21.アリスのアップデート
「コクバを追いかけたいけど……。エリシアさん、どこにいったかわかるかな?」
「ワレにはワカラヌ。ダガ、わかるヤツは、お主の傍にいるだろう?」
「私の傍にいる……」
アリスのことか。
でも、意思疎通なんてまともに出来たことないし。
「アリスと対話する為に、人格レベル5の魔道書作成をしたいのですが……」
「調合のスキルナラ、ワレにマカセロ」
「エリシアさん、ありがとうございます。でも、素材もまだ全部揃っていなくて」
フィーネは、手持ちにある素材を伝えた。
ブルースライムのシャボン玉に、水鏡の欠片、コカトリスのくちばし。
そして、先程回収したブラックドラゴンの羽。
最後に残っているのは、銀の砂である。
「ギンノスナ――。ピカソルが、自宅で保管シテイルハズダ」
「ピカソルさんが……?」
「――言われなくても持ってきた」
ピカソルが、小さな袋を持って小部屋に入ってきた。
「新米冒険者に意地悪した罰として、調合して」
「オマエニ言われナクテモ、スルツモリダ」
エリシアは、魔方陣をひとつ形成した。
「ソコニソザイヲ全部ツッコメ――」
「はいっ!」
フィーネは魔方陣に向かって、素材をひとつずつ投げ入れた。
全部の素材を入れ終えると、エリシアは呪文を唱え始めた。
魔方陣のサイズが大きくなって、鮮やかな赤い光が一瞬だけ放たれる。
「――これが」
出来上がった、赤い表紙の魔道書。
これをアリスに渡したら、アリスと意思疎通が出来るようになる。
そう考えると、コクバがいなくなった寂しさが、ほんの少し紛れた気がした。
「アリス、これを受け取って!」
早速だが、渡してみる。
「――AIアリス、人格アップデートを開始します」
アリスは両目を閉じて集中しはじめる。
『私は、アリス・リーゼエッタ。人格アップデートの合間、マスターに伝えたいことがあります』
「えっと……私に伝えたいこと……?」
フィーネは突然、その場で意識が途絶えた。
「――起きて下さい」
アリスに肩を揺らされて、目をこすりはじめたフィーネ。意識が徐々に戻ってきた。
「あれ、ここは……」
夜空が広がっていて、芝生があって、立派なお屋敷がひとつ。
周囲をみても山はなくて、夜空が横方向にも広がっている。身一つで宇宙空間にいるような不思議な気分に陥りそうであった。
自覚はあまりないが……。
フィーネは現在、箱庭のような空間に立っていると理解する。
「ここはアリス図書館です。アリスの思考内部にひろがる楽園でもあります」
腕を掴んだアリスは、建物の玄関口へと向かった。
「えっと、これはどういった……」
「私は教えたいのです」
「はい、好きにしてください……」
「やったーなのです。私に是非とも任せてください」
アリスは気が向くままに、フィーネを案内するつもりでいた。
流石に逆らえない。
「図書館、オープンです!」
アリスが扉を押すと、たくさんの本と棚が並んでいる大広間が目に映った。
「ここにある本は……なんと、無双にまつわるあらゆる記載がされております」
「……アリスって、元から無双が好きだったのですね」
「そうです。大好きなのです!」
アリスはにっこり笑った。
今まで見たことない表情を目のあたりにしたフィーネはうんうん、と頷いた。




