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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第4章 愛を紡ぎ捧げるアドヴェンチャラーズ
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第三十六話 妖精騎士アイギスさんと盗賊の半妖精との仁義なき戦い(1)




――シルヴェスター公国内のドワーフ達の地下村。



盗賊のボロックが仕掛けたバーヴァル諸島出身の奴隷返還問題を抱えながらも、この妖精騎士にして神祖の妖精王アイギスさんには常にお仕事が舞い込む。

ヤツだけに関わずりあっては居られないのよ。


で、今日はアイリとアステリアでパーティーを組んで妖精たちの問題の解決に勤しんでいたの。


「で、かなりガチ目の問題じゃん。もう少し早く言いなよ。ドワーフ村存亡の危機じゃん」

「うな事言ったってなぁ。最近じゃ、皆して地下栽培に忙しくて、坑道の管理が疎かになってんだよな。気付くのがか遅くなっちまって」

「で、ご覧の有り様じゃ〜ん。長蟲ワーム避けの結界が合っても、これじゃあ村滅ぶぞ」


地下にあるドワーフ村の張り巡らされた坑道の外れ、人口が少なくなって放棄された区画にはいつの間にか新たな不法居住者が。


眼の前の、広い広間になってる坑道の場所には人間の子供サイズの白いありたちが所狭しと巣食って居るのよ。


大白蟻アンクランに春先に巣立ちして丁度良い巣穴見つけられてんじゃん。夏にはお前ら、アリだぁぁーって叫ぶことになってたぞ、これ」

「お、おう。こんなに居やがったとは……」


ここに来るまでにもう何体も倒したのよ。

地下に巣食って獲物を狙う厄介な魔物だよぉ。一匹、一匹はそれほど強くないけどやたら数が居るの。


人里近くに巣作られると面倒なんだよな、こいつら。巣がデカくなると本当に、村人がアリだぁぁーって叫ぶことになる。肉食だから人間だとかでもエサである事には違いないしね。

世界制覇を狙えるほど強くないけど。


わたしと案内役のドワーフに、前方に居た教国の聖女アステリアが振り返る。


「で、アイギスさんもう始末します?」

「うん、やろうか。白アリ駆除のお仕事よ……でも本当に業者みたいな感じになるからね」

「でもここの冒険者は、魔物退治の業者みたいなものじゃないですか……」


「教国ではどうなんよ? 魔物退治に民間の業者とか居ないの?」

「居ますよ、冒険者ではなく専門のが。中小企業だとかいうと解ります?」

「本当に業者じゃん。夢もへったくれもないよね」

「一応組合だとか有りまして、個人経営で強い人とか居るんですけどね。あ、わたしも一応、魔物掃除屋モンスタースイーパーですし」


「お母さん。警戒してたアリたちがこっちに来るよ」

「アリ達ももう、後がないからね。じゃあやろうか」


古巣の大白蟻アンクランはやたら強いって聞くけど、ここのは巣立ちしたばかりで大したこともなく、次々に殺る。


ただのデカい蟻だよ。ただ、顎の強さはそれこそ腕だとかに噛みつかれたら引き千切って来るほど強いけどね。

数が居れば脅威、冒険者が相手にするにも巣穴が小さくて難儀すると、厄介過ぎる獲物だからねぇ……


で、わたしは剣を振るって盾で粉砕して、アイリは大斧で……アステリアも魔法なんぞ使わずに足蹴りかい。まぁ、地下で魔法は早々使えないしね。


物理的に影響しない攻撃魔法ってのも有るんだけど……それはそれでわたし達が使うと有効範囲がデカくて他の関係ない生物も一掃しかねない。


結果、この世界でも最強クラスのパーティーが丹念にデカい白アリたちを潰して行くという火力の無駄使いよ。勿体ないくらい過剰戦力。


そして最後に白大蟻アンクラン女王クイーンをアイリが大斧振るって仕留めてお仕事終了。

女王を守る為に大アリたちが徹底抗戦するから、女王クイーンを敢えて最後に倒すのが定石よ。


でないと残ったヤツらが暴れまくるらしいのよ。

ヘタすると新たな女王クイーンが生まれるらしいしね。


「じゃ、仕事終了だな。お代は後で請求するよ」

「え!? 勝手に助けてくれたんじゃなかったんでぇ」

「この仕事のどこに無料要素あるよ。村救ってんじゃん。しかも妖精連盟が派遣した菌糸妖精マイニコドたちのおかげで食い物も商業栽培も目処が立ってんだからさぁ」


「そりゃそうだけど毎日、仕事に借り出されて休む暇がねぇや。あの歩くキノコも人遣い荒いしよぉ。人手が足りてないぞ」

「今までが暇過ぎたの。世の中毎日が労働だよぉ……ほれ、そしてここに新たな栽培場もできた」


って辺り一面の大白蟻アンクランたちの死骸をわたしは指し示すの、丁度良い苗床になるよ。菌糸類の栽培が捻るね。


「こ、コイツらを……え、じゃあ」

「仕事が出来たな、やったね。……頑張れ、週40時間労働にはほど遠いと聞いて居るから余力あるっしょ。今日の仕事料も払えるぞぉ」

「そ、そんなぁ!」


そして、今まで文明とはかけ離れて居たドワーフ達を世知辛い商業社会に落としてわたし達は去る……


妖精連盟は妖精たちの互助組織よ。助ける代わりにお代も頂くよぉ。働けば働くほど酒に消えて行くお前らには酷かも知れないけど。飲み過ぎでしょドワーフ。



――そして妖精連盟の代表としての仕事(ほぼ魔物退治の冒険)だとかをわたしはこなし続けながらも、頭の片隅では盗賊ボロックの仕掛けが気掛かりだったの。


おそらく聖魔帝国が出てくるまでがタイムリミット。

シルヴェスターの盗賊ギルドと妖精連盟だったら、妖精率いる国家規模組織の妖精連盟を重視するに決まってるからね。


つまりボロックに悠長にことを構えてる時間はない。そろそろ事を起こすだろう……そう、わたしは身構えてたの。





で、仕事終えてから冒険者ギルドのカウンターでギルマスとボロックに付いて話合ってた。


「それは考え過ぎじゃねぇかな。結局、嬢ちゃんらも全員見つかったんだろう。バーゼウ王国にしても聖魔帝国が出てくることを考えればそう無茶はできないだろうしな」

「この辺りの海上交易を仕切ってると言っても、その交易の主な相手国が聖魔帝国みたいなものらしいからねぇ……」


聖魔帝国ははるか東のアヴァロニア大陸の国。


だけど、周辺諸国に経済力で覇を唱えアヴァロニア大陸の沿岸諸国半分を経済圏に組み込んでるらしいのよ。つまりバーゼウ王国の大陸間交易の相手の一方が聖魔帝国よ。


しかもこの大陸の北から東にかけての海域も連中の商業海域と化してるとか。


「……東の大陸間交易はほぼ聖魔帝国の独占状態。西の大陸の聖ロクス教国との交易は限定的で頼りにならない、とくればそりゃあね」

「バーゼウもヘタ打ったら世界の大国同士の争いに巻き込まれるからな、アウレリア王国でも一騒動あったんだろう?」


「ロクス教国と艦隊戦やったわ。宇宙艦隊同士で空飛んでドッカンドッカン。わたしも戦艦で突っ込んで戦果挙げて来たわ」

「そんな国相手に喧嘩売る馬鹿は居ねぇな……」


中世からやっと近世くらいの社会レベルに辿り着こうって国のギルマスからしたらそうなるよね。


わたしもだわ。わたしの地球世界の知識って21世紀の半ばくらいまでなんよ。宇宙航行可能な軍艦だとかSFでしょ。

でも、わたしの元になったゲームの世界にはあったんだよね、ファンタジー物だったんだけど。

おそらくそっちが由来でそれを元にしてんじゃないかなぁーと何となく思ってんだけど。



「……つまりバーゼウも何とかなりそうなんだろ、アイギス」

「ヴィリアさんが、使節団相手にのらりくらりと要求を躱して、聖魔帝国に仲介してもらう事出したら逆に向こうが難色を示すってね。逆にそれだと使節団が八方塞がりになるじゃない。ボロックの奴が何が狙いなのか解んなくなるぞ」


「確かにそれだと使節団が何の為に来たか解らんな……。だがアイギス、お前が凶悪過ぎて連中の思惑を粉砕してんじゃねぇのかな。バーゼウから使節団越させて、嬢ちゃんら誘拐して、国の有力者連中からも圧力掛けられたら普通はどこかで折れると思うだろ……」


その全ての謀りごとを薙ぎ倒すわたし、アイギス。

ちなみに有力者連中は例の嬢ちゃん債権を買ってたり、王国のヤツらから圧力掛けられたりした人達の事よ。公国各街のギルドの上役とかだね。


ヴィリアさんの所に嘆願しに行ったらしいけど……代わりにわたしが応対して、国賊かな? って笑顔で対応したわ。

何もわたしに言い出せる人居なかったよ。誰一人もね。


「大概は潰したとは思うのよ。連中のきたねえ思惑を。でも、やはりわたしが最強であったか、って慢心もできないのよね。盗賊の中の盗賊がよ、一世一代で侠気おとこぎ見せて仕掛けて来てるからな……」


しかもそれなりに腕があるヤツが。でなけりゃ仮にも国とか動かせないでしょ。


警戒するに越した事はないんだよね。

でも、何を警戒すれば良いのか解らんのよ。嬢ちゃんらだとかわたしの家族だとかの有り得そうな狙いは守り固めてんだけど、そんな単純な手じゃないと思うしさ。


ただ、カウンターのギルマスが何かに気付いたように顔を上げるの。


「噂をすれば何とやら、お前に客だぞ、アイギス」

「思い付いた訳じゃないのかよ。――ん?」


そりゃわたし背低いからギルドの入口見たら顔あげるよね。

で、わたしも振り返って見て見ると、外に馬車が止まっててギルドのドアをバーゼウ王国の海兵が開けてから、何人か入り込むの。


そして最後に連中を連れ立って、独特な白を基調とした豪華な衣装の偉そうな男がわたしの前にやって来たわ。

年の頃はギルマスと同じ三十代後半くらいか、若々しいけど褐色肌に顎髭面よ。王族って感じ、印象は。



「失礼する。神祖の妖精王陛下とお見受けするが……」

「外交儀礼というものを知らねえヤツだな。いきなり王さまに会いに来る馬鹿が何処どこに居る」


「これはこれは申し訳ない。……私はバーレア・デル・ドリテッサ・バーゼウ。言わずと知れたバーゼウ王家からの使節団の代表の者。妖精族の王たる者には真に非礼ながら……何分、是非に御目通り願いたいと罷り越した次第で」


自信過剰、というのが吐いた台詞せりふの端々に現れるようなヤツよ。これ見よがしにキザって感じな男だしな。


「その物言い、王族か?」

「これは御目が高い、まさしく。末席ではありますが継承権に持ち合わせは有りますな」

「バーゼウだとか名乗るからだよ、ってもバーゼウ王家も分家が多いとか聞いてるけどな」


「この私も血族では有りますが、継承順位が48位では玉座とは無縁ですな。……して、御目通りだけでなくここだけの話も非礼ながらいたしたいのですが、希少なお時間を切に望みます。なに、損はさせませんとも」

「ふむ……偉く自信があるな?」


「何分、我々にしても困りものな事態でして……ヴィリア姫殿下もなかなかに手強い。聖魔帝国を敵に回す訳にも参りませんし、ここは一つ問題の解決の為にもアイギス殿下にも御目通りし、何が根本的な問題点なのかを明確にしたいと……ここだけの話で。切に、真面目に、腹を割って」

「最後の三単語に力を入れたな、おい」


「……ここだけの話。こちらの事情だけでも聞いて頂けませぬか、正直代表では有りますが王族というだけで連れだされたようなもので、実際の交渉は外交官吏の役目……で、連中では埒が開かぬと心苦しい立場でしてな」


そして小声で、ギリギリわたしの耳に聴こえるような声で喋るの。

「バルバロッサのヤツに聞きましたぞ、お知り合いで有るとか。ヤツに免じてどうか」

「…………良いだろう、お前だけな。海兵を下がらせろ」


知り合いの名前を出されては、このアイギスさんも

聞く耳持ってやろうかと思うよ。

ヤツとの関係も聞かなきゃならないし、バーぜウの事情も聞きたいしな。


そして冒険者ギルドのお客様用応接間での、ここだけ・・・・の会談となった。



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