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20.コクバを探して


 この子、誰……?


 もしかしたら、この周辺に住んでいる者なのかな……。


「誰ですか?」


「リ・エンジュ村とその近辺での埋葬業を営む者です」


「埋葬業……ですか……」


「はい。それで、お姉ちゃんは人探しをされてるのですよね」



「ギルドハウスでコクバがいなくなって、只今絶賛捜索中です!」


「なるほど……あの、あのお方のことだから……」



 女の子は、じっとフィーネを見つめる。



「何かヒントもらってない?」


「コクバを探すヒントですか? そんなのなかったですよ」


「ノーヒントかぁ。あの運営部長、とことん意地悪なところあるからな……」


「えっと、意地悪なのですか?」


「誤解しないでね、お仕事は真面目にするみたいだから」


「でも、どうしましょう……。ヒントなしでは流石にコクバを見つけるのは困難では……」


「うーんと……着いてきて……」



 女の子は集落の奥に入っていく。


 ここはついていくしかなさそうかも。


 でも、ヒントなしから手掛かり得られるのか。


 ちょっと不安になる。


「……ここ、怪しいと思わない?」


 女の子が指をさして教えてくれた。


 頑丈なレンガの塔を――。


「怪しい……?」


 見た感じ何もないようにみえるけど。


 あっ……。


「アリス、魔法が発動したかの検索お願い!」


「承認……検索の結果、転移魔法の発動を確認しました」


 アリスの言葉――これはもしかして。


 ――転移先はこのレンガの塔内ってこと?



「入り口はどこですか!」


「そこにある」


 レンガの隙間に、大人ひとり通れるくらいの空間があった。そこから螺旋階段が続いており、内部に入れそうになっていた。


「ありがとうございます。ところで、貴方のお名前はなんです?」


「ピカソルです」


「ピカソルさんですね、本当にありがとうございます」


 フィーネは一礼したあと、螺旋階段を駆け上がりはじめた。



 ひょっとしたら罠かもしれない。けど、女の子――ピカソルの言葉は信用して良さげだと、直感が働いていた。


 フィーネは、少しずつ息を荒くしていく。


 薄暗い螺旋階段はいつまで続くのだろうね……。


 ただ、のぼっていくだけ。


 行き止まりまで進む覚悟はある。


「……あいたっ!」


 フィーネの顔面に、突如壁が現れた。


 薄暗いから気をつけていたのだけど……扉にぶつかってしまった。


「あいたた……」




 フィーネは、少しよろける。


 視界も少しばかりぼんやりするような。



 ううん、ただの気のせい!


 余っている力を両手に注いで、扉を押した。


 ギーギー。



「お……お姉さん……」


 掠れる少女の声――コクバで間違いない。


「いま行くからね!」


 フィーネは、円形の小部屋に踏み入れていた。


 コクバの姿は既にみえている。


「壁に鎖で貼り付け……これは酷い……」


「はい、そこまで」



 コクバの傍にひょっこり現れたのは、エリシアだった。


 出た。意地悪な運営部長。



 コクバをこうして利用するとか、なんか許してはいけない気がした。


「アリス、あの方にデバフスキルを」


「御意――。発動不可、対象は射程範囲外にいることを確認」


「えっ、どういうこと?」


 アリスの指示に合わせて急接近していたフィーネは、思わず足を止める。


「薄い魔法の壁を用意しただけなのに、何故だろうね。まぁ、これは単なる試験だから、奇襲程度なら対策済みということで――。というか、いまコクバを解放するから心配しないで」


 エリシアはコクバに近付いていく。


 そして、コクバを拘束する楔に手を当てた。


「ごめんね、こんなやり方で測定することになって」


「……お姉さんが無事なら。私は何処までもついて行くって決めていて」


「それは頼もしいことで」


「だから――――うぁあああ!」


 コクバは、奇声を上げはじめた。


 解放されたばかりの両手で、頭部を必死に押さえつける。


 コクバに何したの……?


 フィーネは無意識に如意棒を構えでいた。



「待て、武器をしまって」


 エリシアは冷や汗をかいている。



 だが、答弁の余地なんて与えない。



「運営部長の馬鹿っ!」


 急接近して、如意棒をエリシアの頭部に振りかざそうとした時――。


「グヴォオオオオオオオオ――」


 コクバが、人間とは到底思えない声を出していた。


 姿も黒い球体に変貌しつつあって、少しずつ浮上しているようにも思える。


「グヴォオオオ!」


 いきなりの突風で、フィーネは思わず両目を瞑る。


 コクバの身に何が起きている?


 コクバ、どこにも行かないで。


 だがしかし、フィーネの言葉は届かない……。





「お主、オチツイタカ――?」


 えっと、はい。


 目を開けたフィーネは、空を見上げた。


 天井が崩れて青空がみえるようになっていた。



 それと、大きな黒い巨体。一度は宙に舞って地面へと降り注ぐ数多くの黒い羽に、大きな黒いドラゴンの顔があって。



「もしかして、エリシアさん?」


「ソウダガ」


「エリシアさんが、守ってくれた……?」


 コクバの姿はみえなくなっているから、どこかにいってしまったのかな。だとしたら、天井の崩落からフィーネを守ることが出来たのは、エリシアだけであって……。


 それよりも、まずしなくちゃいけないことがある。



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