再会という奇跡
6月
『第7地区にて変異体を確認、PWTが制圧を開始するも防衛線の維持が困難。V部隊の出動を要請。』
『承認。V部隊キンジ班が既に出動。到着まで5分。それまで持ち堪えてください。』
『了解』
帰宅ラッシュの夕方、けたたましくサイレンを鳴らしながら装甲車を走らせる。車はまるで生き物の様に道を開ける。救急車が通る時でもこんなに綺麗に車がどく事はないだろう。それもそうだ相手の車は装甲車、しかも木戸家の所有物。ぶつかった場合、裁判で勝ち目がないどころか保険金すら請求することが出来ない。実際こちらの過失があれば全額木戸家が補填するのだが、そこは市民の協力と理解の上で成り立っている。
PWTの防衛線が見えてくる。
車両は横転し、PWT隊員が倒れているのが確認できる。
見た目はワニの様な大きな口をもった獣だ。
「変異体を目視!キンジさん!ハッチ開けます!」
「おう!」
コウが装甲車をドリフトさせ、後部のハッチが開かれる。
そこから飛び出し、強く握り締めた拳を獣の頭蓋目掛け振り下ろす。
頭蓋の砕ける音と共に変異体は地面に力なく倒れ込む。
一撃必殺とはまさにこの事だ。変異体を殺すのには充分過ぎる一撃だ。
だがキクリに倣い頭と胴体を両の腕で二つに引き裂く。
「流石、部隊最強。援護の必要も無しだ。」
ヒビヤがタバコに火をつけ装甲車から降りてくる。
ショウカさんは体調不良とのことで、コウが無線で医療班を呼んでいる。
「キンジさん、ほらタバコ」
ヒビヤがタバコを差し出し口に咥えさせてくれる。
変異体の体液でベトベトになったことに配慮してくれた様だ。そのまま火までつけてくれる。
「しっかし、派手にやりましたね。一瞬で血の海だ。あ、厳密には血液では無いのか。」
メリメリとタバコを一気に吸いつくしフィルターに到達し、火を手のひらで握り潰す。
「どんな肺活量してるんですか。」
コウが装甲車から灰皿を持って降りてきて、それに吸い殻を入れさせてもらう。
「医療班の到着は10分後になるそうです。死傷者の対応にうつりますか?」
「そうだな、生き残ってる隊員と協力して救護にあたってくれ。」
「うっす」
適当に指示を出し、手についた体液を、ズボンのポケットからタオルを取り出し、あらかた綺麗にする。
胸ポケットから自分のタバコを取り出し火をつける。
深いため息と一緒に煙を吐き出す
張り合いのない敵が多い。カリムとの闘争は楽しめた。
キクリの介入があり、1人で制圧しきれなかったのが悔やまれるが、人命第一だ。本気で暴れればそれ自体を犯しかねない。だがあれほどの好敵手はそう出会えるものではない。キクリと演習でもすれば楽しめるが、お互い歯止めが効かなくなるとわかっているため、2人だけでの演習はしないとルールを設けている。
前に一度キクリを殺しかけたのを、シュウカさんに止められたのがきっかけだ。その時、キンジも相当のダメージを受け、利き腕の左腕と腹部への数カ所の刺し傷、この鋼の肉体を斬り裂き内臓へと一撃を通されていた。止められていなければ自分がやられていたかもしれない。それくらい実力が拮抗しているのだが。『キンジが部隊最強だよ。』などと軽口を叩くキクリの話をシュウカさん以外全員は真に受けている。確かにキンジは強いが、キクリには及ばないと考えている。純粋なフィジカル面では確かにそうだろう。だがキクリは新しい装備などに精通し、これからさきも手札を増やしていくだろう。
キンジは自分が停滞していることを自覚している。これ以上強くなる事はできない。兵器開発部が自分の拳より強い兵器、自分より硬い戦闘服を作れれば話は別だが…。それにSFGの様なツールを使用するのも苦手だ。
それらを加味すると、やはりキクリには敵わないと思う理由である。
そんなことを思い出しているうちに医療班が到着し、死傷者の対処にあたる。それをみてコウとヒビヤも手当を切り上げキンジの元へと集まる。
示し合わせたかのように2人はタバコに火をつける。
3人ともベビースモーカーだ、1日1箱の消費は当たり前。多い日には2〜3箱開けることもある。
「最近PWTだけで対処できる事案が減ってきてやしませんか?」
ヒビヤが問いかける。
「これが普通の出動頻度じゃないんすか?」
コウが不思議そうに俺の顔を見る。
ヒビヤはPWTからの移動してきたから尚更体感しているのだろう。確かにここ数週間で出動の回数は確かに異常だ。主にテロ発生時や大規模なバイオハザードが起きない限り出動する事は今まではなかった。それだけPWTと行政が連携を取れていたのだ。それが破綻しているわけではないが、単体で強力な変異体が増えているのだ。それによりPWT小隊規模での制圧ができず、死傷者が増えている、由々しき事態だ。
「中隊規模でようやくこのレベルの強さの変異体相手に死傷者をださずに済むかどうかってところですかねぇ…。」
ヒビヤが眉間に皺を寄せる。最近までPWTにいたヒビヤからの言葉だ否定しようもない。それに自分がいた頃より、練度も装備も段違いに強くなっているはずだ。
それが、こうも簡単に部隊が機能しなくなるほどのダメージを負うのはやはりスライムに何らかの変化が起きていると推測する、或いは坂上製薬の様に人為的なものか…。
「キクリさんも言ってましたけど、俺たちの仕事がない方がいいっすもんね。」
運動部上がりをそのままにしたようなコウ。ユキと似た可愛げがある。
「その通りだ、俺たちは暇を持て余して、筋トレに励むくらいがちょうどいい。仕事も終わったし帰るとしよう、コウまた運転頼む。」
「うっす。」
ーーー
「ようやく、変異体αの検体が終わったと思ったのにね。」
トウカは深いため息を吐く、同時にコメカミに頭痛を覚える。変異体αの検体にはそれは時間を有した。最高硬度のメスやノコギリを用いても切断に難儀し、オウカに特別製の道具を頼んだ。おかげで切開することはできたが労力に見合った検体は得られなかった。時間をかけすぎたせいで細胞は死に、体液もろくに調べる事ができなかった。
今回はわざわざ道具を特注するまでもなく、メスが通ることに安堵する。録音機を起動する。
「これより狼型?変異体の解剖を開始します。」
解剖はすんなり終わり、十分過ぎるくらいの検体を確保する事ができた。一先ず大仕事を終え、一息つく。
あとは採取した検体を研究すれば何かがわかるかもしれない。作業を開始し、既に8時間以上たっていた。
ーーー
V部隊本部屋上喫煙所
「よっ、キンジ」
「また煙草たかりか、いい加減禁煙の体を諦めて自分で買ったらどうだ。別に金に困ってるわけじゃ無いだろ。」
「一応ショウカに禁煙してるって言ってるから…」
「嘘を匂いで見抜く人だ、バレてると思うけどな。」
「この間カマかけられた…。」
「バレてんじゃん」
キンジはいっそ清々しいほどの笑い声をあげ、煙草を一本箱から取り出してくれる。
「サーンキュ」
火をつけてもらい、屋上の手すりに体を預ける。
「最近、街が騒がしいね。」
「あぁ、強化変異体に、頻繁に起こるバイオハザード。俺たちが手を出さなきゃいけない事案が増えてる。」
「昨日の夜、俺もあたったよ、その変異体ってやつに。俺らには朝飯前でもPWTじゃやってられんよ。ま、不満を口に出しても仕方ないよなー。」
自然とお互いため息が漏れる。これが自分達の仕事なのだ、今までが平和すぎて暇を持て余していたのだ。だがV部隊が活躍しないに越したことはない、原因の究明にトウカさんが自ら変異体の調査をしていると聞く。何かしらわかってくれることを期待するしかない。
空を見上げていると頬に水の塊が落ちてくる。空は曇り始め雨がポツリポツリと降り出した。2人ともタバコの火を消し吸殻を灰皿へ放り込む。
「この季節はまともにタバコも吸わせてくれないのか。」
キンジは忌々しそうに、空に唾を吐く。
雨はいっそう激しく降り始め、喫煙所から屋内へ退避する。
「ひゃー、一瞬でずぶ濡れ、やだねー梅雨は。仕方ない大人しく着替えて、書類仕事に戻るかね。」
キクリは背筋をうーんと伸ばし、骨がポキポキとなる。シュウカさんへの提案が採用され、ミハルさんが佐官として判をおし、最終確認をシュウカさんと自分で行うようになっていた。強化個体のせいで出撃回数が増えており、自ずと製作書類も増えてしまっている。もはや自由業などと呼べなくなってしまった。
キンジと更衣室に向かう道中、書類を早々に提出したアビゲイルと出くわす。
「あれ、アビー早いじゃん。もう終わったの?」
「えぇ!今日は見たいテレビがあるので、書類作成に身が入りました!」
15歳の少女らしい理由だが、大人顔負けの資料や書類を作り上げるのだから尊敬に値する。
「へー、なんて番組?」
「特別番組『ついに発見!アマゾンの奥地!伝説のクルピラをおえ!』です!お風呂入って食事済ませてリアタイで見ないと!」
「そ、そうなのね」
アビゲイルの凄まじい熱量が、キラキラした瞳から感じ取れる。アビゲイルは大人びてはいるが、突然小学生の様な無邪気さをあらわにすることがある。時間は夕方5時、今から帰宅すれば余裕で8時からの放送に間に合うと鼻息をあらくし廊下を走って出口へと向かっていった。
「あいつとんでもなく頭いいのに、ちょっとポンコツなところあるよな。」
「まぁ、可愛いじゃないの。」
更衣室へ入りお互い着替えを済ませて、オフィスに向かう。それぞれがパソコンの画面と睨めっこ、書類作成に励んでいる。キンジのデスクにはアビゲイルが提出したであろう書類が山の様に積まれていた。この量を1人で数時間で捌く事務力、恐ろしい。キンジは顔を引き攣らせている。これが結局回り回って最後は自分のところにくるのだ、キクリもつい身構えてしまう。
キクリは煙草を吸いに行く前に淹れておいたコーヒーを一口啜る。ぬるい。そのつもりで淹れておいたのだが。
「お兄様、宛の封筒が届いてます。」
「ありがとうミツカ。」
封筒を受け取り差出人を見て驚愕する。
柊カリンと書かれている。
四つ折りにされた便箋を取り出し、中身を確認しようと便箋を開こうとした所で思いとどまり再び便箋を封筒に戻し、デスクの引き出しの奥へしまう。
「読まなくて、よいのですか?」
書類を提出に来たミハルさんに声をかけられる。
「昔の彼女からの手紙なんて読むもんじゃないですよ。それも亡くなった相手の手紙なんて、感情の制御が効かなくなっちゃいますよ。」
「私は、そういった感情に疎いので理解に苦しみますが、きっとキクリくんの人生に多大な影響を与えた方なのでは?」
「そうですね…。今まで暗雲としていた心の中に差し込んだ光ってやつですかね。だからこそ、この便箋を読むのが怖くなりました。」
ミハルさんは納得したように
「やはり恋愛とはそう言うものなのですね。」
「え?」
「実は縁談を受けていまして、そういった女性に出会ったものですから。」
「へー、ミハルさんもじゃあ結婚するんですか?」
「いえ、まだわかりません。ですがキクリくんの言う様に私自身、衝撃を受けたので、お相手がよろしければそういった事になるかもしれませんね。」
「やっぱり大和のお見合い文化はあるべきだよなー、結婚しろって圧が必要だよなー。少子化の原因でもある気がする。」
「意外ですねそういった、風習には反対の意見を持っているとばかり思っていました。」
確かに自分が結婚するまでは、そうだったかもしれない。幸せの押し売り、それによって生じる不幸な出来事もあるだろう、だが今の大和にこそ、そういった文化や風習を見習うべき時だと思う。
「もし、本交際に至ったら紹介してくださいよ。楽しみにしてます。」
「えぇ、是非そうさせてください。」
いつになく、にこやかなミハルに、恋は人を変えると言うが、その通りだなと感想を抱く。
ーーー
V部隊ブリーフィングルーム
トウカさんがわざわざ足を運んで、強化個体についての講義がある。ミハルさん以外の隊員は全員参加、遅刻は許されない。トウカさんに指定された時間の10分前には全員集合したはずだが、それよりも早くトウカさんは到着し隊員全員、辛酸を舐めさせられることになる。
お説教からはじまった。
「では本題に入ります。」
トウカはモニターに映像を映し出す。
先日倒した変異体αと、キンジが倒した変異体の解剖写真が映し出される。
「端的に申し上げますと、スライムが進化を起こしています。変異体αは言わば変態の途中、蛹の状態というと伝わりやすいかと思います。そして先日現れたオオカミ型の変異体は言わば幼体、進化の素養があるってところかしら。」
「あー、つまりこういうことですか?これからこの強さの敵がわんさか出てくるってこです?」
「えぇ、そうなるわね。変異体αにいたっては貴方達でも倒すのに苦労するでしょうね。それに今確認されているのはあくまで蛹、羽化したものとなれば負ける事もあるでしょうね。そうなれば150年前に逆戻り、スライム達が頂点捕食者に返り咲くわ。」
「アタシ達も戦力増強が急がれるわね。」
「ですが、たった150年で進化するなんて」
「生物学的にはあり得ない、その通りよアビゲイル。それは地球の生物において。生活に馴染みすぎて忘れがちだけど相手は地球外生物よ。同じ尺度では測れないわ。むしろ150年かかってくれたことに感謝よ。こちらも150年前とは皮肉なことに、スライムのおかげで比較にならないほど技術も人も強くなったわ。それとこれから変異体α及び幼体はレベルにて呼称するわ。レベル1が幼体、レベル2が蛹、レベル3が成体と、言ったところかしら。通常の寄生体、変異体とは一線を画すわ。」
一通り話し終えると、トウカさんは電子タバコを吸い始め、続ける。
「装備はオウカが日々、改良を重ね専用武器でのレベル2駆除は出来そうよ。問題は使う側ね。キクリは既に経験しているでしょうけど、体内のスライムエネルギーを使う関係上、使用者がガス欠、あるいは本来の性能を引き出せない可能性があるわ。」
「人員も足りてないしね。まっそこはアタシがなんとかするわ。」
「私からは以上よ、質問はあるかしら?」
ユキが手を挙げる。
「ぶっちゃけ、変異体とレベル1個体の見分けがつかないっす。接敵して強いから、こいつはレベル1だ!ってなるんじゃ遅いと思うんすよね。」
「確かにもっともな意見ね。ごめんなさい、どうしても机上の上での話になってしまうわね。細胞を見れば一目でわかるものなのだけどね。」
トウカさんは少し悩んだ後、こう続けた。
「一度ラボに戻ってオウカと話し合うわ。ユキ、あなたも参加してちょうだい。」
「了解っす」
いつものはつらつとした、返事ではなく、何かを重く受け止めたような返事をする。
「一先ず今日はこれで解散にしましょう。各々訓練なり、事務仕事なりに戻ってちょうだい。あ、キクリとショウカは残ってね。」
各々が自分の仕事や訓練に戻っていく。
シュウカさんは右手で頭を押さえ、一呼吸おいて振り絞る様な声で話す。
「アタシ、妊娠したかもしれない。」
「マジですの!?」
「!!!」
「もう多分8週目とかだと思う。一先ず2人に報告しようかと思ってね。」
わざわざ名指しでショウカと残されたのだ、何かあるとは思っていたが、まさか妊娠の報告だとは思わなかっただけに衝撃が走る。
「シュウカさん、ありがとうございます。」
これ以上の言葉が見つからない。ショウカとの間に2人目が出来る前にシュウカさんが妊娠するとは思ってもみなかった。正直かなり嬉しい。
「お姉様失礼しますわ…確かに妊娠した方特有の匂いがしますわ。」
クンクンとシュウカの周りを一通り嗅ぎ回る。
「そういうわけで、私は前線からは引くわ。隊長はキクリ頼んだわよ。」
「俺でいいんですか?ミハルさんを差し置いて。」
「古川家は代々、木戸家に支えてきたからね、逆にミハルはアンタを差し置いて隊長になる事はないわよ。アンタがいなけりゃ引き受けてくれるかもしれないけど。そうだアタシも禁煙しないと、はいこれ。」
そういって懐からタバコとライターをキクリに差し出す。
「俺に渡されても困りますよ。禁煙してるのに」
ショウカの手前、受け取りづらい。バレていても禁煙はしている体なのだ。
「ふふ、キクリ様、禁煙失敗しているのはわかっていますわ。でもリカと過ごす時やワタクシといる時、匂いを消して害のない様に配慮してくださっていることも存知あげていますわ。なのでそれを続けられるなら禁煙を解禁してもいいと思いますの。」
「えぇ、ほんとに?マジで?いいの?」
「おおマジですわ。」
シュウカさんから差し出されたタバコとライターを受け取ると思い出した様に。
「あ、そうそうキクリ、仕事以外ではアタシに対して敬語とさん付けは禁止ね。」
「それは今も含まれます?」
「そうね今も」
「えー、シュウカ愛してるよ。お腹の子大切に守ってあげてね。それからショウカも愛してるよ、これからも変わらずよろしくね。」
シュウカさんは顔を真っ赤にし自らのお腹をさする。
ショウカは嬉しそうに頬に両手を当て笑う。
なんとも、度し難い人間関係の完成だ。
これに、ミヤさんや侍女さん達まで加わってしまったら、どうすればいいのか。出口のない迷路に迷い込んだ気分だ。
ーーー
デスクの引き出しにカートン入ってるから、それも貰っていいわよ。とシュウカから言い渡され早速V部隊本部のオフィスに戻り鍵のかかっていない引き出しを開け、カートンをまるまるもらう。
「シュウカさんのタバコパクるんすか?殺されるっすよ?」
ユキが怪訝な顔で横に立つ。
「シュウカさん禁煙するんだってさ。そんで俺はショウカから禁煙解禁のお達がでたんだ。」
「なるほどそういう。ってシュウカさんが禁煙!?本気で言ってるんすか!?」
妊娠のことは伏せておこうと思う。本人から安定期に入ってから全体に周知するといっていた。
「そっ!そんでタバコを引き継いだわけ。」
「そういうことなら、早速吸いに行きましょう。」
ユキと連れ立って屋上の喫煙所へと向かう。
「キクリさん、オフィスじゃ言えなかったっすけど、もしかしてシュウカさん妊娠とかしたんすか?」
「なんでそう思うの?」
「自分の為には絶対禁煙しないと思うので、他の外的要因だと思ったっす。キクリさん早くも二児のパパっすね!」
「流石、大当たり。」
ユキの鋭い指摘に、シュウカをよく知る人なら、気がつがない方が不思議か、とも思う。
「残念すねーせっかくキクリさんが喫煙組に復帰なのに、今度はシュウカさんが、いなくなるなんて。」
「確かになー…なんだかんだ、俺は貰いタバコでここまで凌いできたけど、シュウカさんは完全に禁煙だからなぁ。」
シガーキスでのおねだりも無くなるのかと思うと、少し寂しくもある。
そんなことを話しながら屋上の扉の前へと到着する。
「なあユキ、シュウカさんの件は他の人には、まだ黙っておいてね。安定期に入るまではどうなるかわからないから。」
一応釘をさしておく。ユキは敬礼し歯を見せて笑う。
「了解っす!」
キクリは嬉々として屋上の扉を開ける。
当たり前の様にキンジが煙草をふかしている。
トレーニングルームで筋トレする姿と喫煙所で煙草を吸う姿しか見ていないことに気がつく。いったいいつ書類仕事をしているのか。
「後輩に缶コーヒー奢って、また乞食か?」
キクリは得意げに胸ポケットから煙草とライターを取り出し、火をつける。
「誰が乞食だって?」
「やっと諦めたか。」
「ショウカさんから禁煙解禁を頂いたそうッス」
「じゃあ、何も後ろめたいことないな。なんで解禁になったのか謎だが、煙草が俺らにどんな影響及ぼすかわからんが、百害あって一利なしだぞ。」
キンジは煙草を灰皿に捨て、2本目へと手をかける。いや2本目なのかわからないが…。
「まぁまぁ、俺たちはこーやってコミュニケーション取ってるんだから一利くらいはあるんじゃないの?ほら奢り」
そういって自分用に買った缶コーヒーを渡す。
ユキも相変わらずダボダボのパーカーで足を覆い隠す様に座りタバコに火をつける。
ふぅーと3人同時に煙草の煙を吐き出す。
「2か月…全員生き残ってるッスね。」
「ん?あぁもうそんな経つのか…。確かに誰も欠けることなくここまでこれたね。」
「久しぶりだな新人が1ヶ月もったの。ミツカやアビゲイル、ナナのことはよく知らんが、マヒル、ヒビヤ、コウは援護に徹してるからな。決して無茶な動きはしない堅実さがあると同時に1人としての戦力は弱い。」
「ミツカは流石木戸家って感じ。才能の塊だねありゃあ。アビーも唯一無二の飛行能力と帯電能力。そんじゃそこらの変異体じゃ相手にもならない。」
「ナナも天才肌って言うんすかね?ちょっと動きの遅いキクリさんを見てる感じっす。」
「確かナナは一般人からの採用だったよな?そんな逸材なのか…。」
キンジが食いつく。
「魔の1か月を皆んな生き抜いている、それも強化個体というイレギュラーを抱えての生存率100%、今年は豊作だね。」
「危うくウチがおっ死ぬとだったっすけどね。」
確かにクラーケン事件で、ユキは生死の狭間をさ迷ったのだ。ベテランなんていない、いつでも新しい驚異が現れるのだ、自分やキンジも他人事ではない。
「ユキ、右目は結局見えないまま?」
「そうっすね、見えるには見えるんすけど、色が識別できなくて。眼帯つけてないと酔っちゃうっていうか、そんな感じっす。なんせ症例が少なすぎて担当の先生も頭抱えてるっす。」
スライムの適合者は死なない限り、全ての傷が治るものと言うのが通例だ。ユキの右目も治るのに相当の時間がかかっているだけなのかもしれないが、ユキの再生力をもってすれば、とっくに治っていてもおかしくない。
キクリ自身も他人事ではないと危惧する。地球上で1番しぶとい人間である自信はあるが、ユキの症例を考えるといつ自分も同様の症例に悩まされる可能性だってある。
「そういえば眼帯この前みたいな可愛いやつつけないの?」
「あれはオシャレ着と一緒っす、普段はこの黒い眼帯が落ち着くっすね。この戦闘服にも合うし。違う形のやつを普段は使い回しっす。」
「それもそうか。この前のアレはアレで可愛かったのに。」
「そういうことすぐ、口に出すから勘違いする女が現れるんだぞ。」
「そうっすよ、前にもウチが注意したっす。」
「はいはい、気をつけますよ。」
数日後
朝イチでシュウカさんから召集される。新人2人の紹介があるそうだ。そのうちの1人にキクリとキンジは見覚えがあった。
「天谷キラリです。キーくん、キンちゃん久しぶり。」
キンジはフリーズし、キクリは白目を剥く。中学生時代3Kと呼ばれた幼馴染、男3人がここに揃ってしまったのだ。中世的な見た目のキクリに対し、キラリは完全に女の子にしか見えない。キクリよりも撫で肩で体は細い、背は少し高い。髪はロングボブで、黒紫。声も仕草も完全に美少女だ。そして似合っているならと、女装も厭わない。今もロングスカートを履いている。性自認は男性だ、単に女装が可愛くて好きと言うだけだ。
「あら、アンタ達知り合いなの?」
「知り合いというか…」
「マブダチってやつです。…」
キンジの言う通り、3人共小学校からの友人だ。
上級生からキラリがいじめられると、キクリが止めに入り、泥沼化した喧嘩をキンジが加わって押さえつける、そんな間がらだった。
「なんでキラリがここにいるんだ…」
キンジの問いにシュウカさんが嬉々として答える。
「それが、ウチの門を直接叩いたのよ。適性検査したら、それはそれは2人とも素晴らしい結果でね。」
「そ、そうですか。」
「2人とも会いたかったよ。キーくんは行方不明になっちゃうし、キンちゃんも就職してから全然連絡とれないし。寂しかったんだから。」
そういってキクリに抱きつき、目には涙を浮かべている。側から見たら美少女に抱きつかれているように見えるが、キラリは男だ。ミツカの顔がひきつっている。
「キラリ、首絞まってる、苦しい。」
キラリの腕を振り解こうにも、どこからこんな力が出てくるのか振り解くことができない。キンジがやれやれといった感じでキラリの腕を掴み、キクリの首から外す。
「キンちゃんも会いたかったよー!」
今度はキンジに抱きつき頭をぐりぐりと、胸に擦り付ける。
「分かったから離れろ。」
キンジはキラリの頭を鷲掴みにし、引き剥がす。
キラリは力なく手足をダランと垂れ下げ、嗚咽をもらす。
「ほんどにふだりともいきでてよかったよ〜。」
こんなご時世だ行方不明に、音信不通となれば死んでいてもおかしくない。
「感動の再会ってわけね、いわゆる幼馴染かしら?」
「そんなところです。」
シュウカの問いにキクリが答える。
すると新人のもう1人がキラリを掴むキンジの前に立つ。190cmのキンジより身長が高い、目測で2m弱といったところか。筋骨隆々でキンジにも負けぬ腕の太さ、服の上からでもわかるそれが物語っている。
「ウチの亭主を離してやってくれないかい。ずっとアンタら2人のことを探してたんだ、ちょっとのお痛ぐらいゆるしてやってくんない。」
亭主?といったか、となるとこの2mある巨人はキラリの奥様?ということか?キクリの脳内で?マークが量産されていく。
「アタイはキラリの妻、天谷ハルナってんだ、よろしくな」
男より男らしい物言いだ。よくもまぁ見事な凸凹夫婦が生まれたものだとキクリは感心する。
キンジはキラリを離し、ポムポムと頭を撫でる。
まんざらでもなさそうな表情を見せるキラリの笑顔は完全に美少女だ。キンジの興味はハルナに向けられる。
「あんた相当出来るな、手合わせ願いたいところだ。」
「今日は勘弁しておくれ。まだこの体に慣れていないんだ、やり合うなら完全な状態のほうがいいだろう?」
「…それもそうだな、楽しみにしておこう。」
会話がまるで悪役のそれだ、やり合いすぎない様に自分が立ち会おうとキクリは1人頷く。
2人は既にスライム適合手術を受けた後のようだ。
シュウカさんがいつになく上機嫌なのは2人の適合率、定着率が高い為だろう。
「さっ感動の再会はそれくらいにして、2人はいつも通り当面は私の方で基礎と知識を教えていくわ。その後、キクリ、キンジ、ユキの誰かに振り分けることになるわ。」
通例通り一般人からの適合者はシュウカさんからのレクチャーをまず受ける事になる。寄生体や変異体の簡単な生態やスライムに関する知識を座学として教える。その後は演習にて能力や再生力を身をもって経験することとなる。
ーーー
キラリとハルナが合流して1週間
V部隊の面々は演習場でキンジとハルナの立ち合いを見学する事になった。
以前からキンジはハルナとの戦いを待ち侘びていた。
市街地を想定したフィールドになっている。
キンジからキクリはセーブ役を頼まれている。以前キクリとの立ち合いで、お互い我を忘れて殺し合いになったことを受け、今回もそうならないようにとのことだ。
「アンタとの立ち合い、楽しみにしてたよ。」
「俺とアンタは同じ匂いがする。」
場内に開始を知らせるブザーがなる。
お互い静かに歩み寄る。
「ハルナさんに新品1箱」
そういってキクリは外装を剥がしていないタバコを1箱だす。
「マジでいってんすか!?キンジさんすよ?ウチはキンジさんに新品2箱」
ユキはタバコを2箱取り出す。
「僕もキンジさんに1箱」
「あっしも、キンジさんに1箱」
「俺もキンジさんに1箱」
マヒルさんとヒビヤさんコウが1箱づつ取り出す。
続いてアビゲイルが
「じゃあ私はキクリさんのロリポップをハルナさんに」
「勝手に人の物を賭けるんじゃないよ」
「じゃあ私はジュース1缶づつご馳走します!あ、キンジさんにかけます」
ミツカは随分、身銭を切る
「えぇ!僕もハルナに賭けるけど…賭けるものが…」
「じゃあ、俺が代わりに1箱だすよ。」
キクリがもう1箱だす。こうなることを予見して部隊員は新品の箱を用意していた。喫煙習慣もなく新人のキラリはそんなこと知るよしもない。
「私は、おばあちゃんのいいつけで、賭け事と借金の連帯保証人にはなるなって言われてるのでパスです。」
ナナは胸の前で両手でバツ印を作り参加を拒否。
そうこうしてる間に2人の距離が縮まる。
先に仕掛けたのはハルナだ、キンジよりも長い腕で殴りかかる。キンジはそれを一歩踏み込みオデコで受け止める。次いでキンジが仕掛ける言わずと知れたその豪腕を全身を使いボールを投げるように振りかざす。ハルナはその振り下ろされた腕を、右腕で絡めとるように動く。そして左腕でキンジの顎を掌底の様にぶつける。
キンジの体が宙を舞う。見事な一本背負いだ
「「「おぉ!」」」と感嘆の声が上がる。
流れる様にキンジの体は地面に背中から叩きつけられる、コンクリートの強度を持った床を陥没させる。そして床に倒れたキンジに追い討ちで踵落としをキメさらに床が激しく凹み衝撃が拡散し、広範囲に地面にヒビが入る。
「ほら、ハルナさんの勝ちだ。」
ハルナは後ろに下がり、キンジの様子を見る。
キクリがしたり顔でキンジに賭けたメンバーを見る。
「まだ決まってないみたいですよ。」
陥没した地面からキンジが顔をあげる。
「うぉ、マジか、頑丈すぎるだろアイツ。俺なら首もげてる。」
「感心してる場合じゃないですよ、キクリさん信じてハルナさんに賭けたんですから。負けたらロリポップ1箱とアイス買ってもらいますよ。」
「アビー賭け事やったことないのね。健全でなにより。」
キンジは立ち上がり、首をぐるりと回す。
「流石、部隊最強これくらいじゃびくともしないかい。」
「いや、久しぶりに命の危機を感じる事ができた。キクリ以来だ。心が躍る。」
キンジは再びハルナとの間合いを詰める。がハルナも見事な足捌きで迎撃の構えを取る。キンジは全力の右アッパーをくりだすが、またしても腕を絡めとられるが同時に左腕のストレートを繰り出していた。見事ハルナのミゾオチにあたり、ハルナの体はまるでボールの様にバウンドしながら吹き飛ばされる。
防御の構えをしない、守りは己の体でのみ行う、スポーツであればありえない動きだ。ハルナは立ち上がり、骨が折れている箇所がないか確認する。問題ないと判断して再びキンジの前に立ちはだかる。キンジは再びフルスイングの拳を振り上げるが、力が入り切る前にハルナにその腕と顔面を掴まれそのままビルに激突し、幾つもの壁を破壊しながら突き進み。演習場の壁にまで到達してようやくとまる。
キンジの左フックがハルナの脇腹に刺さる。
ハルナは脇腹を抑えながら、後退する。
キンジは頭から血を流し、その顔には笑顔が見られる。
「うわ、キンジさんが血を流しながら笑ってる、怖!」
マヒルの声があまりの恐怖に震えている
キンジは続け様にストレートを繰り出す。ハルナもそれを見事な手捌きで攻撃を逸らしていくが、徐々に後ろへと後退させられる。そしてついにキンジの一撃がハルナのミゾオチを再び射抜きハルナが膝をつく。そこへ両手を組み必殺の一撃を放とうとするキンジ。だがハルナも動く膝をついた低姿勢からタックルを繰り出しキンジを床に押し倒す。
「うーん、ここらで潮時にしといた方がいいかな。」
キクリがボタンを押すと終了を知らせるブザーが鳴る。
「なんだい、決着付けずにおわりかい?」
「キクリが恐らく強制終了させたんだろう。俺を流血させ背中を地面へつけさせたのは、キクリ以外では初めてだ。今回は俺の負けだ。」
「それは納得いかないね、お互い意識はある。」
そういってハルナはキンジに手を差し伸べる。
「そう言って、キクリと歯止めが効かなくなった。」
キンジはハルナを手を取り引き上げられる。
「同じ轍は踏めないってやつかい。」
「まぁそういうことだ。」
『キンジ、どっちが負けを認めた?』
キクリがマイクで場内にアナウンスを行う。
キンジは手を挙げ自分が負けたことを知らせる。
「はーい俺達の勝ちー」
アビゲイルとキラリの肩を持ち抱き寄せる。
「俺はタバコ全部頂くよ、アビゲイルとキラリはミツカから飲み物奢ってもらいな、俺の分はいらないから。」
「だー!2箱も賭けるんじゃなかったっす!!」
「マジでキンジさんが負けた…キクリさん、なんでわかったんですか?」
「多分ハルナさんは格闘技経験者でしょ?おそらく柔道の、レスリングもやってるかもね。キンジは喧嘩殺法だからな、気合いと根性で戦ってる。力が拮抗すれば自ずと技のある方が勝つってね。」
「すごーい、キーくんよくわかるね!」
キラリは両手を合わせ頬に寄せる。
「伊達にシュウカさんに仕込まれてないからね。同じ様だけど微妙な身体付きとか、ハルナさんは、なってないけど、柔道耳なんてのもあるからね。」
「親友にベットしないとは、薄情者め。」
キンジとハルナさんがモニタールームに入ってくる。
「ほら賭けに勝ったタバコ1箱やるから機嫌なおせよ。」
ヒビヤさんの賭けたタバコをキンジに投げ渡す。
キクリにはちょっとキツめのタバコである。
「ハルナー!すごいね、キンちゃんに勝っちゃうなんて!」
「そんなこと言いながら、しっかりハルナさんに賭けてたじゃん。」
「それはだって、僕の奥さんだし信じないと!」
「ありがとよキラリ。アンタも誰かと一戦交えてみたらどうだい?」
ハルナがキクリへと視線を向ける。
「俺とやってみる?武器使うからより、重症になる可能性もあるけど。」
「えぇ!?キーくんと!無理無理!ガチガチの近接戦闘は得意じゃないもん。」
「なら尚更やらないとね、苦手は克服するもんさね。」
ハルナがキラリの肩を叩く。観念したかの様にキラリは肩を落とす。
「じゃあ30分後に開始しよう。」
ーーー
装備を整え、演習場に入場する。キラリの希望もありお互い見えない位置からのスタートすることになった。つまりどちらが先に見つけて先制攻撃できるかが勝敗に大きくかかわってくる。
キラリの戦闘スタイルは、まだわからない。
姿を見られたくないことから察するに、ハイド系の能力かスナイパーか。いずれにしろ後ろには気をつけねばならない。
「さぁ賭けた賭けた!」
ユキの一言で再び賭けが始まる。
「「「「「「「キクリさんに」」」」」」」「お兄様に」
満場一致でキクリに賭ける
「これじゃ賭けにならないっすね。キクリさんが負けたら今夜飲みに行って奢ってもらいましょ!」
開始を報せるブザーが鳴る。
キクリは一先ずSFGを駆使してビルの間を飛び回る。
いくらフィールドが広くても、実際の街よりは小さい3分もあれば見回りきる。
やはりハイド系の能力だろうか、スナイパーがいそうな場所は真っ先に回った。既に見つけていてもおかしくない。一旦地面に降り立ち、キラリの出方を伺う事にし動きを止めた一瞬。
頸椎から喉を貫通するナイフがいつの間にか突き刺さっていた。それにより一瞬気を失い地面に倒れるが、すぐに引き抜きあたりを見回す。
キラリの姿は見えない。何処からか見ているのか。
「なんにせよ厄介そうだ。」
見えていない物、殺気を感じないものは対処しょうがない。ミハルさんの狙撃しかり、殲滅作戦の時の少年兵からの背後からの銃撃もそうだ。
久しぶりに能力を使う時が来た様だ。
スライムによる恩恵はフィジカルの強化と再生力だけではない。所謂、超能力を発現させる者がいる。ユキであれば極小規模だが次元の拡張。アビゲイルは電撃能力。ショウカはテレパシーによる思考共有。そしてキクリには…
「視えるんだなこれが。」
体半身ずらし左手で虚空から突然現れたナイフを指で挟み、背後からのキラリの強襲の膝蹴りを右手で受け止める。
予知能力、2分以内に自分へふりかかる危険を予め視る事ができる。
そして恐らくキラリの能力は空間移動だろう。移動距離がどれほどのものか分からないが、かなり強力な能力だ。わかっていれば、なんて事はない。キラリは再び空間移動で姿を消す、勝負を決めよう。次の一手はナイフによる、右脇腹から斜め上に突き刺す一撃だ。大剣をキラリの首元が現れる位置に置き、ナイフを受け止める体勢に入る。予知の通りにキラリは動き、置かれた大剣を見て大きなため息をつく。
「キーくんずるいよ!再生力以外にも能力あるの隠してるなんて!予知能力?」
「それはお互い様でしょ?随分勘がさえてるね、因みに俺はこれの事、未来視って呼んでる。キラリの瞬間移動もかなりチートでしょ。」
「半径100m圏内に無機物と自分だけを好きな座標に飛ばす能力で、一歩間違えれば壁の中に埋まって即死とかになると思うから、便利だけどよく知らない場所では使えないんだ。」
『お二人とも動きが止まりましたけど、勝敗はつきましたか?』
アビゲイルの声がフィールドに響き渡る。
腕で丸マークを作り終了を報せるブザーがなる。
キクリとキラリはモニタールームへ向かう。
「キーくん、どうして普段から、その未来視使わないの?」
「ショウカの視覚共有と同じで、多用すると酔っちゃうんだよね。奥の手って感じ。」
「じゃあ、奥の手を引き出した僕はなかなか善戦したってことかな?」
「そうだね、久しぶりに使ったよ。それより随分動けるようになったね。」
「えへへ、スライムのおかげかな?」
モニタールームの入り口を通り中に入る。
「っで?どっちに賭けた?」
「「「「「「「キクリさんに」」」」」」」「お兄様に」
この作品はフィクションです。実在の人物、団体とは一切関係ありません。




