのなんて腕の立つ冒険者くらいだし、そもそも堅気の女房持てるヤツって少ないからね。


ちなみに慣例的にこいつは嫌だ、って言ったら身請けを拒否できたりするから。

コレだけは以前から神殿が認めてる法らしくて、無理矢理に身請けして神殿なりに知られると幾ら御大臣御用達の嬢でも睨まれるらしいよ。


……これが嬢ちゃんらを債権化して金融商品にした理由の一端なのは皮肉かも知れないけど。

身請けして拒否られると面倒だからそのまま嬢を債権にして手元に置こうだとか、考えることがクソ過ぎるな。


「まぁ、金ができたからな。で、夫婦なり、恋人なりになったらそりゃ遊ぶだろう? ここの連中が生真面目に仕事するヤツらかよ、アイギス」


「なんてこった。冒険者の本分を忘れ過ぎだろぉ。いつ如何いななる時でも身をこなにして金次第で仕事をこなすのが冒険者だろ! 女にうつつを抜かして、けしからん!」

「アイギス。おまえが言うな感あるぞ……」


「わたしはノーカウントに決まってんじゃん。ヤツらに出来ない事をできるのがエースオブエースのわたしじゃん。熟練級冒険者こそが冒険者ギルドの屋台骨という自覚がヤツらにはねぇのか」

「アイギス。いつも思うんだが、自分を棚に上げる事に関しては冒険者では誰一人お前に勝てるヤツが居ねぇな」

「何、言ってんのよ。そんな事より由々しき問題だよぉ……で、どうすんの? はよ、対策」


で、ギルマスがバツが悪いって感じで片手で頭上半分を覆うの。考えて来なかったのよ。


「そうだなぁ……中には失恋して酒に溺れてるヤツとか居るからなぁ……そいつらを復帰させる手立てを考える……か?」

「どんな手あるんだよ……あのギルドの酒場で今でも死にそうなヤツとか」


前に「ダリアぁぁぁ!」って女の名前叫んでた冒険者の事だよ。その愛しのダリアは愛しの男に取られてしまった。結果、恋に破れた中年男が酒場の片隅で生きたむくろとなって転がってるの。


「……要は新たな女、つまり生き甲斐があれば問題ないんだよ。ここでもそうだが他のギルドでも何人か居るらしいからな……アイギス、お前に女淫魔サキュバスの知り合いとか居ないか?」


「知り合いは居ないけど聖魔帝国には居るらしいよ。気になって向こうの娼館とかの事情訊いたら、女淫魔サキュバス男淫魔インキュバス独擅場どくせんじょうらしいよ。ホストさせたら勝てる子居ないくらいに」

「なら、それで行こうぜ。男色のヤツも居るしな」

「良いだろう。魔女王陛下に打診して置く。一つ問題が解決しそうだな。他には? その程度じゃ話にならないでしょ」



そしてまた頭を覆うように片手でこめかみを抑えて脳漿のうしょうを搾るギルマス。そうだ知恵を絞れい、このアイギス。そうやっていつもこのギルマスの頭脳を鍛えている。

尚、我ノープラン。考えるのはギルマスの役目。


「…………そうだなぁ。くっついてる連中をどうにか……。……要は動かせれば良いんだよな。ああ。そうだ。アイギス、市民権をエサにするのはどうだ?」

「市民権……? ああ、前に言ってた都市の居住権の事だよね。でも、熟練級以上の冒険者なら申請すれば貰えるんじゃない?」

「冒険者ギルドのマスターが推薦すればな。ただ、ここの連中は推薦できる奴らの方が少ないからなぁ……だけどな、女房作って家庭持つなら話は別だろう?」


「……ふむ。多少はマシになるってか」

「ああ、それに期待してだ。特例で公国で夫婦になるなら冒険者ギルドの依頼のノルマを一定数、こなせば市民権を与えるってのはどうだ? 悪くないと思うんだが。期間限定でノルマのポイント倍とかどうよ?」

「確かに、冒険者なんてカタギじゃないからね――」


基本、暴力関係のお仕事だから一般的にはカタギと見做されないのが冒険者よ。


ただ、それなりの腕でギルドや世間が認めれば晴れてカタギの仲間入りができる。むしろそうやって陽の当たる身になれば出世した感さえ有るのよね。



「悪くないな。冒険者の女房なんて、それこそ日陰に生きる宿命を背負わされる。……それを大手を振るって通りを歩けるようになるなら、奴らもやる気を出すか。女を幸せにするのが男の魅せどころだよね」

「まぁ、どいつもこいつも流れ者。大概追われてたりするからな、そこら辺の問題をどうするかというのがあるが」


「良いだろう、褒美として冒険者ギルドで市民権を取得したヤツらには公国による保護を与えよう。他国からの如何いかなる政治的干渉に関してはこれを厳禁とする。……こんなので上手く法律にすれば良くない? 」

「他国からの公式的な引き渡しの要求が来た場合は?」


「そりゃ、法治国家だもの。こっちの裁判で罪を立証できればな。……しかもその裁定の実施に関してはヴィリア姫殿下のご裁可が必要だよね……その場合は恩赦を含め可能な限りの便宜を図ると伝えておけ。……偽名くらいは当然、偽装経歴バックカバーあらかじめ用意しろとな」


絶対に保護できるとは言えないよ。何やったかによるし、過去からは必ずしも逃れられない。……が、身元を隠しやり直すというなら可能な限りは善処しようという姿勢を見せる。


なにより公的に引き渡しの要求なんて早々出来ないでしょ。そもそも他国が本当に法治国家かどうかが怪しい世界だもの。


この状況だと他国からの要求なんて余程の証拠と正当性がなければ、因縁あや付けてるのと同じらしいからね。


「他国でのやらかしを恩赦って。まぁ、大手を振るっては名乗り上げれない連中ばかりだからな。それくらいが妥当かも知れないな」

「歩けるようになるまでが限度よ。やった事を考えろってな。冤罪ならともかく踏み倒してんだから。……で、これで行けそう? 細かい所はヴィリアさんに投げないといけないけど」


「充分だろ、というよりそれで釣るしかないな。悪いが早速、通して於いてくれ。連中が必要なのは今だからな」

「良いだろう……これで問題は解決したな」


「いや、そっちに対処法の目処が付いたがエースオブエースの出番が必要なのもあってだな……」

「しょうがないなぁ、アステリア」


「……また、私ですかぁ?」

「わたしは別に仕事あるから動けないのよ。代わりに良い男を紹介してやろう」


「…………」

疑心暗鬼の眼つきを隠さない黒髪残念美人。最近少しばかりスレて来たよ。毎夜、悶々とさせてるから地味に効いて来ている。


「ロクでもない人しか紹介されたことないんで、ご遠慮したいんですがね」

「大丈夫、次はやる気になるよ。腕の立つヤツが居るんだけど……そいつ今頃、全力で嬢ちゃんらに甘い夢魅せて金を巻き上げてるから、連れて来て。女の子の敵以外の何物でもねぇから」


「……エースオブエースが必要な獲物の方はどうするんです?」

「そっちもやるの余裕でしょう、アステリアなら。でも、先にあの魔法剣士の方が優先だよね。金持った嬢ちゃんらなんて良いカモだよ。罪滅ぼしに冒険者ギルドで仕事を任せたいの……ヤツはクズだが腕は立つ。賠償をさせなきゃ」


「……はぁ。まぁ、やりますか。のさばらしてると本当にロクでもなさそうですからねぇ」


スレていても人が良いからね、アステリア。そんなだから聖女だとか呼ばれるのよ。このクズしか居ない冒険者ギルドでは希少過ぎる存在よ。


そして娘のアイリをアステリアの見張りに付けて送り出すの。クズな男の対処法もしっかり学ばせないとね。万が一ロクでもない男に引っ掛からないように。アステリアは以外にクズには厳しいよ。

そしてあの魔法剣士は馬鹿なことに美女に眼がない。完璧な人選だよ。



そして二人が連れ立って会議室から出て行ったのを見ながらわたしは嘆息するの。


「……まったく、男なんぞATMだとどうして自覚しないんだろうね。逆をやる大の男なぞ、それだけでクズだと罵らなきゃ」

「現金自動預払機とかって呼ばれてもな……」


「ああ、そう翻訳されんの……でも実際そうでしょう? 家族の為に金を稼ぐ大黒柱よ。それが男の存在理由じゃん、働きバチどもよ家族を養うために貢いで来いってな」

「うちの神さまは価値観がヤケに古いな……自立した女ってのも居るんだから、人それぞれだったりするぞ、アイギス」


「それこそ、それぞれだよねー。でも男女の別が有るから役割分担できるでしょう。立場が逆と両働きはともかく、両方働いて稼がないとか成立できんの? 同性でも構わないけど」

「両方働かないのは一番成立すると困窮するパターンだな……金持ちくらいしか無理じゃないか?」


「所が国が豊かになったら平民でも成立できるようになっちゃうのよ。だから豊かな国ってのは働き者が居なくなるの……歴史を知らねぇなギルマス」

「そいつは申し訳ないな。何分、古代魔法文明時代だとかに縁がないんでね。でも、確かにそうだな、国が豊かになればそういう事にもなっちまうのか」



「なら、どんな理由を付けても働かせなきゃ。こっちは権力者やってんだよぉ。その最悪パターンを可能な限り無くすために余裕でけなすわ。国民が労働意欲に目覚めなきゃ国なんて簡単に滅ぶんだよね。つまり、男なんぞATMだ、わたしも家族の為のATMよ。ATMになる覚悟を持つ者のみが家族を持てるの。そして人をATMにするのは家族のみの特権よ……。ギルマス、ATMとはほまれと知るが良い」


「現金自動預払機と呼ばれることに名誉を与えようとか……。アイギス、為政者地味じみて来たな……お前には負けるよ、まったく」



そう、今回の話は人様を自分が楽したいが為に食い物にしたクズどもの話よ。同じ人間だ、ってことを忘れた本物の外道連中のね。


ならばこの神祖の妖精王にして妖精騎士アイギスさんが天誅を降すのは真っ当なことだよね。


バルガスのおっちゃんとの取引で金は払ったけど、連中をきっちりわたしの虐殺名簿マーダーリストには載せておいたぜ。


いとおしいくらいのクズ連中だな。殺る時が愉しみだ。バルガスのおっちゃんと組んだわたしの実力は何倍にも跳ね上がる……血祭りに上げてやるぞ、人間ども。ATMだと言う自覚を与えてやろう」


シルヴェスター公国の連中はお仕置き済み。

ヴェルスタム王国の連中は後回し。

なら、バーゼウ王国の連中がず標的ってね。金を巻き上げられて死ぬが良い、虫けらども。



この時、誰しもがこのわたし、神祖の妖精王アイギスが平和的な解決の為に金銭的な要求をバーゼウ王国に突きつけて居たと思っていた。


だが、誰も知る由が無かったの。

神々、その神祖たる者の御怒りの深さを。

こと、このアイギスは女を食い物にするのが一番大嫌いな事であったことを。


「……わたしを雇ったのはこの為ね。良くやるわ」

と、計画を明かされた時、〈剣千の魔女〉は語った。



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