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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第4章 愛を紡ぎ捧げるアドヴェンチャラーズ
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第三十四話 妖精騎士アイギスさんと至尊の聖女にして魔女さまとの男漁りの冒険(4)





いきなり娼館のある区画に多勢で乗り込む手練れの冒険者達。


公国の首都と言っても辺境の小国よ。

春を売る嬢達の住処も慎ましいもの。歓楽街って言うほど綺羅きらびやかじゃなくて居酒屋が立ち並ぶような場所の2階や、その周辺に点在する形でその手の宿があったりするのよね。


で……冒険者達は迷うことなく思い思いの娼館に突っ込んで行くのよ。女の名前を叫びながら走って行ったヤツも居たわ。


「ダリアあぁぁ! ダリアぁぁぁ――」


「……おいおい、必死過ぎだよぉ。そんな慌てなくても逃げ出しゃしねぇぞ」

「まぁ、そう言いなさんな。なかには嬢にぞっこんで金貯めて逢瀬を重ねるのが生き甲斐なんてヤツらも居るからな。で、アイツがその典型」

「まぁ、人気嬢となると一晩だけでそれなりに持ってかれるからな。それをタダで合えるとなると……」


と、シックスとグランストンに言われるまでも無く冒険者の野郎どもの集まり具合で良く解るわ。

あわよくばタダで抱こうとしやがってよ。


「なんでこういう時だけ一致団結するんだよ、お前等はよ。金の話もせず、一も二もなく事情話した瞬間に盛り上がりやがって」

「そりゃアンタには言い難いが……ここの嬢ちゃんらに世話になってない男の方が珍しいからな」

「マジかよ、シックス。おまえもなの? 女なんて入れ食いだと思ってたよ」


「いや、実はそんなに経験がなくてな。……逆にその手の女しか抱いたことがない。イマイチ男女の恋愛というのが解らん」

「そいつは職業病じゃない? 殺し屋なんてやってるから感情移入出来なくなってるとか……」

「かもな。で、着いたぞ」



シックスとグランストン達の仲間たち、それにアステリアと一緒に辿り着いたのは秘密の高級娼館だった。

知る人ぞ、知る場所らしい。


一見は貴族の別邸風の佇まい。

ヴェスタの街並みに馴染んだ屋敷。一見さんお断り、金持ちの貴族だとか商人御用達って一目見てまる解りの一般人は近寄りがたい場所……


向かいの建物には不貞な輩が現れないかと見張りが常駐してるの。不用意に近づこうものならゴロツキの皆さんが現れて、何処かに連れて行かれるって寸法だよね。

良くて小突かれ悪けりゃ冷たいむくろとなって路地裏に捨てられるとか容赦ない感じにね。


「流石にこの中に突っ込む馬鹿はうちの連中でも居ないか」

「不用意に手を出して、何が出てくるか解らないからな。オレも娼館だ、という事は知って居ても入り込んだことはない。……曰く付きの綺麗どころが居るらしい、までが知る所だ」


チラッ、とわたしは背後の建物からの視線に眼を向ける。さすがに生命いのちは惜しいのか、イチャモンを付けて来ない。

難癖付けに来たのはコチラだもの、良く解ってらっしゃる。


「曰く付き、ね……まぁそいつは見てのお楽しみかな。でもこんな辺境の街にこんな場所があるなんて、可怪おかしくない? 普通はもっと大都市に有るものでしょう?」

「……幾つか予想は出来るんだが答えが眼の前だからな……で、誰が残る?」


「はい。じゃあ私が――」

「な、訳ないじゃないアステリア。当然、突入よ。シックスのチームが後詰め。グランストンのチームが周辺警戒。良し、じゃあ突入――」

「いや、待ってくれよぉ。置いて行くとか後生だからやめてくれよぉ」

と泣き言入れる半妖精ハーフリングの盗賊ダットン。おまえ、お調子乗りだからなぁ……


「ダットン。場合によっては口が裂けたらあの世行きかも知れ無いんだよぉ? そんなに下半身に素直な訳?」

「好奇心は猫を殺すって知ってるよぉ。でも、ほらこんなチャンス滅多に無いんだよ。お貴族さまの秘密の花園を荒らすチャンスなんてさ。頼むからオイラも連れて行ってくれよぉ」


「おまえ、良いけど場合によっては秘密厳守よ。降りかかる災難に付いては有る程度は自己責任だぞ。ネコババもすんなよ」

「さっすがアイギスさん、話が解るぅ」

「私の話は聞いてくれないんですけどねぇ……」

「良い男が居たらくれてやるよ、アステリアぁ」


「さっすがアイギスさん、話が解るぅ。って乗って良いけど期待できるんですかねぇ……」

「ま、グダグダ言う前に入ってみましょう」


そしてわたしはいつもの紅い盾を取り出して――敷居の門扉をその盾をブチ込んで吹っ飛ばす。けたたましく鳴る〈警報アラーム〉の魔法。


「おら、行くぞ野郎ども。女の子が居たら、おまえらの優しさを見せ付けてやれ。ゴーゴーゴー!」

「そんな気張って仕事する連中じゃないんだがな」


おっと人選を誤っちまったかな。シックスの仲間うちって殺し屋でも元、暗殺者稼業だから常に冷静沈着な奴らなんよ。でも、おまえら、金の話せずに来たって事は気になってたんじゃないのかよ。

まったくコレだから野郎どもは。単純だよね。





そして順調に秘密の花園を踏み荒らす、とは行かなかった。まず出迎えたのは悪魔をかたどった石像、ガーゴイルよ。

わざわざ魔法生物なんて屋敷の門番代わりに配置してんのよ。期待に胸が高鳴るわ。

でも……先行したシックス、斥候部隊がそのガーゴイルどもを避けやがる。ダットンの半妖精野郎が屋敷の門を手早く明け放ち、すり抜ける用に屋敷の中へ。


「って、お前ら、仕事しろや。なんで荒事が女の子のわたしなんだよ」

「明確過ぎる役割分担じゃ無いですかね、じゃ、よろしくお願いしまーす」


屋敷に逃げ込まれたガーゴイルどもが今度はわたしを標的にするの。屋敷の中の人間を襲わないよう設定されてるんだろうね、それを一瞬で見破る元暗殺者と盗賊どもの抜け目の無さよ。


仕方無いのでまず最初に鉤爪かぎづめ振りかぶって襲って来たガーゴイルを盾でやんわりアステリアの方向に吹っ飛ばしたわ。


「おらよ」

「ちょ。――うりゃ!」


勢い良く跳んで来たガーゴイルを拳の一撃で粉砕するアステリア。女の細腕一本で普通はできる芸当じゃないよ。熟練の冒険者でもガーゴイルを相手にするのは腕前が問われるくらいなんだよ。


「ほい、次」

「って、その盾の一撃で倒せるでしょう、が!」


今度は抗議の台詞せりふの最後に生足蹴りつけてガーゴイルを粉微塵にする黒髪の美人。


本当に魔女か? 魔法より手足を先に出してんじゃん。普通は魔法攻撃、次いで近接戦闘が定石だと思うんだよね。


そこで今度は2体同時に襲って来たガーゴイルをわたしは避けて、まとめて盾を振って吹っ飛ばしてやんの。


「シールドばぁっしゅ〜」

「嫌がらせやめてくださいよ。〈魔法障壁マジックシールド〉」

「そこは華麗に体術で対処しなさいよ。後は魔法とかさぁ。魔法障壁で止めるとか芸なさ過ぎじゃん」


「動き回ったら服汚れますし、こんな街中でヘタな魔法使えないでしょう?」

「理解した。やっぱり魔法の出力調整が苦手なんでしょ? 威力最小とかしても大威力になるのよね」

「ぐぬぅ、バレてしまった。仕方ないでしょ――〈星幽短剣アストラル・ダガー〉」


ダガー、とか言いながら精神世界面で作りあげた魔法の短剣の長さが長剣サイズなのよ。

しかも光輝いて聖剣もかくやという魔力が込められてる。そして、現実世界に実体化する程よ。

で、伸びた〈星幽短剣アストラル・ダガー〉の剣身で2体のガーゴイルを片手で軽く振って一刀両断すんの。


「ま、でも、これくらいはできますよ?」

「なんで見直しなさい、って気取ってんの? 力押しじゃん。威力の制御は出来てないじゃん。本来は精神属性の短剣飛ばす魔法じゃん。しかも結局、物理的に倒してるじゃんよ」


聖遺物レリック級の魔法剣作れるんですから、むしろそこを褒めてくださいよ」

「そうじゃない感があるんだけど……。――ってここでグダ付くのは後にするか」


「きゃあぁぁ――」って女の子達の悲鳴が屋敷の中から聴こえて来たのよ。優しく、つったのにシックスらが手間取ってんのよ……少しばかりアクシデントが過ぎるな。


「ラッキースケベじゃなけりゃ、抜かったな。ここはわたしの格好良さを見せ付けてキャッキャッ言われる時、行くっきゃない!」

「……好色って言われません? って、ちょ!」


バシッとアステリアの手を掴んで一緒に向かったわ。わたしだけチヤホヤされて後で告げ口されると恋人たちに立つ瀬がない。


その時はアステリアも巻き込むことによって言い訳すんの、途中で罠とかあったらコイツを囮にしたりと、この妖精騎士アイギスに抜かりはない。


わたしはトップスピードでアステリアを引きづるように現場に向かった。





「ふぇっふぇっふぇ。ここに乗り込んで来るとは運の尽きだねぇ。お大臣御用達のこの場所に手練れが居ないとでも思ったのかい?」


なんか屋敷を突き進んだらシックスらが老婆と相対してる場面に出くわしたんだけど……

妖魔だとか呼びだされてて、なかなかに窮地ピンチじゃん。

そして盗賊のダットンが真っ先にわたし達に気づくの。


「た、助かった! アイギスさん、こっちだ」

「おいおい、トンデモ無いのが出て来てんな。あの婆さん、錬金術士ギルドのばあちゃんとどっこいの使い手じゃねぇか」


しかも悪魔……多種多様なヤツらが居るからまとめて妖魔フィーンドって呼ばれる異界の魔物ども、秩序に敷かず、混沌と呼ばれるほどには狂気的でもない……がそれぞれの好みの悪虐を行う危険な生命体が広い屋敷のエントランスに一杯よ。


てか、裏口から突入したのね、今気づいたわ。


「こんな所に妖魔術師ソーサラーが籠ってるとは思わなかったんでな、抜かっちまったよ」

邪悪な目玉イービルアイの上位種、石化の視線でお馴染みの蛇触の目玉ゴルゴーンアイね。悪植鬼苗プラトーンイービルまで居るな。……魚触人魔アボーンレスまで居るのかよ」


ゴルゴーンアイは説明不要の目玉に蛇が生えたヤツ。プラトーンイービルは触手植物が悪魔化したヤツ……


そして厄介なのがクトゥルフ神話系の妖魔アボーンレス。

見た目は魚で触手を四本持つんだけどその触手を鞭みたいにして、やたらめったら攻撃して来る。しかもヌルヌルの液塗れにして来る、嫌すぎる相手よ。肌を水膨れにする最悪のヌルヌルだしな。


で……召喚主の人間辞めてるようなイカれた目付きの老婆。

明らかに魂を対価に契約してるのよ。服装は高貴な人のそれだけど、表情がもう狂人のそれなんだもん。


「アステリアぁ。お仲間が居るよ。魔女同士ご挨拶したらどうよ?」

「魔女は魔女でも私は白い方なんですよね。あそこまでドス黒いと、会話できてもまともに意思疎通できるかわかりませんって」


「同感……良く今までこの街に潜り込めてたな」

「ふぇふぇふぇ。裏口は有るものさね、異界との繋がりを霊脈に紛れ込ませれば、そうは気づかれないからねえ。引き上げ時だと思ってたけど、なかなか上物が来るから今日は神さまに感謝の祈りを捧げないとねぇ……」


と、もうほぼ悪魔の老婆が年甲斐もなくシックス含めわたし達を物色すんの。

色情抱いてけてんのかな? わたしやアステリアはないでしょう、おまえより強いよ。


「婆さん、ちょっと作戦会議するから待っててね。――で、どっちが殺る? 瞬殺決めて即、星幽界送りにしないとヤバそうだけど自信ある?」

「……やっぱりそうなりますよね。速さならアイギスさんのが上ですからあのお婆さんは任せますよ。……って、事は私がアボーンレスかあ。イヤだなぁ」


「じゃあ、お前ら残りな。――婆さん待っててくれてありがとうね。良い子にしてくれたから苦しませずにあの世に送ってあげるよ。……ちなみにこの屋敷になんか仕掛けてない?」

「ひゃっひゃっひゃっ。もう異界とのゲートを繋いだからやって来るよぉ、古より潜む太古の"魔"が。遅かったねぇ逃げらんないよぉぉぉ」


マジかよ、と目線を送ったらアステリアがコクりと頷いたわ。

「いま、やられました。時間をかけすぎましたね……」


クソっ、本当にマッハで仕事しやがる。作戦会議中に良い子にしてねぇ。

判断遅かったかも、こういう歳食ってるイカれた系って下手へたに時間食うと厄介ごとが加速するって経験上わかってたんだけどね。



「婆さんには負けるよ――」

技能スキル、〈幻想妖精〉始動。


質量を無くした光速移動で突っ込むの。

そのまま婆さんに体当たりして生きたまま霊体ごと粉砕して星幽界に還らせる。

殺したら呪われるだとか、自身の"死"を発動条件にする魔法だとかがこの世界にはあるの。


なら、"死"を認識させる前に消滅させれば良いという究極の早業よ。時間単位の最小値、プランク時間で魂を塵にすればそういった魔法や技能スキルは発動しないの。コレが真の秒殺よ。


そして婆さんを殺って誇るでも無くわたしは慌てて屋敷を駆けずり回る。他のヤツらとの戦闘なんぞにかまけてる時間はないよぉ。

隠された異界とのゲートを見つけないとこの屋敷が妖魔どもで溢れることになるんだもん。


急げわたし! 数が来ると女の子達がヤバい。

無尽蔵にやって来る妖魔相手にいくらわたしでも嬢ちゃん達を守りきれんぞ。


そして妖精騎士さん本気のダッシュで出会いがしらの妖魔どもを瞬殺しつつ、屋敷を隈無く探し回ったのだった。



……ちなみに入口の場所は物理的には到達できない地下だったよ。クソがっ。再発動可能になった〈幻想妖精〉で行って潰したわ。



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