第三十四話 妖精騎士アイギスさんと至尊の聖女にして魔女さまとの男漁りの冒険(2)
早速、アステリアと冒険者ギルドに入ると、午前中だと言うのに冒険者の連中が集まってたの。
なにがあったのか酒場にもなってる冒険者ギルドに、野郎どもが所狭しと各々のテーブルの席に着いてる。椅子が足りなくて壁に保たれ掛かってるヤツも居たよ。
「おっと、アステリア。今日は錚々たる面々が集まってるじゃん。うちのギルドのオールスターズだよ」
「…………これ嵌めてません? 悪党の掃き溜めとしか思えない雰囲気なんですがね」
黒髪残念美人が眉根を顰めた。
なにせ海賊や傭兵、或いは殺し屋だとかが仕事あがりに一杯やってるみたいな場になってるの。
その様子はまさに悪党どものたまり場。悪党面したヤツらが邪悪な笑みを浮かべて楽しく談笑してる様子が伺えるの。
……嵌められたと思うのも無理ないな。女子が居れば楽しんでから売り飛ばすのが基本見たいなヤツしか居ねえ。
でも、コレでも一応は全員冒険者なんだよね。
但し、前職は勿論曰く付き。
脛に傷のないヤツなんて一人も居ない、全員がその筋のプロよ。ここに居る以上、何かにしくじっちまってるがな。
「嵌めてるなんてトンデモない。今居る面子がうちの冒険者ギルドの第一線張ってる熟練級以上の連中だよぉ。……普段どいつもこいつも忙しくて顔見せに来るのは稀だけど」
「で、どうして集まってるんです。まさか私の為に……?」
「それは自意識過剰過ぎ。でもわたしも知らないな。ギルマスが顔出せって煩いから今日来る予定ではあったんだけどね。――おい、何かあったの?」
と、ギルドの入口を守るように傍の壁に持たれてた野郎に訊く。カチコミ入れて来る馬鹿が居たら速攻始末する為か、気配を消してたヤツに。
「年一のギルドの集まりって聞いてるが? お宅が集めた訳じゃないのか」
「あれ? それっていつもは夏の終わりくらいにやらない? 聞いてないんだけど」
「……ああ、ならギルマスが気を利かせたんだな。誰かさんのせいで色々と仕切りが変わっちまってるからな。揉め事が増えないうちにやって置こうって腹づもりじゃないか?」
「おいおい、聞いてねぇぞギルマスぅ」
「まぁ、そう言いなさんな。タイミングって物が有るさ。今日の面子を集めるのはそれこそ骨が折れる。日が良かったんだろう」
と、元暗殺者シックスからの返答でこのアイギス、状況を理解した。
このシルヴェスター地方の有力冒険者たちで顔合わせする日だったってよ。……国として独立したばかりだから厄介ごととかも有るのかもね。
「アステリア。丁度良かったじゃない、選び放題よ。まさかここまで雁首揃えてるとは思わなかったよ、なかなか運命的じゃん」
「何が運命的ですか、何が。年齢層高めじゃないですか、しかも曰く付きって一目で解る人達ばかり……人殺してない人が居ない感じなんですけど?」
「この街の冒険者で駆け出し以外にそんな素人居る訳ないじゃない。……殺しどころか詐欺、強盗、強姦、と基本、人としてやっちゃいけない何かしらの経験を網羅してる連中しか居ないよ」
「……男紹介するって何かの冗談ですよねー。恋人になる以前に信頼関係築くのが難しそうなんですけど。思いっきり人としてどうかと思う犯罪者ばかりじゃないですか」
「いや、そこはほら、反省してる連中ばかりだから。一応、冒険者としてはやって行けてるんだし道徳的には一線は越えない範囲のヤツらよ」
流石に現役で悪行重ねてたらギルドに名を連ねさせないわ。
過去は過去と悔い改めることができるヤツだけ居るの。そうでなきゃ、始末するのが掟だからね。もちろん、やらかしたらブッ殺すよ。追って行って始末するわ。
「しかもここに居るのは色々とやり尽くしたヤツらってね。ほら、例えばあの髭面で取り巻きに囲まれてるダンディな親父が居るでしょ、ポーカーしてるヤツ」
「…………顔に傷がある強面さんですかね。まぁ顔立ちは中々ナイスな方ですが……」
「あのおっさんがここじゃ一番有名なんだけど――」
で、アステリアにこの冒険者ギルド、トップオブクズの一人の経歴を紹介する。やった事の大きさに関しては断トツよ。
若い頃に傭兵でのし上がった男なんだけどね。
勿論、傭兵なんだから略奪ヒャッハーして金奪って村娘とか強姦してさ。そりゃやりたい放題だったの。現役で出会ってたらブッ殺してるな。
そして腕前はあるわ、部下の面倒見は良いわで、目端も利いてね金を儲けて生き残ることに長けてたらいつの間にか自分で傭兵団を取り仕切るようになったの。
でも、傭兵団なんて余程の兵揃いじゃないとずっとは儲けられないのよ。いずれはどっかの戦場で使い捨てられて野垂れ死ぬのが関の山。
で、あのダンディな親父――若い頃は頭が良い方にキレてたアイツは一つ所に落ち着いてそこで縄張り作って落ち着こうって思った訳よ。
その手段が手っ取り早く何処かの街のゴロツキどもとその上役の犯罪組織のヤツらをブチ殺して奪うことだったの。現役の傭兵団だったんだから街のゴロツキ程度には負けないしね。
「で、首尾よく縄張り奪って後は徐々に組織を拡大して行ったの。昔はベイグラム帝国でそれなりに名を聞くくらい大きかったらしいよ。わたしも耳にした事あるし」
「……大物じゃないですか。その方がどうしてこんな辺境の冒険者ギルドに? やっぱり縄張り争いだとか組織内の下剋上とかで都落ちしたんですか?」
「その理由があのおっさんがクズのクズたる所以だよぉ。一筋縄じゃいかないんだから、ここの連中」
何せあのダンディな強面は頭が良い。
裏組織を取り仕切っても、組織を拡大して行かなきゃ自分たちが首を絞められる事を解ってたの。
何せ元は傭兵団で権力者の背景が居ない連中よ。繋がりを作っても信用できるものでもないの、裏稼業も権力者との繋がりが弱ければ簡単に組織を乗っ取られたり、良い様に使い捨てられたりするらしいからね。
で、それが解ってたあの親父が何したのかというと
……
「普通の悪党だったら手下にそのまま悪さやらせてさ、上に媚びへつらって甘い汁吸って生き残ろうとするじゃない? 昔から付いて来た手下も居るんだし。でも……あの親父」
「でも?」
「その組織をね、売り払ったのよ。反対しそうな手下を皆殺しにしてよ。本人が言うにはある時、やってる事が傭兵の時と変わらねぇと気付いたから、って言ってたけど絶対狙ってやってたと思うんだよね」
やっぱり犯罪組織のボスとなると生命狙われたり苦労が多いらしいのよ、割に合わないってね。
で、本人は止むに止まれずって言ってたけど……
「なんです……その、起業して大きくした会社売るみたいな話は……」
「ああ、まさにそれ。それを今まで汗水一緒に流して労苦を共に分かち合った社員、仲間を裏切ってやったんだからクズだよねー。で、どう? この起業家精神溢れる親父は? 結局、ここでも似たような事やってるよ」
「紹介要りませんよぉ。教国でも似たような人居ますし声掛けられた事も有るんですから……しかもこっちはサクセスストーリーが酷すぎる」
「そうだよねー。売り払った相手から殺し屋送られて来る親父だからね。その点しくじってるのが欠点かな」
反対しそうなの皆殺しにしたと言っても、買い取っとたらそのまま組織まるごと縄張りが簡単に手に入る訳じゃなかったらしいのよね。で、上手く行かなくて売り払い元から恨まれてるらしいよ。
絶対、口車に乗せてたんだよね。仕事ぶり見てたら解るもん
「でも懐の大きさに関してはなかなかだよ? 人が付いて来るのは解るわ。うちの冒険者ギルドじゃわたしに次いで顔役の一人だもの。優しくしてくれるかもよ?」
「その優しさが信用できませんよね……こう、組織の人だと計算とか打算で動きそうですし。損益計算できる人はイマイチなんですよ。他には居ないんですか?」
「他にも居るよぉ。見てよ、この選り取り見取りって冒険者ギルドの面子を。気になったヤツ居たら紹介するけど?」
ここに居る冒険者ギルドのヤツらは若くても三十代だけど顔付きがもう違うんだよね。
他所の冒険者でもそれなりに戦士、戦闘に生きる面構えしてるのは普通だけど、ここに居るのは、それにプラスして、しくじったりして人生経験も重ねてるのよ。
大概、追われてたりしてるからここで生き残ってる連中は生半可じゃない。
もう面と目付きに生きた経験が現れてるの。しかも今日居る連中はその精髄よ。
クズなの挙げて行くと、人を騙しに騙して金を巻き上げ、本職の詐欺し顔負けするくらいに生きて来た元商人。やり過ぎて辺境に流れて来た典型的なヤツだけど、顔を売るほどだから筋金入りよ。
詐欺師で知れ渡ってるって相当じゃない? しかも知れ渡ってるのにまだ詐欺れんの、若手の冒険者を食い物にしてるクズよ。
元、盗賊なんだけど何かしらに金が必要になって仲間を裏切り、稼いだ金を掠め取って流れ着いた盗賊の半妖精。
盗賊も人として終わってるけど、その身内すら裏切ってるからね。そりゃ廃業して冒険者になるしかないわ。手癖の悪さは未だに直らないクズなんだけど、元盗賊のヤツらは大体似たようなクズだから見逃されてるな。
元、賊上がりで大陸各地で流れに流れながら賊含む裏稼業で仕事して失敗を繰り返し、遂には生き場を失い冒険者としてまっとうに仕事するしかなくなった腕の立つクズ。強盗、山賊、海賊、果ては翼人族と組んで空賊までやった賊エキスパートよ。
良く今まで生きてたな、と逆に感心するくらいのクズなの。
でもコイツはちょっと頭が弱いので同情の余地がある。今までやって来た所業はクズなんだけど。そういう生き方しか知らなかった悲しきモンスターよ。今は多少まっとうになってる。
他に、元々はさる高貴な貴族の三男坊なんだけど、お家争いに巻き込まれて追放。
その追放先でも浮き名を鳴らして貴族の社交界で花形だったんだけど、やんごとない貴族の奥方を相手しまくり、しくじって逃げ出してきた、女の紐付きさせたら右に出る者は居ない魔法剣士のクズ。でも腕はそこそこ立つのよね。
元奴隷商で借金の取り立て屋という冒険者うちでも異色の経歴持ち。
借金のかたに貴族だろうと貧民だろうと老若男女等しく奴隷落ちさせて来たんだけど、恨み辛みに不幸な事故が重なり、逃げ落ちざるを得なかった自業自得の典型例とかも居る。
奴隷を如何に高く売って懐を温めるかが勝負所らしいけど、やり過ぎちゃって復讐されたの。
クソ真面目過ぎなクズよ。お金を増やす事にしか達成感を得られないクズだし。
「と、有名どころで知られてるのはそんな連中かな。他の連中も負けず劣らずよ。ま、冒険者は過去の詮索はしないってのが暗黙の掟だから詳しい事は解らないのが多いけどね。他も似たり寄ったりかな」
「冒険者やれてるのが奇跡的な人たちばかりじゃないですか。私に紹介できる人、居ます?」
「いや、クズ揃いだけどあそこのダウスとかは結構マトモだよ。つい、気に入らないヤツぶち殺した系だし」
「……雰囲気は悪く無い人ですけど。他と比べてですよね? その落差で騙して付き合わせようとしてません?」
……鋭い女だよね、アステリア。
練達級の名うての剣士ダウスだとか元暗殺者のシックスだとかクズでも大分マシなの。顔もそこそこのイケメンなのよ。
アイギスさん的にはオススメなのよね。ただ、理想高すぎのアステリアにして見ればイマイチの可能性も捨てきれないからさぁ。
まずクズどもを紹介してまっとうに見せ掛ける作戦だったのに……。
「アステリアぁ。グダグダ言うと付き合ってくれる男が居なくなるよ? 向こうにも選ぶ権利ってのが有るんだからさぁ」
「なんで私が悪いみたい……ここから選べって言うのが無茶ですって。失敗人生やり直そうとしてる人の縮図みたいな人たちじゃないですか。……てか、冒険者とは?」
「まさか、未知を冒険したりするから冒険者とか思ってたんじゃないでしょうね? 基本は魔物退治の専門家、他は腕前通用するなら何でもござれってね。冒険者ギルド所属の冒険者なんて何でも屋だよ、危険請負人よ。未知を求める探索冒険者や浪漫求める冒険野郎は別の職種だよ?」
聖魔帝国の冒険者ギルドだとそういう人達も居るらしいけど、この大陸の冒険者はほぼ危険請負人だって。
偶に探索だとか冒険に浪漫を求めるくらいでそっちで生計立てれないんだから。
「……夢もへったくれも有りませんよ。そんな経歴でも仕事に生かせればアリだとか。完全にその筋の仕事人の方ですよね、この人たちって」
「普通はそうなの。危険を請け負うという意味では冒険はしてるじゃん……現実は厳しいのよ。夢追い人なんてそうそう居ないって」
「ま、まぁ憧れてた訳じゃ有りませんから構いませんが。……」
って言いながら明らかに幻滅した、って表情浮かべるのよねアステリア。いや、解んなくはないんだけど……
わたしも初めてこの世界で冒険者しだした頃はそう思ってたのよ。しかし、現実は世知辛いものなのよ。夢だけじゃ食っていけないの。
「でも夢見がちなアステリアには丁度良いかな、って思ってたんだけど……」
「…………いや、余計なお世話感が半端ないんですよ。そんな現実的なタイプ求めてませんって。なにより程があるでしょう……?」
どいつもこいつもこの世の、人間社会の地獄を見て来た連中だよぉ。軟な所なんて一切ない、タフ過ぎる連中よ。ご希望には沿ってるじゃん。
「なに言ってんのこれぐらいが丁度良いんだよ、アステリアにはさぁ。バランス取れるっしょ」
「そういうの要りません〜。現実なら散々見てますって。……無駄に歳食ってる訳じゃないので。……はぁ」
って溜息付きながら一応は物色するんだけど、この人。ってのが居ないって様子なの。
ふむ……このオールスターズでも撃沈とは。
まぁ……知ってたけど。わたしでもこの中からは選ばないからね。癖が大き過ぎるんよね。伴侶にするにはリスク多すぎだし。
幸せになる自信がないわ。させる気は毛頭起きないし……やはり別口を当たるか、と思ってたら。
「アイギスさん。なんか呼ばれてますけど?」
言われて見てみるとテーブルの席に着いてる猫人族の知り合いが来いって手振ってたの。
おっと、野郎にばかり注目して女の子を忘れてたよ。
「アステリア。気に入られたっぽいよ? 行こうか」
「……?」
訝しげに付いて来る黒髪残念美人。
本当に女の子には興味ないようだね、紹介されるとか思わないんだもの。ちなみに相手は綺麗どころさんだよ。
片目に眼帯してる女の子で、強者って感じの人。腕前も練達級の連中では総合力でトップよ。
「アイギス……まさか男漁りか? さっきから聞かせてもらってたが……」
「わたしじゃなくて、そこの聖女さまがだよ。で、ギレット。どうよ? 女の子も良いって解らせてくれる?」
「いえ、そっちでは無いのでご遠慮しますねぇ。敬虔なロクス教徒ですので、信仰上の理由で同性愛はちょっと……」
「嘘つけ。聖女とか呼ばれてるだけで聖職者じゃないじゃん。なんちゃってロクス教徒だしよぉ。神に祈ってるとこ見た事ないぞ」
「建前ですぅ。相手に失礼がないよう無難な断り方してるんですよ」
「面白い女だな。別に男漁りが必要とも思えんが……ここの男どもとは釣り合いが取れんだろう? 並大抵ではあるまい」
「そうなんだよ。ギレット。真龍すらブッ殺せる女が男欲しいって何かの冗談言ってんの、とそう思うでしょ?」
「真龍ね。……それくらいの腕は有るか。私でも抱かれるのはともかく抱くには役不足だな……」
と、ギレットが猫耳を動かして、片目を遠い所を見るようにぼんやりさせるの。剛毅な人なんだけどアステリアが相手だと手出せないのかな。
「私が女猫妖精族なら喜んで抱かれに行くのだがな……。アイギス、フリュドラ族に知り合いは居ないのか?」
「そうか、その手があったのか」
「有りませんよ! 何がその手ですか。イヤな予感しかしないじゃないですか」
「いや、番を求めてるんだろう? だったら連中はどうかとな。子供が欲しいのでは?」
「さすがギレット……男女両方とも経験有るよね、子供も居るし。それだよぉ……花園城塞に連絡取って見るよ。いや、この後行こうか?」
「いや、だから男。そっちに興味ないって言ってるでしょうに」
アステリアの言い草に、ギレットがわたしを見るの。
ギレットは猫人族の戦士よ。無骨朴訥で、猫人族にしては結構珍しいタイプの人。考え方が古風なのよね。
「これは困ったヤツだな。男か……もはや黒龍王の元に赴くしかないのではないか? アイギス、ハイエルフの男で勧めれる者は居ないのか」
「ハイエルフの男に知り合い居ないんだよ。でも、そうだよね、もう、釣り合い取るなら人外になるよねアステリア」
「どうして強さ基準になるんですかね。こう、精神的な大らかさだとかそういうので良いんですよ」
「で、あれば性別に囚われる必要も有るまい? それに心の安寧を求めるなら強いヤツに限るぞ。真の強者なら鍛えられた鋼のように盤石な心身の持ち主と相場が決まってるからな」
「強い人それなりに知ってますが万人が落ち着いた性格の人じゃないんですがねぇ……」
「単純に戦闘力が高いのと、強さを勘違いしてるな、それは。健全な肉体には健全な魂が宿ると言うだろう?」
「ギレット。このアイギス、理解した。つまり強いヤツ探したらアステリアの理想の相手が見つかる確率が高いってことね」
「抱かれたいと言うのであればな。抱きたい場合はそれこそ好みだが?」
「アステリアってその辺りがお子ちゃまなの。経験が圧倒的に足りないのよ。まず、そこからなんだよねぇ……はぁ〜」
と今度はわたしが溜息付く番よ。隣の残念美人は、不服、という表情を苦虫を噛み潰す一歩手前の顔して浮かべてたわ。
「……わたしより強いヤツじゃないとマトモには付き合えないって結論おかしく有りませんかね? 強い女性の人と一般人男性って組み合わせのカップルを知ってますよ?」
「アステリア。その強い女性は真龍を余裕で殴り殺せるんだろうな? 核攻撃食らって生きてられる? 尺度を間違えるなよ」
「わ、私を化け物見たいに……私はちょっと強いだけの一般人ですぅ。極普通の魔女ですぅ」
ギレットとわたしがやれやれって二人顔を見合わせて呆れるの。おまえがマジ切れしただけで一般人男性は心臓発作で死ぬんだよ。
だったら最低限紹介するのは強い男でしょ。
恋愛するにしても一般人だと相手は生命掛けになるんだよ。ペット枠なら可愛いがりだから、まだその一線が緩くなるけどさぁ。
「わたしと違ってよぉ。完全に女の子に誠実って訳じゃないんだから。手違いでも紹介した男殺られる訳にも行かないんだよね……」
「ぐぬぬぬ!」
アステリアが理解に及んだのか拳を握り締めて、お怒りを表明する。ギレットが軽く両手を挙げて敵意が無いと反応したよ。
「まぁ、これではな。軽く冗談も言えん。余りに強すぎると凡百なら気付かないし、それなりなら怖じ気づく。なかなかに難儀だな、アイギス?」
「まったく苦労するよね。幸先が思いやられるよぉ。それすら解ってないんだから」
神々すらブン殴る女なんて人間辞めてるって。
で、その女が男をご所望だったら"普通"は相応の相手になるよ? 若しくはペット枠的な?
そもそも怪獣なのに対等なパートナーが欲しい、人間で、とか無茶ぶりだよねー。大きさは同じでも、人間と蟻を恋人と付き合わせろ、とかそういう事言われてるんだから。
しかもその自覚が無いってのが致命的なのよね。
「はっきり言うね……アステリア。神の領域に居る女が自分を精神的にも包み込んでくれるヤツ探すとか難易度高すぎなのよ……ね。おまえ、自分が太古の真龍より強い自覚有るの?」
「なっ!?」
「ギレットぉ。この女はダメだ。絶対君主、超越神たるこの神祖の妖精王アイギスさんすら手に負えるか解んねぇ……」
「やはり神々の領域の話であったか……。神話に違わぬ暴虐非道な話にならぬよう祈るばかりだな」
「なぬぅ! それは――」
そしてアステリアが何かしら反論する前に冒険者ギルドの長、ギルドマスターが出て来て挨拶しはじめたから、話が途中でぶった切られる。
「あ〜聞いてくれ。おら騒ぐんじゃねぇ! そこ。……じゃあ、始めるからな」
そしてそのままヴェスタの街、冒険者ギルドの年一定例総会が急遽始まったのだった。




