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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第4章 愛を紡ぎ捧げるアドヴェンチャラーズ
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第三十五話 妖精騎士アイギスさんと夜のお仕事浄化作戦と盗賊の意地(1)

小突こづく。この世界の暴力社会の用語で軽く暴力を振るう、敢えて難癖を付けるなどの意味。

挨拶代わりに小突いてみる。

など小手調べ的に使われる業界用語。


プロの方々が自己責任でやる行為なのでくれぐれも良い子のみんなは真似しないでね。

(´・ω・`)〈 だから悪い子もダメだろ。普通に捕まるぞ。



秘密の高級娼館での公都テロ未遂事件の翌日からわたし、妖精騎士アイギスさんの日常は忙しなくなっていた。


公国各地の街や村で、冒険者たちが一斉に大手を振るって売春業をガサ入れし始めたのよ。

奴隷制が禁止されてる我が国で娼館だとかで嬢ちゃんらをそんな扱いしてる悪いヤツらは居ねえかってな。


このアイギス、そんな指示を出した覚えが一切ない。やれ、とは言ったけどやれって言わなかったヤツらまでやってんのよ。

でも、ヤツら高級娼館でテロ紛いのことをやられたのを知って、少し小突こづいたら、今度は大義名分を振りかざして大体的に小遣い稼ぎに邁進し始めたの。


美味く行けば天下り先ゲット、そうでなくても良い小遣い稼ぎと、この流れ乗るっきゃない、ってね。

女絡みだから下心満載で暴走しやがるの。



そして、冒険者たちにより嬢ちゃんらを働かせてた宿場街の地主が絞められてるの。


「た、助けてくれぇ! ワシが何したって言うんだぁー。やめろぉー」

「おう、いけねぇな。嬢ちゃんらを借金のカタに客取らせて金儲けか。おめぇさん、それは良いが……嬢ちゃんらの取り分が雀の涙ってのはどういう了見でぇ? ちょっと奴隷の疑惑があるな、おい」


ヴェルスタム王国時代から奴隷制は禁止よ。

つまり、法の遡及適用は無しの原則を鑑みても疑惑は尽きないってね。悪知恵働かせたらここの冒険者たちの右に出るヤツは居ないよね。


そしてこのアイギスさんの眼の前に地主の男が冒険者たちによって引っ立てられて来る。

わたしは大捕物になるから来たのよ。


「わしは、わしは何もしておりません。どうかこの乱暴狼藉をお止めくだされ。誤解にもほどがあります」

「……裁判で釈明するんだな。利子含めようが嬢の売り上げ九割五分を懐に入れたら誤解もクソもねぇ。――差し押さえろ」


一緒に来てた金融ギルド債権回収部隊の鴉人レイブンたちが続々と屋敷に乗り込む。

もはや裁判しても判決が確定してるような案件よ。予め財産権を侵害してでも差し押さえるわ。


そして絶望に涙して地主の男が公都に連行されるの。モチロン、戻って来れないでしょ。


土地も何かもかも差し押さえるもの。帰って来ても何も残ってる筈がないわ。

賠償請求金額がおまえの推定財産を超えるの、しかも聖魔帝国を見習って裁判費用は敗訴した側に請求するしな。



「さて、これで一件落着、って訳には行かねぇぞ。つつがなく段取りしやがって」

「何をおっしゃいます、正義は成されましたぜ。晴れて嬢ちゃんらは自由の身、オレ達はささやかな報酬を受け取って一仕事を終える。いつものことでさぁ」


「相変わらずクソ真面目なクズだぜ。けどその嬢ちゃんらはどうする? 借金を返済した後の行き先を聞いてないんだがな」

「相変わらず目敏い方だ……故郷くにに帰るなんて戯言たわごとは、まぁお信じになられない、と」

「そうだ。おまえのようなクズがそんな善人ぶったことをする筈がねぇ。騙くらかしてそのまま嬢として働かせる気だな?」


「……帰った所で売られた身。一度堕ちた嬢ちゃんらに行き先などそうはありませんぜ? 女の身一つで生きるには辛い世の中だ……。アイギスさん、そうではありませんか?」

「で、おまえらが仕切って娼館なり運営だとかする気か? そうは問屋は卸せねぇんだよ。おら、どうせあの詐欺師と組んでるんだろ。嬢を出せ嬢を。どうせ夢見させて貪る気だろ。お前らに任せられるか、このクズども」


まったく油断も隙もねぇ連中なんだもん。

そのまま乗っ取ろうとか余裕で画策して来んのよ。


特にこのクズどもに利権を渡しちゃなんねえとはっきし解んだね。だって金の為なら何でもやるクズなんだもん。実際、今やってる。



「……働き次第で甘い汁を吸わせてくれると聞いたんですがね」

「お前らに言った覚えはねぇな、勝手に働きやがって。おら、金融ギルドとの取引でも稼ぎがあるんだろ、その程度で満足しとけ」


そしてやれやれって顔を振るの、この元奴隷商の冒険者。

目端が利くのは良いけど、冒険者の本業じゃなくて副業に精を出すタイプなのよね。仕事によっては過去の経験が生きることもあるけどさぁ。


「まったく骨折り損ですかい……なかなか引退できませんねぇ」

「だから引退を見据えて来るんじゃねぇよ。まだ三十代だろ。お前らなら引退しても、独立して起業できるだろ」


「なかなかに難しいモンなんですぜ、経営ってのも。数々の商会や商人が落ちぶれるのを見て来ましたが、それで知ったのは商売ビジネスは一寸先は闇ってことですからね。そうそう上手い話って物はないもので」

「おまえはクソ真面目過ぎて安牌取り過ぎなの。楽に稼ごうとしやがって。マジメに聞いてられねぇんだよ」


効率求めすぎなクズだからな。

正直、金融ギルドで取り立て屋やれよ、と思うんだけど冒険者稼業との兼業が一番楽で儲かるとの結論に達して、このシルヴェスターで稼ぎまくってんの。どうしようもねぇ野郎だよ。


ただ、このクズな冒険者とかは割と序の口なのよね。

コイツを筆頭に、わたしがケツ持つって言った矢先にその話が一人歩きどころか爆走してんの。冒険者どもが公国の売春業に難癖付けまくってんのよ。


どう考えてもクズだよね。特にやるのは良いけど本業を疎かにするのが頂けないわ。


おかげでさっさとケリを付けないと公国の村々を魔物たちから守るという、冒険者本来のお仕事に支障をきたすような事態に陥って居たの……


クズどもが仕事放り出してイチャモン付けに行くから頭抱えるよぉ。お前らどんだけクズなんだよ。







冒険者ギルド2階、作戦会議室。



そこではムスっと膨れっつらのわたしに、各地の冒険者ギルドからの情報をセレスティナさんがまとめて解りやすく報告してくれている所だった。


「……冒険者たちが難癖つけて小突こづいたのは34件。そのうち24件から苦情が出てますねぇ……」

「苦情の内訳とか解る?」


「え〜っと。恐喝との訴えが10件。押し入り強盗だとの訴えが7件。暴行の訴えが20件。無銭飲食が17件。そして苦情入れるくらいですから事実無根との訴えが24件出てますね。……冒険者側の言い分も聞きます?」


「いや、それは要らないよ。どうせケチ付けてんだから。つまり成功してんのは10件程度か……」


嬢ちゃん隠されそうな高級娼館を真っ先に狙い撃ちした10件よ。辺境の国だからむしろ10件とか多いくらいなんだけどね。……避暑地代わりにこの北国に来てお楽しみツアーとかあったらしい。野郎ってのはクズしか居ねぇな。


「前に提案して来た代表の方々の仕事ですよね、それ」

「で、苦情来てんのが殆ど、関係ないヤツらってね。クズ過ぎるぜ連中、勝手に小突きやがる」


話が出回った途端、その手の商売してる連中に難癖付け始めるの。

やってる事がそこらのチンピラと変わらねぇぞ。冒険者ギルドの看板背負ってるって自覚がねぇ。



「……で、アイギスさん。神殿にも苦情が入ってたりするんですが」

「ゴメンよぉ、セレスティナさん。何とかして来い、って言われたんだよねぇ」


「……いえ。神殿繋がりは比較的まっとうなので止めて頂けるとぉ、って結構、神殿長も困ってましたよ」

「あれ? その言い方だとえらく下手に出てるじゃん」


「実は法的にも厳密には、この国での売春業の嬢の扱いを小突かれるとマズいものが有るんですよね。……借金のカタにお客さん取らせたら、それ奴隷と一緒じゃない? と言われてしまうと……」

「ああ、やっぱりマズいんだぁ。なら……テメェら法の神ラディアスの使徒だろ、今まで何してたんだ、オイ。と強気に返答してて」


「……強気に返答しちゃうんですかね? 神殿長さま頭抱えますよぉ」

「ごめんねぇ、セレスティナさん。……でも、今この流れを止める訳には行かないのよ」

「……? いえ、私の事は良いんですが……でも、止めないとマズいからアイギスさん困ってたんじゃ……」

「だよね。普通はそう思うよねぇ……。でも、逆なの。止められないから困ってたんだよ」



セレスティナさんが理解できなくて、あどけない小顔を傾げるの。金髪エルフの少女って感じで、その仕草、可愛いねぇ……じゃなくて。止められない理由だよね。


「……元々、売春業を裏の連中に任せるのはどうかと思っててさ。聞いたら規制とかもないよね? 今まではまだ盗賊ギルドの仕切り屋が入ってたけど……それも覚束おぼつかなくなるなら冒険者ギルドで仕切ってしまって良いんじゃないかってね。この際、独占してしまっても良くない?」


「ああ、なるほど……国によっては神殿の独占だったりしますからね」

「それは聞いたこと無いな……え、快楽だとか、生の女神っていたっけ?」


「いえ、地母神マーテルさまの神殿ですね。生の喜びも司っていらっしゃいますよ。神殿と繋がりがあるのは地母神神殿ですね」

「へぇ……まぁそれはそれでイメージ通りかな。なら、マーテル神殿にも話を通すか」


ただ、私の背後に突っ立って聞いてた聖女さまがね、何か言いたそうな顔してんの。


「どうしたのよ? 何か文句あんの?」

「いえ、国には国の事情がありますから口出しはできませんよ」

「幅広く意見を聴きたいね。怒らないから言ってみ」


「…………どうせなら法律で縛って国の管理にしたらどうなんですかね? ここの冒険者ギルドの冒険者の引退先……天下り先にしてしまうと後で利権団体とかになりません? 後々厄介事になりそうですけど……教国とかそんなのばっかりですからね」


「利権団体にはなるけど、そもそも違法な取り締まりに使うお金が国にないのよ。じゃあそいつらに管理して貰った方が都合が良いでしょ、利権守る為に動くし。何かやらかしたらそいつらを取り締まれば簡単なんだから」


普通はそういうピラミッド型の組織図だと思うんだけど? 何かやらかしたり不都合があれば一番上から順に絞められるのよ。


幸い絞める事に関してはこのアイギス、自信がある。下でも上でもサンドイッチにして潰して行くぞ。フットワークの軽さに定評のある絶対君主を目指してるの。

なにせ金がないので自分で動くしかない。



「公国の財政は借金漬けよ、それを妖精連盟が肩代わりしてる状況なくらいだし。こんな状況で金の掛かる事できないの。何処ぞの先進国ですらまともに取り締まれるのかってね。それにこの国の財政支える為にもり妖精の子たちなんてタダ働きよ。これ以上、人間の始末にお金使えないって」


「だから、お国の事情があるって言ったじゃないですか。考えがあるなら良いんですってば」

「文句有りそうなつらするからだよ。ただ、一応は法律で縛るよ、まぁ縛った所で……」


守らせなきゃ意味ないからね。ヴェルスタム王国も奴隷制がないとか言いながら奉公人だとかほぼ奴隷だもの。それが罷り通ってたんだから。


「クズどもはクズなことするからな。だけどそのクズにも使い道がある。耐えられるかな、連中……ふっふっふ」

「あのぉ、冒険者ギルドのお仕事に支障が出てる件は……」


それはそれとしてセレスティナさんに突っ込まれる。

それがこのアイギス、悩みどころであった。

でも、この流れを止める訳には行かないの。


こちらのクズ冒険者をぶつけて売春業が食い放題にされ、盗賊ギルドの仕切り屋がをあげるか、冒険者ギルドの本業が疎かになって国の運営に支障が出るかの。

つまりチキンレースしてんだよぉ。


向こうからギブアップさせないと交渉して独占状態に持ってけないからね。どのみちモグリを防ぐ為にヤツらの協力が不可欠になるんだし。


なにより中途半端な状態になったら業界に示しが付かないのよ。法律で縛ろうにもそっちは良くて、なんでこっちはダメなのって事になるからね。


法やルールは平等に、眼に見える形で施行するのが一番よ。特にこの業界、法で縛ってもモグリでやる連中が多そうだからね。ブッ殺すにしても明確な法に従った方が誰しもが納得するでしょ。



……ただ、冒険者どもの行動が想定の斜め上なおかげで関係各所の抗議が冒険者ギルドに待ったなしになるの。

それがこのアイギスさんを唯一悩ます事柄だった。


だって公国を取り仕切ってるヴィリアさんに平謝りだよぉ。タダでさえ独立して忙しいので大迷惑極まりない。


よってこのアイギスさん自らが自分の行為のケジメを取る為、出陣する事を早々に決めた。

ケツ持ちさせるの早すぎだろ。



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