22.アリス図書館での検索
「これらの本はね、神様がくれたの」
「神様……」
あの薄暗い部屋で会った、二十代後半の青年の顔を思い浮かべる。
「神様はね、何でも知ってるみたいなの。それで、本を頂戴って言ったら、たくさんの本と図書館をプレゼントされたの」
淡々と喋るアリスは、無邪気だ。
純粋で、興味のない方面は物事あまり深く追求しなくて。
「それでね、お礼を言おうとしたの。そしたら」
「そしたら?」
「――貴方は神様の遊具なんだから、もっとふさわしい方にお礼しなさいって」
「ふむふむ……」
うん……?
アリスは、もともと神様の遊具だった?
その遊具がお友達としてフィーネの元にやって来たということかな。
なんだか、深く追求すればするほど心に深い傷を負いそうで、詳しいところまで踏み込めなさそうだった。
話題を逸らすべきか……。それとも。
「アリス、コクバのことって、ここで詳しく調べれる?」
「マスター、了解です。このアリス図書館で検索を試みます」
アリスは両目を閉じて、白い光の粒子を両手から放出させはじめた。
質問を投げるとすぐ話題が逸れるようになっている?
少々気になるが、今はコクバのことがより心配になっている。
「検索が終わりました。コクバという少女は、現在『バステトルーヴ』という名前のモンスターと一体化している状況であります」
「バステトルーヴ……?」
いままで聞いたこともなさそうなモンスター名に困惑を隠せない。
「バステトルーヴは廃都ベルモウスを統べる王様だった存在です」
「王様だったもの……廃都ベルモウス……」
コクバは遠くへ行ってしまったけど、もしかしたらベルモウスに向かったという説……。
必ずそうとはいえないが、可能性は大いにありそう。
まずはエリシアに詳しいことを知っていないか、尋ねてみようかな。
その前に、あの世界に意識を戻す方法……。
わからない。
どうしよう……。
「マスター、なにかお困りですか?」
「早くコクバを助けたいのだけど、ここってどうやったら出れるの?」
「それはとても簡単なことです。但し、必要なことがあります」
「どうやるの?」
「マスターがいま着用しているコカトリスのフードを脱いでから、アリスの傍にさし出してください」
「フードだけ脱げば良いのね。はい、これでどう――?」
「処理に入りますので、少々お待ちください。コピーフラッシュ!」
アリスは、魔法を放つ。
すると、コカトリスのフードがふたつに増殖した。
「成功です。これで片方に魔法を更に使用して、少しばかり豹変させます」
アリスは魔法を使って、コカトリスのフードひとつを、変化させる。
まるで水のように溶けた後、生成しなおす。
大きい水玉と小さい水玉に分かれ――。
大きい水玉は生地が広がり、丈の短めなドレスのような形になる。
その後、山吹色の縦ラインが入る。
小さい水玉はというと、楕円形の帽子になって、フィーネの頭部に落下した。
そして最後に――アリスが大きく縦に手を振ると、新しく出来た衣装をフィーネに一瞬で着装させた。
『それではマスター、アリスと共に行きましょう!』
再び意識が途絶え――フィーネが目覚める。
――風が靡いている。地面が遠くにみえていて、羽ばたく音がはっきりと聞こえていて……。
「うーんと、コクバは」
欠伸をするフィーネは身の回りを確認する。衣装はアリスが着させたもので……やや雲が近い。
黒い竜の背中の上にいたことを理解したのは、すぐのことだった。
「オキタカ――」
「すみません、突然意識が飛んでしまって」
「心配はイラヌ……」
エリシアは何かと責任を感じているのかもしれない。
自分が変なことをしてしまったばかりに、と。




