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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第4章 愛を紡ぎ捧げるアドヴェンチャラーズ
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第三十四話 妖精騎士アイギスさんと至尊の聖女にして魔女さまとの男漁りの冒険(1)




このアイギスさんが大人になった次の日から、さらにイチャイチャが加速。我が家は愛の巣となった。


とにかく子供たちが家に居ない時は"計画的"に"慎重"にイチャイチャを超えラブラブしだしたの。

みんな愛し合うから、それこそわたしが居なくても恋人たちで組み合わせは幾通りもあるもの。


そして家の増築工事も終わって、アステリアの隣の部屋は愛を密かに囁く秘密の部屋になったの。しっかり防音済みよ、隣の壁だけ薄いけどそれは仕方無いよね。



「何が仕方ないですか、何が。明らかに狙ってやってるでしょう。捕虜虐待ですよ、精神的な衛生環境の改善を要求します」


と、遂に真顔でアステリアに詰め寄られたわ。

もう少し耐えれるかと思ったのにたった5日で音をあげるなんて……根性無いよね。


「せめて1週間は耐え難き耐え、忍び難きを忍ぶと思ってたわ。……捕虜なんだからもう少し身の程を弁えよ」

「ある種の虐待じゃないですか。もう我慢の限界ですよ、壁に風穴空けましたからね。次は増築したおうちを半壊させますよ」


「なに言ってんの? 別に混ざってくれても良いんだよ? その無駄に育った身体を持て余してんのよね? ほらぁ、アイギスさんと良いことする?」


って普段着の首元、襟をずらして見せ付けたわ。わたしもそこそこなモン持ってるよ、眼の前の聖女さまには負けるけどさぁ。



「この淫売、好色! それでも本当に妖精族の神さまなんですかね? 全妖精族ががっかりしますよ、バラしますよ。捕虜の身から脱したら暴露本を書いてやる」


「舐めるなよ神祖の妖精王たる、このわたしを。女性関係が原因でほぼ確実に星幽界に旅立った私をな。もう娘のアイリも居るからそっち方面がやんごとないって歴史的にバレてんだよ。こんなの何も怖いものはないよね、幾らでも恥晒せるわ」


娘のようなアイリの母親、バーギアンにすら手を出した女よ。前の私、絶対色んな不祥事起こしてるに決まってんじゃん。アイリの事は公表済みだから隠し立てできないしよ、今更過ぎるわ。


「なんでそこで開き直れるんですか、あなたは……」

「このアイギス、脅迫には断固屈さぬ。」


ぷいっとご立腹して顔を背けるわ。

アイリが朝早くから勉強しに魔術師ギルドにお出かけしてシルフィちゃんとラブラブになってたのに……そりゃわたしの機嫌も悪くなるってものでしょう?


「人の色恋沙汰の邪魔してよぉ。自分の主張だけ通そうなんざそうはいかねぇぞぉ?」

「そんなに身勝手な主張ですかねぇ……。せめて私にもう少し気を遣ってくださいよぉ」



めっちゃ涙目で語る黒髪美人のアステリア。

えぇ、最初会った時の負けん気の強い聖女さまどこ行った。心が予想外に折れてる感じなんだけど。


「いや、そこは耐えるか吹っ切ってわたしの胸元に飛び込んで来るかの二択でしょ?」

「いや、普通吹っ切れませんし飛び込みませんよ。大の大人がですね、年端の離れた子供にですよ? それこそイエスロリータノータッチの教えに抵触するじゃないですか」


「誰がロリだ。もう一度言ってみろ。ブチキレるぞ」

「トランジスタグラマーにはグラマー部分が足りてませんしぃ」

「それだと色気のない、ただのチビじゃん。せめて可愛いとか持てはやしなよ。人を褒めることができない病気なの?」


この美少女エルフのアイギスさんを前にしてこの言い様よ。どんだけ面食いなんだよ。理想高すぎじゃないの? わたし、子供だってことを除けば超ハイスペ女子じゃん。



「なんでそんなに自信が有るんですかね? てか、わたし女の子が好きって訳じゃないんですってば。根本的にそこが勘違いしてるんですぅ」

「……? じゃあなんで人がイチャイチャしてんのにケチ付けてんの? 興味なかったらそこまで騒がないでしょ」


「そりゃ毎度、毎度、眼の前で甘々な青春みたいな事されたら来るものが有るんですって……。しかもそんな青春を過ごすことなく大人になってしまったら……」


と言いながら居間のテーブルに突っ伏すアステリア。


「もう駄目ぇ……あの頃に戻りたい。どうして恋人探そうとかしなかったのわたしは。全部、あの青春時代のせいですよぉ……いずれ素敵な人と出会うと信じて三百年は長すぎぃ……う、ぐ」


と、テーブルに突っ伏したまま泣き崩れ嗚咽を漏らすアステリア。本気泣きじゃん。

台所で昼食の仕込みをしてたシルフィちゃんが何事かとやって来たわ。



「あの……お話聞いてたんですがアステリアさんも相当参ってるようですし……」

「……修行が足りなすぎでしょ、アステリア。聖女とか呼ばれてる女がよ、こんな事くらいで……」


「みんなが勝手に呼ぶんですぅ。私は先祖が聖ロクスってだけの魔女なんですぅ。好き勝手にやってたのに、勝手に敬われて辛いんですぅ。おかげで良い男が見つけられない哀しい魔女なんですぅ」


どうしよう? って感じでシルフィちゃんと顔を見合わせるの。こんな弱気になるとか想定外よ。

別の意味で効きまくってるじゃん。


「アイギスさん、やっぱりその、隣の部屋でするのは……わたしも良く考えたら恥ずかしいですし」

「シルフィちゃん、甘えさせては駄目よ。思い出したの……愚痴だとか弱音吐くヤツの方が精神的に保つってね。まだ甘えよ、まだまだ限界は遠いって」


「……なんで人の限界試そうとするんですか。わたしが何したって言うんですか」

泣き落としが通じないと見て顔をあげる残念美人。


「このアイギスさんの神聖な戦場いくさばに乗り込んで来て討ち死にせずにアリーシャちゃんに泣きついた罪だよ。その苦しみをもって罪の清算とする、名裁きだよねー」


「酷い、酷過ぎる。ケルヌンノス戦とか手伝ってあげたのに」

「ただの労働力の徴用だよぉ。そっちは聖魔帝国に文句言いな。聞く耳持たないと思うけど」

「もう、良い加減マジで暴れますよ。女の子が泣いてるのに優しさがまったくないとか有り得ない!望み通り討ち死にしてやる」


おっと、恨み節を投げかけながら泣きっつらのアステリアが席から立ち上がったわ。なり振り構わないとはこのことよ。メンタル子供かな? アステリア。



「……正直殺る気が一切起きない。しょうがない。仕方ないから少しは妥協してあげましょう。但し、条件がある」

「条件……?」

「アステリア。このままだと確実にアスタロッテの罠に堕ちる……その点は自覚有るんでしょうね?」

「……ぐぬぅぅ」


「つまり他に相手見つけなきゃ確実にアスタロッテが落としに来る、その事くらい解ってんでしょう? 教国から助けに来る当てとかあんの? あの魔大公がそんな好き勝手させないと思うけど?」


「……解ってますが、相手って、簡単に見つけれる訳ないでしょう。居たらこんな事になってませんって」

「そりゃそうよね。だから、手順を踏むの、まずは好みのタイプよ。どういう男が良いかそれを探すの。別に女の子でも良いんだけど、まずはそれを明らかにしないと手の打ち用が無いからね」


「え……なんでそんな事するんです? わたしの為に良い人見つけてくれるんですか?」

「そうよ。アステリア……お前の理想の男を言ってみろ」

「……そうですねぇ。精神的にわたしを包み込んでくれる大らかな人、ですかね。タフな方が良いですね。わたしをどんな窮地からでも救ってくれるような」



……やはりというべきか、この女はダメだ。

百歩譲ってオスだとか、人間と云うカテゴリーではまず居ないでしょ、まず、おまえより強いヤツが居ねえよ。精神的にもな。


一見、精神的に弱そうに思えるけど柔軟さがある、しぶとさがアステリアにはあるの。芯を一本通した方が精神的には脆いし、本当に難物だよねこの聖女。

そりゃ魔神王とのお見合い話が裏で進むわ。該当者が世界で限られ過ぎてるもの。


「……かなり難しいけど仕方ない。可能な限りは要望に応えるか。ダメでも、具体的にどんなのが良いかも解るしね」

「マジですか。え、居るんですか? わたしの希望に沿うような男の人が。紹介されるなんて初めてですよ」


「…………見合い話とか教国でされなかったの?」

「聞いた話ですが、教国の盟主、聖皇家が居るのにわたしの血縁なりができるとですね、色々厄介ごとができるとかで……まぁ手出しできなかった的な……」

「なんて悲しい女……高嶺の花過ぎて、かな」

「う、ぅぅ」

「おい、泣きそうなつらすんな」


見つけられないおまえが悪い、と言う言葉は飲み込む。こういうのは巡り合いが有るからね。自己責任ばかりにはできないのよ。


「――で、良さそう男の人って何処に居るんですかね。アイギスさんのオススメですか?」

「……まぁ任せな。わたしの仕事して請け負ってやろう」


そう、わたしの本業は冒険者よ。冒険者って言ってもやる仕事は何でも屋だからね。

当然、色恋沙汰の相談も受けるの。

な〜にお代はアステリアをタダ働きさせる事で元は取ってる、アイギスさんはケチじゃない。


そして朝からアステリアを伴いヴェスタの街の男どもを見繕いに繰り出すのだった。

まぁ、チャレンジよ。おまえのダメさ加減を思い知らせてやるぜ。








春も真っ盛り、そろそろ初夏に突入しそうな気候のシルヴェスター公国公都ヴェスタの街。


ちなみに雨季って高原地帯のシルヴェスター地方だと何それって感じで聞いたことないんだよね。

冬にやたら雪積もるから強いてあげるならそれが雨季代わりなのかも。


世界地図に寄るとシルヴェスター公国は惑星的には赤道のちょい上くらいの位置らしいし。異世界の気候風土はイマイチ解らないんだよね。


けど、解らなくても街の中は春祭り気分で賑わってるの、シルヴェスターが独立した春先からずっとよ。

今ではヴェスタの街は出店でみせが大通りにずらりと並んで、人と馬車が所狭しと行き交う光景が日常となっていた。



「で、良い男は居る? アステリア」

「いや、いきなり街に出て男漁りするとか思わないじゃないですか」

「なに言ってんの、血眼ちまなこで探しなよ。根本的にそれが問題なんよ」

「……? それはどうして?」


大通りを二人して歩きながらこのアイギス、隣の残念な黒髪美人に呆れて見せる。もういきなり当所の目的を忘れてんだよ?


「アステリアぁ。おまえはよぉ、本当に男が欲しいの? 添い遂げてくれる伴侶がよぉ。こう、婚期を迎えて独り身で焦る女子の気持ちとか解らない訳?」


シルフィちゃんなんて14歳でもう焦ってたんだよ。だと言うのにアステリアは。


「なるほど……わたしに足りなかったものですかね」

「今っ! 足りてないの! なんだその腑抜けた気分は、さっきまでの泣きっつら何処どこ行ったの」


「むしろそんな現実を直視させるアイギスさんが悪いんですよ。古傷に塩塗り込んでおいて言うことじゃ有りませんよ」

「行き遅れに遅れて開き直ってんじゃない」

「まだ遅れてません〜。永遠に婚期ですぅ」


これだから寿命があるんだか解らない、不老種族はダメだよねぇ。永遠の若さを笠に着て、いつまでも良い人現れるまで持つ気でいやがる。


その人生経験の足りなさをアスタロッテに突かれてんのによ。……このままだと聖女とはとても言えない退廃の魔女が誕生するかもよ? 恋愛通り越して肉欲に溺れるやつ。経験ないと堕落するって聞くよ。

至尊の聖女を闇堕ちさせて、それはもう見る影もない姿にキャラ変させるとかあのアスタロッテなら考えてそうだよ。


「……まぁ、アスタロッテと結ばれたけりゃ好きにして良いけど? 魔大公を舐めるなよ、完全に外堀埋め尽くして来るからよ……埋め尽くされたからよ……」


……もはやこのアイギス、受け止めるしかないと覚悟してるんよ。わたしはヘタレじゃない。

尽くしてくれる系の女の子には弱いしね。


「……あの魔大公と一体どんな馴れめがあったんですか。正直、そこが解んないんですよ。熱愛ですし」

「このはわたしが居ないとダメな的な? 一目惚れじゃないけど直感的なヤツかな。向こうもそう思ってるんじゃない? アステリア。たぶん貴女も」


「それは恋愛には繋がりそうに思えないんですが……物凄くご遠慮したいですし」

「同感、物凄くご遠慮したいよね。でもなにが気に入られたのかこの有り様よ。もう恋人たちは全員寝取られてくっつくしかない状況よ」


何をどう理解したのか、うわぁ……って声に出さなくても解る顔を露骨にする黒髪残念美人。



「おい、わたしはおまえの近い将来の姿だぞ。良いんだぞ、このままベッドインしてもな」

「アイギスさんと違ってそんな覚悟決めれないんで、なんとしてもそんな未来は回避したいですねぇ……」

「それにはつまり好みの男を見つけるしか無いな。わたしも紐付きを相手にしようとは思わないのよ。つまり、お試しのペットでも極論良いの。おまえの相手をしてくれる男が居ればよ?」


「なるほど……その発想は有りませんでした。ペット……」

「本気で考えるんかい……まぁ恋愛観は人それぞれで良いけど。いや、若い身体を持て余して男飼う人も居るからね」


別にそれが悪いってわたしも言わないよ?

冒険者の野郎どもで娼館に入り浸るヤツ居るし、なんならゴールインするのも居るんだから。

女性の冒険者でも数は少ないけど偶に居るらしいって聞くし。



で……アステリアが悩んだ挙句トンデモ発言するの。一瞬耳を疑って思考停止して言葉が脳裡に入って来なかったわ。


「アイギスお義母さん……シャルさんとの結婚を前提にした交際を御許可願えませんかね?」


アイギス、やっと理解。そしてブチキレ。

「っざけんじゃねぇぞ! 今の話の流れで許可できるか! このアバズレ! ショタコン! アリーシャちゃんに言い付けるぞ、この潜在犯が!」

「……そんなに怒らなくても良いじゃないですか。冗談、冗談ですよ。ほら、あそこに美味しそうな串焼き売ってますよ――」


って、人のキレを余裕でスルーして黒髪残念美人が屋台に向かうの。

あのアマ、自由過ぎる。そんな奔放さが許されるのは少女と呼ばれる年齢の子だけの特権だよ。

未だ自分にチャンスがあると高を括ってんだから。危機感が足りねぇ危機感が。


で、わたしが向かうと店の親父に串焼き3本頼んでもう1本目を口に突っ込んでたわ。


「あ、あいぎふはん。お金」

「金ないのに奢らせようってか」

「いや、金貨だとかは有りますけど貨幣が違うじゃないですか。両替しますから貸してくださいよ」

「まったく調子良いな……親父、わたしにも1本。幾ら? 全部で」


「へい! 銀貨1枚に負けますぁ」

「商根逞し過ぎだろ。長蟲ワームの串焼き4本で銀貨1枚取るヤツ居るか。どんだけ物価上がってんだ、十本は買えるだろそれ」


「なに言ってんですかうちの長蟲ワーム焼きはタレが違いまさぁ、タレが。その分、値が張るのは仕方の無いっこってぇ。何なら一口食ってみちゃくだせぇ」

「……?」

って親父が言うから一口食って見たわ。



「……駄目だな、タレの脂味が良くねえ。安値の獣肉から取ってるだろ。こんなの舌馬鹿のそこの聖女ぐらいしか騙されねえぞ」

「舌馬鹿とか酷い……いや、でも食べれますよ? 結構ワイルドな味付けでしたが?」

「先進国のジャンクフード食ってりゃそうなるかもな。で、もう3本食ったんかい」


「いくら王さまでもそりゃ有りませんぜ。王侯貴族の食い物じゃありませんが、庶民にしてみりゃ立派な馳走なんですぜ」

「まぁ、ご馳走だってのは認めるよ? 角兎ホーンラビットだとか高原大鼠ハイランドマーモットとかだろ、この脂味? ジャンクの域を出てねぇな。せめて家畜を使ってから口上垂れろや」


食い下がる親父がぐうの値も出ないくらい当てられて唖然とするの。庶民派の神祖の妖精王さまを舐めるなよ? 食い物には煩いんよ、わたし。

で、近寄って来た身なりの良くない子供にまだ残ってる串焼きを渡す。

店の親父にも銀貨1枚出したわ。


「食えない事はないけどな。おら、後6本焼いてそこらのガキどもに渡してやれ」

「そりゃ有りませんぜ、十本も銀貨1枚ではおまんまの食い上げになります、勘弁してくだせぇ」


「おまえよ。わたしの事知らねえ訳ねぇだろ。この国の公女さまの伴侶、妖精族の王様だよ? 少しは権威ってヤツに頭下げろや」

「まったく負けちまいますぜ。……税を取られたと思って辛抱しますわ……。目敏いなぁガキども、ちっと待て」


近くで話聞いてた子供らが屋台に集まるの、6人以上居たけど分けるでしょ、と。わたし達はその場を離れた。





で、少し離れてから道すがらアステリアがさっきの子供のことを訊いて来るの。


「おいおい、まさか本当に子供を狙うの?」

「なに聞いてボケてんですかね。男漁りとは別口ですよ。さっきの子供に施してあげてたようですけど……」

「まぁ、捨てるのも勿体ないしね。王様だから気前良いとこも見せなきゃ……なに、それがどうしたの?」


「いや、優しい所は良いんですけどね。孤児だとか貧しい人に食い扶持与えるのが正しい王様だと思う訳ですよねー。魚を与えても食べ切るでしょうし」


「考えてないと思った? わたしが考える前に幼女がやってたわ。去年くらいから布教活動して孤児院とか作ってるの。食い扶持は仕事増えれば回るでしょ。そういう事はヴィリアさんがやってくれてんの」


「……なるほど。で……神祖の妖精王さまってなにしてるんです? まさか未だに冒険者やってるって訳じゃないですよね?」

「未だに冒険者やってるよ。荒事の解決がわたしの仕事だもの。玉座にふんぞり返る王さまだとか思った? 悪党ブッ殺したり魔物ブッ殺したりする正統派の王様だよ」

「時代が中世どころか古代じゃないですか……」


そりゃ魔法有り、魔物モンスター有りのファンタジーな世界だから王様が先陣切って戦う時代もあったのよ。


二千年前の古代魔法文明とか宇宙船まであったらしいけど、その昔もあるからね。

英雄の時代とか三、四万年前だとかはそれこそヒロイックファンタジーだったらしいよ。ちなみにアイリの母親、バーギアンが生きてた頃の神々の戦いが六万年前らしいからその後の話ね。


「それ言うなら"私"は十万年前よ。なにもおかしくないでしょ? 大体は暴力で解決できる時代じゃない?」

「その頃の事はなにも覚えてないって言ってませんでしたっけ?」


「三つ子の魂、百までってこの世界では言わない? 身体が、魂が血を求めんのよ。血湧き肉躍るってヤツよ。冒険をわたしは求めている」

「そりゃ〈鮮血妖精ブラッディエルフ〉だとか言われる訳ですよ。今の時代にそんなんで通用しますかね?」

「その二つ名はやめい。だから反省して妖精騎士としてやり直してんのよ。時代に合わせて〈妖精連盟〉だとか作ったでしょ? わたしは暴君じゃない、一組織の代表よ」


アステリアが胡散臭いって目で見やがる。実質、わたしが独裁者でもり妖精系の臣下がひざまずく、王制とあまり変わらない体制ってバレてるな。


「その代表が喧嘩っぱやくて色恋に目がないってスキャンダル満載じゃないですか。そこは過去を悔い改めて、マジメに生きましょうよ」

「アステリアぁ。そんな説教できる身の上かなぁ? 自分の事を棚にあげるとはおまえの事だ。ほら、本気で男漁れ。街中にコレってヤツ見掛けないの?」


言われてアステリアが視線と気配を歩きながら探る素振りをするんだけど、それ、戦闘だとか尾行を気にする時の警戒の仕方じゃん。目で見るんじゃない、感じろ的な。


「駄目ですね。運命的なのを感じませんね……」

「視覚に頼らずに探そうとするな。見た目で良さそうの探せよ、おまえ好みのイケメンをよ」


「いや、視覚で探しても良さそうな人居ませんし。それに皆さん忙しそうですからナンパできそうにありませんよ」

「……そりゃ、どっかの富み栄えた先進国と違って中世時代の街だからね。暇人は浮浪者とスラムの子供くらいしか居ないな」


大通りの人たちはそれこそ何かしらの仕事で往来してる人が殆どだもの。しかも午前中の仕事時によ。


このヴェスタの街も冬は閑散とした佇まいだけど、このシルヴェスター地方の中心、首都よ。

ヴェルスタム王国から独立して無税政策なんて初めたから雪溶けの季節の始まりと共にやたら商業活動が活発になってるし。


活気があるけど確かに男漁りする空気じゃない。

結局、なんの成果もないまま大通りを逸れ、わたしは最初から見定めてた目的地に向かうの。

途中でどこに向かってるのかアステリアが気付いたけど……



「いや、待ってくださいアイギスさん。まさかと思ってましたがここで、ここで男紹介するとか言うんじゃないですよね?」


目的地は大通りを外れて職人の工房だとかある区画に入ってすぐの所よ。

向かってる場所は他の街でも鍛冶屋だとか武具屋だとか、他、工房施設が近くにある立地によくあるの。


「なに、言ってんの。言わばご同業じゃん、カタギなんていきなり紹介出来ないわ。取り敢えずここで見繕って、居なけりゃ探そうかって段取りよ」

「うわぁ……期待したわたしが馬鹿だったぁ……」


そう言われるのも無理のない掃き溜めだからね。反論は一切出来ないんだよね。


特にそこは酷いの、比較的マシなクズとギリギリ許容範囲のクズが集まる場所だから。その上澄みのアイギスさんが言うんだから間違いない。

まっとうな人間なんてそれこそ一握り、後はド素人の駆け出しくらいだよぉ。



「ほら、お馴染み冒険者ギルドよ。人生酸いも甘いも噛み分けた達人どもが居るわ。修羅場くぐった精神的にもタフな連中だよ。アステリアのこれ以上に無いってくらい希望に沿った連中が居る筈よね?」


「包み込んでくれるような優しさは有るんですかね? わたしが窮地に陥ったら蹴り飛ばして来るような人達ばかりな気がするんですけどぉ?」

「そんときは逆に蹴り飛ばしなさいよ。ほら、文句言わずに行くの。奇跡的にお眼鏡に叶う人が居るかも知れないじゃん。マシそうなの紹介してあげるから」


で、渋々って感じでアステリアが付いて来たわ。

でも、わたしも行くの嫌なんだよね。

恋人たちの甘々ラブラブ生活送ってんのに下水道の中に潜らされる気分になるから。


なにより、ここの連中は並大抵じゃない。


数々の娑婆しゃばでのやらかしの果てに辿り着くヘイヴンよ。天国、楽園を意味するヘヴンと似てるけど、ヘイヴンは安全地帯、避難地って意味ね。


端的に言うと世間一般に顔向け出来なくなったヤツラが辿り着く終着点、身の隠し場所がここって訳。

しかも、その筋の幅広いやらかし人材が居着いてるのよ。


冒険者ってのが元からそういうヤツらの再就職先なのに、ここはそこでもやらかしたヤツらが来るからお察しだよね。


そう、そこは大陸の果ての一つ、成れの果てのヤツらが隠れ棲みロクでもないヤツらが集まる場所なの。しかも蠱毒こどくの壺よろしく、さらにロクでもなさを切磋琢磨して、熟成されてワインのように香ばしさを醸し出してるのよ。


……ある意味では期待できなくもない場所でしょう。


そんな訳で、一縷の望みを託してアステリアを連れて来たのだった。これ以上はない感じのわるい男どもが集まってるよ。ホントだよ?



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