目くらまし
禎兆九年(1589年) 七月中旬 近江国蒲生郡八幡町 八幡城 アルフォンソ・フェルナンデス
目の前に壮年の男性が居た。朽木基綱。この国では相国様と尊称されている日本の王だ。彼を凌ぐ者はこの国には居ない。身体は余り大きくない。顔立ちにも特徴は無い。ごく普通の男性だろう。そして不思議な御方でもある。彼は信教の自由を保証している。ヨーロッパでは信教の自由など無い。少なくともポルトガルには無かった。この国ではそれが許されている。何を信じようと自由。その事で迫害される事は無い。そして自分の信心を守るために税を払う必要も無い。目の前の御方がそれを決めた。
この御方は私達が日本人であるとする証明書を作ってくれた。その証明書には良く分からない印が押してあった。君臣豊楽。主君も臣下も豊かで楽しく。そういう意味だと石田様に教えてもらった。豊かで楽しくとは何だろう? 信教の自由も入っているのだろうか? 相国様が何かを言った。
「この国の食事には慣れたかと訊いています」
ジューリオが訳してくれた。私の新しい息子。この息子のお陰で私達は助かった。
「ああ、慣れたと相国様に伝えてくれ。そうだろう、ブルーノ、ドミンゴ、パオロ」
三人が慣れたと言った。ブルーノとドミンゴは血の繋がった息子だがパオロはジューリオ同様養子だ。また相国様が何かを言った。
「この国の肉は鶏肉だ。物足りぬのでは無いかと」
思わずジューリオを見てから相国様を見た。穏やかな表情だ。どう答えるか迷っているとまた何かを言った。
「相国様はいずれこの国にも豚肉、牛肉を食べる事を奨励したいと言っています」
この国では豚や牛は食べない。だがこの御方は豚や牛を食べる事に嫌悪感が無いらしい。
「そうして頂けると大変有り難いと伝えてくれ。出来れば羊の肉もお願いしますと」
ジューリオが訳すと相国様が”はははははは”と笑い出した。面白がっている。闊達な御方なのだと思った。笑い終わると何かを言った。
「お養父さん、相国様はこれからも自分の庇護を求める人が日本に来るかと訊ねています」
「当然来るだろう。異端審問所に追われているのは私達だけじゃ無いんだ」
「ドミンゴの言う通りだ。皆、安全な場所を求めている。追われるのは気が休まらないからな。そうでしょう、父さん」
ブルーノが私に同意を求めた。私が”そうだ”と答えると二人が頷きジューリオが訳した。
「相当な人数になりますよ。マラッカ、マカオ、マニラ。船を使えば日本には直ぐ来られるんです。その事も伝えた方が良い」
パオロが不安そうに言った。
「そうだな、パオロの言う通りだ。必ず来る。相当な人数になると思う。万を越えるだろう。ジューリオ、その事も伝えてくれ」
ジューリオが訳しても相国様は頷くだけだ。驚かない、不快に思わないという事は想定していたのだと思った。相国様が口を開いた。少し長いと思った。
「私達が此処に来るまでには様々な人に助けられたと思うがその人達とは連絡が取れるかと訊いています」
連絡か……。
「マニラ、マカオ、マラッカは問題無いと思う。だがその先となると分からない。コチン、ゴアだが異端審問所は年々締め付けを厳しくしているから……」
「こちらからの接触を疎ましく思う可能性は有るでしょうね」
ブルーノが沈んだ口調で言った。ジューリオが”そういう風に答えます”と言って訳し始めた。相国様は尤もだと言うように頷いた。そして口を開いた。
「連絡を取って欲しいそうです。イスパニアやポルトガルの動きを知りたがっています。カトリック、プロテスタントの動きを知りたいと」
また相国様が口を開いた。
「宣教師達に後れを取りたくないそうです」
なるほどと思った。この御方は我々ユダヤ人を使って情報を得たいのだ。相当に宣教師達に不信感を抱いている。デマルカシオンの事がこの御方を怒らせたのかもしれない。
「ジューリオ、私達を受け入れたのはそのためかと訊いてくれ」
ジューリオが問うと相国様が首を横に振った。そして話し出した。
「イスパニア、ポルトガルから人が去り日本に来る。それはイスパニア、ポルトガルの力が減り日本の力が増すという事だと言っています」
相国様が”ふふふふ”と笑った。
「お前達は土地を持つ事を許されなかった。何時迫害を受けるか分からなかった。だから逃げ出す準備を常にしていた。必要なのは銭だ。お前達はその銭を稼ぐ事に力を注いだ。親から子へ、子から孫へと代々その力は受け継がれた。その力を日本で使って欲しい。お前達が裕福になればそれは日本が裕福になる事だと」
思わずまじまじと相国様を見た。日本は不思議な国だと思った。ポルトガルにはそんな事を考える政治家は居なかった。
「我々は卵を産む鶏ですか?」
ジューリオが訳すと相国様が目を瞠った。そして”はははははは”と笑った。
「自分は此処にお前達の居場所を作る。この国の法に従う限りお前達は自由で安全だ。そしてお前達は此処で卵を産む。卵の色が何色かは分からない。金か、銀か、銅か。楽しみだと言っています」
なるほどと思った。共に栄えようという事か。それが君臣豊楽なのだと思った。協力しよう、この国で豊かになる。この国を栄えさせる。そうなれば何時か私はこの国を愛するかもしれない……。
禎兆九年(一五八九年) 七月中旬 イスパニア領呂宋島 アゴー 寄合所 浜木長近
「日本に行ってきました。相国様に会いましたぞ」
李旦殿の言葉に声にならない声が聞こえた。田所甚兵衛忠元、桐生八郎昭元、神子四左衛門照安、小栗源蔵家忠、本宮重右衛門景長、秋津新兵衛信家、長沢千衛門長綱、宮本忠兵衛道政、佐藤作右衛門家道。自分を支える九人の寄合衆。最年少が三十五歳の宮本忠兵衛、最年長が六十二歳の小栗源蔵。皆が厳しい視線で李旦殿を見ている。
「有り難うございます。お手数を掛けました。如何でございましたか?」
李旦殿が顔を綻ばせた。
「相国様はアゴーに対して並々ならぬ関心をお持ちです。こちらがアゴーの事を話す前にアゴーについて問いがございました。アゴーは倭寇の拠点なのかと」
”なんと!”、”まさか!”と声が幾つも上がった。皆が顔を見合わせている。俺も驚いた。アゴーに目を付けたとは……。
「李旦殿は何と答えたのです?」
李旦殿が”はははは”と笑い声を上げた。
「正直にアゴーは大事な場所では有るが倭寇の拠点では無いと答えました。あの方に嘘は吐けません」
「それで服属したいという願いには何と?」
問い掛けると李旦殿が頷いた。
「文四郎殿と会いたいと」
「私と? 相国様が?」
思わず声が上擦った。皆が俺を見ている。日本の天下人が俺と会いたがっている? 身体が震えた。怯え? それとも武者震いか?
「アゴーを巡ってイスパニアと戦になる可能性も有る。互いに相手の為人を確認した方が良いと。服属するかしないか、受け入れるか拒絶するか、有ってから決めようと。それに服属するなら色々と決めなければならない事も有る。海が穏やかになる十一月頃に来て欲しいとの事です」
一つ息を吐いた。落ち着け、落ち着くんだ。
「皆、如何思いますか?」
ざわめきが起きた。
「長、相国様に会わぬつもりかな?」
小栗源蔵殿が問い掛けてきた。
「いや、会います。服属は変わりませぬ。私が皆に問うているのは相国様が何を考えているのかです。有った時、振り回されるだけというのは避けたい。如何思います?」
皆が顔を見合わせた。
「アゴーに関心を持つという事はその先のイスパニアに関心を持つという事だろう。我等はイスパニア攻めは琉球が落ち着いてからだと思った。イスパニアもそう思ったのだろう。兵を増強するのも今なら間に合うと思ったからだ。だが朽木の大将はイスパニアが兵を増強する前に攻めようと考えているのかもしれぬ」
本宮重右衛門殿がゆっくりと考えながら喋った。
「確かにそうかもしれぬのう。兵力が増えるのを待つのは愚かよ。戦上手の相国様がただ待っているとは思えぬ。それに相手の意表を突けよう」
桐生八郎殿の声に頷く姿が有った。
「長と直に会うというのも戦を前提に考えているのだろう。長が、アゴーが何処まで信用出来るのかを確認しようという腹だと儂は見る」
彼方此方から”同意する”、”そうじゃの”と八郎殿の意見に肯定する声が上がった。
「信用出来ないと見れば?」
問い掛けると源蔵殿が”潰す”と言った。怖い目でこちらを睨んでいる。
「信用出来ないという事は頼りない、何時裏切るか分からぬという事であろう。イスパニアと戦うのにそんなアゴーは邪魔じゃ。服属を拒否して潰すだろう。イスパニアと戦う前にな。長はそう思わぬか?」
「かもしれませぬ。ならばアゴーは信じられると思わせれば良いでしょう。相国様に何を要求されると思いますか?」
皆が顔を見合わせた。
「長は自治を要求するのだろう?」
宮本忠兵衛殿が問い掛けてきた。
「ええ、それを考えています」
「ならば共に戦えと言ってくると思う。高みの見物は許さぬとな」
戦えか……。
「アゴーに兵を出せと?」
「それも有るかもしれぬが一番可能性が高いのは補給の拠点にアゴー使わせろという事だろう。琉球は未だ安定しておらぬからな。拠点として使うには不安が有る筈だ。船で荷を運べと要求してくるかもしれぬ」
秋津新兵衛殿が言うと田所甚兵衛殿が”有りそうだな”と同意した。皆も頷いている。なるほど、琉球の代わりか。ならばアゴーには利用価値が有るという事になる。自治を求めても怒らせる事は有るまい。
「朽木が勝てば問題は無いでしょう。と言うより朽木を勝たせるためにこちらから提案すべきでは有りませぬか? 信用もされると思うのですが」
「長の言う通りだな。しかし負ければイスパニアはアゴーを許すまい。必ず攻め滅ぼすだろう」
神子四左衛門の発言に皆が頷いた。
「戦に絶対は無い。十の内九までは朽木が勝つと儂も思う。だが負ければアゴーは滅ぶ。長、相国様とはその覚悟を持って交渉すべきだと思う」
源蔵殿の言葉に皆が頷いた。
「分かりました。そのようにしましょう。十月になったら此処を出ます。途中、琉球に寄って何処まで琉球を掌握しているか、状況を見ましょう。それ次第で交渉も変わると思います。それから日本に行って相国様と会います」
皆が頷いた。
「源蔵殿、重右衛門殿には私と同行して貰いたい」
源蔵殿が”分かった”、重右衛門殿が”承知した”と答えた。この二人なら何か有っても頼りになる筈だ。
「李旦殿、聞いての通りです。李旦殿にも同行して頂きますぞ」
李旦殿が顔を綻ばせた。
「分かりました。楽しみですな」
楽しみか……。そうだな、楽しむ。そのくらいの余裕を持たなければ相手に呑まれるだけだな。
禎兆九年(1589年) 七月下旬 近江国蒲生郡八幡町 八幡城 九鬼嘉隆
八幡城の廊下を堀内新次郎殿と共に歩く。ふふふ、俺も新次郎殿も足音を消す等という事はせぬ。のしのしのしのし、皆がこちらを見るわ。
「新次郎殿、大殿が我等を呼び出したのは何故かな?」
問い掛けると新次郎殿が”ふふん”と笑った。
「分からぬ。だが海の男を詰まらぬ用件で城に呼び出したとは思えぬ。そうではないかな?」
今度は俺が”ふふん”と笑った。
「そうだな、その通りよ。……朝鮮が明を唆した。日本に銀が有るとな。それかな?」
「さて、どうかな。未だ明は動いてはおらぬようだが……」
「対馬で銀が出たからのう。明が動く前に朝鮮を一叩きよ」
俺の言葉に新次郎殿がまた”ふふん”と笑った。
「かもしれぬ。楽しくなりそうだ」
「そうだな、腕が鳴るわい」
二人で声を合わせて笑った。
新しい朽木の水軍も少しずつ形が出来つつある。既に石山の海には十隻のガレオン船がいつでも動けるようになっている。戦となればこの十隻を中心に九鬼、堀内を始めとして各地の水軍が共に戦う事になる。各地の水軍も統一した軍法で戦えるように調練を積んでいる。そして石山、伊勢では新しいガレオン船が建造中だ。その船に乗る水夫達は調練用の船で鍛えられている。まだまだ足りない部分は有る。しかし確実に新しい水軍は出来上がりつつある。それは日本が異国と戦えるという事だ。
大殿の部屋の前に付いた。新次郎殿と共に膝を突く。
「九鬼宮内少輔にございます」
「堀内新次郎にございます」
「うむ、ご苦労だな。待っていたぞ。両名とも部屋に入れ」
声が明るい。上機嫌なのだと思った。部屋に入ると大殿が上座で手招きをしていた。遠慮せずに近寄れという事なのだろう。新次郎殿と顔を見合わせた。笑っている。俺も笑っているだろう。二人で大殿の前に進んだ。
大殿が立ち上がった。下に降りてきて我等の目の前にムズっと座った。驚いているとニヤッと笑う。
「内緒話だ。顔を寄せろ」
嬉しくなった。胸を弾ませながら顔を寄せた。
「明がな、銀不足で困っている。知っているな?」
「はい、朝鮮に銀を求めた事は知っております」
「朝鮮が銀は日本に有ると明を唆した事も知っております」
俺と新次郎殿の言葉に大殿が頷いた。
「明はな、税を銀で納めさせている。しかしその銀は交易で得た物だ。日本、イスパニアの銀だな」
「……」
「しかしな、最近では銀は明から日本に流れるようになった。そしてイスパニアが日本に攻め込んで負けたな。そのせいで倭寇が呂宋の海で暴れるようになった。イスパニアの銀はマニラで取引されていたが倭寇を懼れて明の商船がマニラに行かなくなった。銀不足は深刻になりつつある」
新次郎殿と顔を見合わせた。薄々は気付いていた事だ。
「先日の事だが朝鮮が対馬は朝鮮の領土だと言い出した」
「真でございますか?」
驚いて問うと大殿が頷いた。
「文書では無い、口頭でだ。都合が悪くなれば出先の者が勝手に言ったと逃げるだろうな」
「しかし何故そのような事を……。やはり対馬で銀が出た事が理由でしょうか?」
新次郎殿の問いに大殿が頷いた。
「対馬を宗氏から取り上げたのが二年前だ。その時は朝鮮は文句を言わなかった。今になって言うのは銀、いや正確には明が絡んでいるからだと思う。朝鮮は明の銀を出せという要請に対して銀は無いと言って他の物で対応した。そして新次郎の言う通り銀は日本に有ると言った。だが明の使者は日本に関心を示さなかったらしい。朝鮮としては当てが外れただろう」
大殿が”ふふふふ”と笑った。
「朝鮮は明の銀不足が深刻だと気付いたのだと思う。これからも銀を要求されると危惧したのだ。だから対馬の領有を主張した。明から銀を寄越せと要求が有った時、日本が朝鮮の領地を奪った。琉球も滅ぼした。その日本は銀を沢山持っていると言うつもりだろう。対馬で銀が出た事を知っているならそれも言うだろうな。何かと煩い日本を明の力で抑えようと考えているのだと思う」
なるほどと思った。狡猾なと思ったが朝鮮を国人、明を寄親と考えればそれほどおかしくもない。良く有る事だ。
「如何なさいます?」
新次郎殿が問うと大殿は”ふふふ”と笑った。
「今柚谷半九郎が朝鮮に向かっている。半九郎は対馬は日本の領土で朝鮮に領有を主張する権利は無い。明に銀は日本に有ると唆した事は日本への敵対行為に等しいという文書を朝鮮側に渡す事になる。口頭でも対馬は日本の領土だと言ってな」
新次郎殿が首を傾げた。
「受け取りましょうか? 朝鮮は日本を相手にしていないと聞きましたが……」
俺が問うと大殿が声を上げて笑い出した。
「受け取る筈が無い。突っ返すだろう。それに口頭でも対馬は朝鮮の領土だと言うかもしれない」
大殿がニヤリと笑った。
「それで良い。戦の口実としては十分だ」
シンとした。大殿は朝鮮との戦を覚悟した。新次郎殿と顔を見合わせた。目に強い光が有ると思った。
「これから話す事は極秘だ。まだ評定で話しておらぬ。俺が命じたら水軍を直ちに対馬に集めよ。その準備をしておけ。九州には三万の兵を集める」
三万か……。
「些か少なくは有りませぬか? 明が朝鮮に加担すれば厄介な事になります。それに手子摺ればイスパニアが……。あの者どもは本国から増援を呼んでおります」
最悪の場合は明とイスパニアを同時に相手にする事になる。
「案ずるな、戦の相手は朝鮮、明では無い。呂宋のイスパニアだ」
”なんと!”、”まさか!”と声が出た。イスパニア? では……。
「朝鮮攻めは目眩ましでございますか?」
新次郎殿が問うと大殿が頷いた。
「そうだ、真の狙いはイスパニアよ。一気に南下してマニラのイスパニアの軍船を潰す。出来るか?」
新次郎殿と顔を見合わせた。俺が頷くと新次郎殿も頷いた。
「その事は何度か新次郎殿と話しました。イスパニアの水軍は弱体化しております。撃滅するのは難しくありませぬ」
大殿が大きく頷いた。
「既に伊賀衆がイスパニアの軍備を調べている。年内には詳しい情報が入る筈だ」
「では戦は来年でございますか?」
新次郎殿の問いに大殿が頷いた
「来年の二月にはイスパニア攻めだ。それとな五月になれば連中の増援がやってくる。銀を持ってな。それも打ち破れ。銀は海の底に沈めて構わぬ」
銀か……。イスパニアの銀が無ければ明は益々苦しくなるだろう。なるほど、大殿の狙いは厄介なイスパニアを叩きつつ明を締め上げる事か……。となればいずれは明は日本の銀を求める事になる。そこで明との戦だろうな。
「それとな、アゴーもこちらの味方に付く。十一月にアゴーの長が来る。そこでイスパニア攻めへの協力を要請する事になる。兵糧は琉球に置こうと思っているが難しいようならアゴーに置く事になるだろう」
そうか、アゴーは琉球の代わりか。上手い手を考えなさる。
「日本と朝鮮の関係がおかしくなればイスパニア、ポルトガル、宣教師共は大喜びでございましょうな」
大殿が”ふふふ”と笑った。
「宮内少輔、朝鮮も大喜びだぞ。明を利用して日本を叩けるとな。顔を顰めるのは明だけだ」
俺が笑うと新次郎殿も笑った。なるほど、そうかもしれない。皇帝は暗愚で遊び好きだ。戦など出費の嵩む事は嫌がるだろう。となるとこちらから仕掛けなければ戦は起きないという事か。ふむ、大殿が強気に出るのもそう思っているのかもしれぬ。
「イスパニア、ポルトガル、宣教師共は日本と朝鮮が戦う事を望むだろう。日本と朝鮮が戦えば明も黙ってはいないと思うだろうからな。上手く日本、朝鮮、明を操って利を得ようとする筈だ。連中を油断させる事が出来よう」
明、朝鮮と戦うにはイスパニア、ポルトガルは邪魔か。だから先にイスパニアを叩く。イスパニアを叩けばポルトガルも怯えるだろう。
「宮内少輔、新次郎。兵を整えておけよ」
二人で”はっ”と畏まった。
「良いか、敵は朝鮮だ。間違えるなよ」
「はっ、必ずや対馬を守って見せまする」
「朝鮮の者どもに思い知らせてやりまする」
俺、新次郎殿が誓うと大殿が満足そうに頷いた。朝鮮、明を使って目眩ましか……。楽しみよ。




